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【HPE×AMD×MS対談】第3世代「Milan」でさらなる躍進を! EPYC搭載サーバーが提供するユーザー・メリットとは?

 AMDのZenアーキテクチャCPU「EPYC」を搭載したWindows Serverが稼働するHPE ProLiant サーバーの販売が好調だという。

 その原動力のひとつが、2017年にZenアーキテクチャを採用したAMDのCPUだ。デスクトップ向けのRyzenはもとより、サーバー向けのEPYCでも大きく市場を広げている。特にコア数の多さやコストパフォーマンスの良さが特徴とされており、小規模サーバーからHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)まで広く採用されている。

 もちろんCPUは単体で使うものではなく、コンピューターに搭載し、OSやアプリケーションを動かして使うものだ。特にサーバーとなれば、全体構成のもとで十分な検証を経てから導入する必要がある。

 そのため、EPYC搭載サーバーを、システムインテグレーターや販売代理店が安心して提案でき、エンドユーザー企業が安心して導入できるようにするための取り組みが重要だったという。本対談では、取り組みと事例を中心に日本AMD株式会社と、EPYC搭載サーバーを販売している日本ヒューレット・パッカード株式会社(HPE)、Windows Serverを販売している日本マイクロソフト株式会社に話を聞いた。

 日本AMD株式会社からは関根正人氏(コマーシャル営業本部 セールスエンジニアリング担当 マネージャー)、日本ヒューレット・パッカード株式会社(HPE)からは岡村清隆氏(コアプラットフォーム事業統括 コアサーバー製品本部 製品部)、日本マイクロソフト株式会社からは仲西和彦氏(デバイスパートナーソリューション事業本部)にお集まりいただいた。

日本AMD株式会社 コマーシャル営業本部 セールスエンジニアリング担当 マネージャー 関根正人氏
日本ヒューレット・パッカード株式会社 コアプラットフォーム事業統括 コアサーバー製品本部 製品部 岡村清隆氏
日本マイクロソフト株式会社 デバイスパートナーソリューション事業本部 仲西和彦氏

1コアあたりの性能が19%アップした第3世代EPYC

――AMDは、サーバー向けのZenアーキテクチャCPU「EPYC」において、第3世代の製品(コードネーム:Milan)を米国時間の3月15日に発表しました。第3世代EPYCのセールスポイントはどんなところでしょうか。

AMD関根氏:2017年に第1世代のEPYCを投入してから、2019年なかばに2世代目のRome(コードネーム)が出て、3世代目がリリースされました。

 当然、性能を強化しています。Zen 3コアのCPUとしては、一足先にデスクトップのRyzen 5000シリーズが出て、シングルスレッド性能(1コアあたりの性能)で優位性を示しました。もちろん、マルチスレッド性能は、以前からの優位性を保っています。これが市場で高評価を得ています。同じデザインのZen 3コアを投入したのが第3世代EPYCなので、性能は折り紙つきだと思います。

 具体的には、内部アーキテクチャを強化して、IPC(Instructions per Clock、クロックあたりの命令実行数)が19%アップしました。つまり、Romeと比較して、同じ周波数であれば、コアあたりのパフォーマンスが19%アップするということです。さらにクロック周波数が上がっているので、あわせ技でコア性能が上がっています。そのほか、L3キャッシュのデザイン変更、メモリーのレイテンシーも改善されています。

AMDが発表した第3世代EPYC(出典:AMD)

――そうした特徴によるユーザー・メリットはどんなところでしょうか。

AMD関根氏:コア性能やメモリーのレイテンシー強化などをあわせると、まず、以前から高くご評価いただいているHPC市場にかなりポジティブになるんじゃないかと思います。

 また、ビジネス用途においては、HCI(Hyper-Converged Infrastructure)の市場もEPYCがうまくハマる市場です。仮想マシンの性能には、CPUのコア性能とキャッシュサイズ、メモリー帯域が効いてくるので、貢献できると思います。

