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卓越した技術力でx86サーバーの運用管理を変革 AIOpsも具現化するDell EMC OpenManage ポートフォリオ

 グローバルのx86サーバー市場でシェアトップをひた走るデル・テクノロジーズは、国内でも存在感を着実に高めている。同社のサーバー「PowerEdge」シリーズ躍進の原動力の一つとなっているのが、運用管理に関わる工数をドラスティックに削減することを可能とする「Dell EMC OpenManage ポートフォリオ」と呼ぶテクノロジー群だ。

 「x86サーバーはどれも同じという声がありますが、それは違います。我々はサーバーのライフサイクル全体にわたって、よりインテリジェントな運用を具現化するためにR&D投資を続けており、その成果が凝縮されているのがDell EMC OpenManageなのです」。こう話すのは、デル・テクノロジーズの岡野家和氏(データーセンター・コンピュート&ソリューションズ事業統括 製品本部 シニアプロダクトマネージャー)だ。

デル・テクノロジーズ データーセンター・コンピュート&ソリューションズ事業統括 製品本部 シニアプロダクトマネージャー 岡野家和氏

 Dell EMC OpenManageポートフォリオは、マザーボードに搭載された「iDRAC (integrated Dell Remote Access Controller)」という管理プロセッサーと、「OpenManage Enterprise」という管理コンソール(ソフトウェア)の大きく2つのコンポーネントで構成されている(図1)。以下に、それらの詳細を見ていこう。

図1:Dell EMC OpenManage ポートフォリオの概要

サーバーの中にもう1台のインテリジェントなサーバー

 iDRACは元々、サーバーをリモート管理するために搭載されたものだったが、今ではライフサイクル全体の管理を担う“頭脳”として進化を続けている(図2)。「専用ポートで管理ネットワークと接続できることに加え、独自のストレージ領域も持っており、『サーバー内に存在するもう1つの秘密のサーバー』というレベルにあり、高度でインテリジェントな機能を備えています」と岡野氏は強調する。

図2:運用シーンに変革をもたらす要素技術「iDRAC」

 従来から、PowerEdgeサーバーのほぼ全機種に標準搭載されてきたiDRACは、世代的に現在は「9」に相当し、前世代のチップに比較して最大で4倍ものパフォーマンスを発揮する。1対1で監視・管理するためのファームウェアを備えており最新版はv4.0だ。GUI / コマンドライン / APIなどユーザーの事情や要望に応じて使い分けられるが、とりわけ最新版で強化されたのがGUIでの使い勝手である。

 「HTML5にネイティブに対応しており、急を要してアクセスした途端にActiveXのアップデートを求められるといった、管理者が思わず苛立つ“あるある”のたぐいが一掃されています」(岡野氏)。また昨今の様々な管理ツールのトレンドとして、検索窓からキーワードを入れて使いたい機能に直接ジャンプする、それも文字を入力している途中で有力候補が表示されるというものがあるが、iDRACはファームウェアレベルでそれを実現している