 HCIの市場では、ライセンス面のメリットもあります。HCIのソフトウェアでは、これまでソケット数ベースのライセンスがあり、Romeが出たときはソケットあたりのコア数が多いほうが有利でした。それがだんだん変わりつつあり、コア数ベースのライセンスのビジネスモデルに移動してきています。

 第3世代EPYCではコアあたりの性能が大きく向上しているので、コアの数を落としても、1コアあたりのワークロード数を増やして、同じ数の仮想マシンを動かすことができます。すべてが48コアや68コアがいいというのではなく、たとえば32コアで性能が高いものを出せば、限られたライセンスの予算の中で、より多くの性能を提供できます。

HPCやビジネス用途で活躍するEPYC搭載HPE ProLiantサーバー

――HPEでも、第3世代EPYC搭載のHPE ProLiantサーバーを出しますよね。

HPE岡村氏:はい。近日中にリリースさせていただく予定です。

 HPEでは、2017年にEPYCが出た当初からいちはやく搭載サーバーを発売してきました。もともと当社CEOとAMDのCEOとで、将来の市場に向けて必要となるシステムアーキテクチャについてずっと議論をしていて、新しく出てきたのが2017年のEPYC CPUであり、EPYC搭載HPE ProLiantサーバーです。

――これまで、EPYC搭載のHPE ProLiantサーバーは、どんなお客さまにどんな使われ方をしていますか。

HPE岡村氏:2つの分野で非常に多く使われています。ひとつは、関根さんからも話に出たHPC。もうひとつはサービスプロバイダーです。そして、今、中小規模でのビジネス用途も拡大中です。

 HPCではとにかく性能が求められます。それも、コアだけでなく、全体のパフォーマンスです。コアをたくさん積んで、I/Oが速くて、メモリーを大量に積めて、性能が出る、というAMDのEPYCアーキテクチャと非常にマッチしたといえます。

 サービスプロバイダーの分野で求められるのは、コストパフォーマンスに優れているもの、それもコア数をたくさん搭載していてもコストパフォーマンスがいいことです。また、高集約性、つまり高集約によってより少ないノード数でより効果が期待できることもあります。それから省エネによりランニングコストを下げられる点もあります。サービスプロバイダー大手は、非常に多くのノード数で運用するので、より電力コストが気になるわけです。

――いずれもかなり大規模なユースケースですが、中小規模ではいかがでしょうか

HPE岡村氏:はい、最近は中規模や小規模な用途においても、EPYC搭載のProLiantサーバーの導入が増えています。サービスプロバイダーと似たように、コストパフォーマンスの高さや高集約性を気にいっていただいています。

 事例も多く公開しています。たとえば、山崎建設株式会社様には、Windows Server 2008からWindows Server 2016への移行にあたり、第2世代EPYC搭載のProLiant DL325 Gen10サーバーをご採用いただきました。入出勤の管理や勤怠管理など事務系スタッフの約100名が使っていた2台のサーバーを、仮想化して1台に集約しました。

 また、株式会社ジェット様の事例でも、Windows Server 2008からの移行にあたり、第2世代EPYC搭載のProLiant DL385 Gen10サーバーをご採用いただきました。2000人規模の在宅スタッフが使うシステムにおいて、5台のサーバーを仮想化して1台に統合しました。しかも、2ソケット搭載可能なところをあえて1CPU構成にして、データベースソフトウェアのライセンス費用を抑制しています。

 最近公開された事例としては、3DCGアニメ制作の株式会社SOLA DIGITAL ARTS様があります。CPUに第2世代EPYCの32コアを2つ、GPUにNVIDIA Quadro RTX 6000を3つ搭載したHPE ProLiant DL385 Gen10 Plusを16台利用して、CPUで合計1024コアを実現しました。さらに、Windows Serverに標準搭載されているHyper-Vで仮想化して、GPUレンダリング環境とCPUレンダリング環境を1台の物理サーバーに共存させることで、ノード内の2つのCPUの性能をフルに引き出しています。これにより、レンダリング処理を1時間から10分と非常に短くできました。

山崎建設株式会社事例のページ。EPYC搭載のProLiant DL325 Gen10サーバーの採用でサーバーの調達コストを想定の6割ほどに抑えることができた(出典:HPE)

――マイクロソフトの立場から見て、EPYC搭載サーバーをどのようにとらえていますか?

日本マイクロソフト仲西氏:たいていの場合、新しいテクノロジーやアーキテクチャが出てきたとき、HPCや大規模なサービスプロバイダーでの導入から始まります。その後、中小規模まで含めてのビジネス用途が広がります。これは、マイクロソフトのビジネスでも同様です。マイクロソフトでは、当初から、Azureの環境でAMD搭載機を選択できるようにしたり、半導体設計といったHPC分野においても、AMDと協調しています。

 今、世界的に、Windows Serverが稼働するEPYC搭載HPE ProLiantサーバーをはじめとして、ビジネス用途での利用が拡大してきています。

まずは啓蒙やテストでEPYCサーバーを広げる

――比較的新しい構成のサーバーとなると、システムインテグレーターやユーザー企業に認知してもらったり検証してもらったりする必要があるかと思います。そのための取り組み、特に今回お集まりいただいた3社での取り組みについてお聞かせください。

HPE岡村氏:HPEでは、大規模案件から中小規模のワークロードまで、テクニカル用途もあれば、ビジネス用途もあり、さまざまな案件があります。そのためにHPEは、ベンチマークセンターをグローバルおよび日本に持っています。また、お手元でテストいただくための貸し出し用テスト環境も用意しています。こうした環境整備に力を入れています。

AMD関根氏:AMDとしては、HPEやマイクロソフトの開催するウェビナーなどに積極的に参加しています。そして、CPU視点でどういうメリットがあるか、逐次、パートナーやエンドのお客さまに訴求させていただいています。

 最初のEPYCが2017年に出る前は、一時、サーバー市場シェアをほとんど失っていました。EPYCは、ゼロベースどころかマイナスベースのスタートなので、なんとかお客さまに啓蒙活動しなくてはいけないということで、こうしたセミナーやウェビナーに非常に力を入れています。また、当社からの事例やホワイトペーパーをリリースしていくほか、HPEやマイクロソフトなどが提供するホワイトペーパーや事例に脇役としてできるかぎり協力しています。

 日本マイクロソフト仲西氏:質問に対して、ある意味で逆の答えになってしまいますが、われわれは、各OEMベンダーやCPUベンダーなど、どのベンダーにも同じようにつきあう方針です。AMDに限って何かをしているというわけではありません。

 逆にいうと、AMD搭載サーバーをサーバーベンダーと協力して、動作認定を行い、ユーザーが安心して選択できるようにするなど、問題なく使っていただけるように力を入れています。

 また、パソコンのほうでも、お客さまがAMDのCPUにトライできるよう、販売店にAMDのCPUを搭載した製品もご紹介するプログラムを設けています。サーバー分野においても、AMDとはグローバルレベルのプログラムを実施しています。もちろん、HPEとも、20年以上にわたるアライアンスを結んでおり、製品開発から、マーケティング活動、営業活動まで、協調して取り組んでいます。

「HPExAMDパートナー倶楽部」でエンドユーザーを支援

HPE岡村氏:また、HPEとAMDでは、「HPExAMDパートナー倶楽部」というパートナープログラムも共同で立ち上げています。AMD製品をお客さまに販売や紹介をするためのもので、AMD搭載製品を販売いただくHPEのパートナーが所属しています。

 そのパートナー経由でいろいろな情報をユーザーに提供したり、提案できるようにしています。たとえば、パートナー向けにメールマガジンを出したり、最新情報のトレーニングをしたりということです。日本マイクロソフトにも、倶楽部の運営に支援をいただいています。たとえば、去年は日本マイクロソフトのエンジニアに登壇していただき、最近の情報についてトレーニングに加わっていただきました。

 パートナーには、提案方法の情報や最新の事例など、ある程度定期的にお話をして、その情報をもとに提案活動していただいています。さきほど紹介したテスト機材に関しても、パートナー倶楽部を経由して貸し出しをしています。

――パートナーは何社ぐらい参加していますか。

HPE岡村氏:現時点で日本全国の120社以上にご参加いただいています。その中には、システムインテグレーターも販売パートナーも両方います。

――ユーザー企業から見て、HPExAMDパートナー倶楽部の存在はどういうメリットがありますか。

HPE岡村氏:たとえばWindows Server 2012からWindows Server 2019に移行するというときに、どういうサーバーがいいかという相談から始まると思います。その中で、HPExAMDパートナー倶楽部に参加しているパートナーに声をかけていただければ、こういう製品があって、こういう事例があって、このぐらいの構成でどうですか、という情報をもとに提案いただけます。また、自分で構築できるユーザー企業には、パートナー経由で機材を貸し出してご自身で試していただくこともできます。

HPE x AMD パートナー倶楽部のページ(出典:HPE)

まずはEPYC搭載Windows Serverサーバーのお試しを

――最後に、導入を検討されている企業のIT担当者へのメッセージをお願いします。

HPE岡村氏:HPEは、これからも、AMDプロセッサを搭載したサーバーのラインナップを強化していきます。数千ノードを構築できる水冷サーバーから、AI/MLに特化した多数のGPUを積んだサーバー、多くのお客さまに使っていただける中型・小型のラックマウントサーバーまで、ラインナップをとりそろえています。Windows Serverはすべて動作認定されています。超大型から小型まで、どんなものでもマッチしたものをご紹介できるよう準備しているので、ぜひお声がけください。

AMD関根氏:第3世代プロセッサのコードネームMilanは、数年前に示したロードマップどおりにローンチしました。数年前にお約束したスケジュールからズレはまったくありません。この安心感を信頼感のひとつとしてアピールしたいと思っています。

 EPYCが誕生する2017年の初頭までは、サーバーCPUはIntel Xeon一強でした。Xeonしか知らないお客さまもまだいらっしゃると思います。そのため、私としても啓蒙活動に邁進しているところです。特に、ビジネス用途での利用が多いWindows Server市場でのEPYC 搭載機の拡大がポイントです。EPYCが登場する前は、若干の性能向上に対して価格がどんどん上がっていくという状態でしたが、AMDはサーバーCPU市場を健全化していきます。

 また、EPYCは、コストだけでなく性能面でも、最新のトレンドを反映した新しいアーキテクチャです。そのポイントとなるのが、CPUを複数ダイの組み合わせで構成するチップレットアーキテクチャとなります。チップレットアーキテクチャにより、最新製品をいち早く投入でき、高性能化と省電力化に貢献できています。まずはお試しいただきたいと思っています。

日本マイクロソフト仲西氏:マイクロソフトが、サーバーソリューションとして、いま力を入れているのがHCIです。この2月にも、新しいAzure Stack HCI を発表しました。

 マイクロソフトは後発としてHCI市場に参入しましたが、コストとパフォーマンスのバランスで高い評価をいただいていると思います。そうしたコストパフォーマンスでHCIを選ぶお客さまが、どのハードウェアでシステムを組むか考えたときに、EPYCのコストパフォーマンスを考えていただければ、選ぶべきハードウェアはおのずと答えは出ているのかなと。HPE ProLiantの幅広いラインナップでいうと、DL325とDL385がEPYCを搭載し、Windows Serverの動作認定機種ですので、安心してご導入いただけます。

HPE岡村氏:こうした取り組みのひとつとして、HPEではAMDとマイクロソフトと連携して、期間限定の特別なライセンスを用意して、世界的にキャンペーンを行っています。2021年4月30日までに出荷するEPYC搭載HPE ProLiantサーバーで、Windows Server 2019のStandardおよびDatacenterのライセンスコストを下げるものです。

 通常のWindows Serverライセンスでは、すべてのCPUコア分のライセンスを購入する必要があります。今回の期間限定ライセンスでは、1プロセッサで32コアまでライセンスを購入すればいいようになっています。そのため、48コアや64コアのEPYCプロセッサを搭載するHPE ProLiantサーバーで、Windows Server 2019のライセンスコストを削減できます。この機会にご利用いただければと思います。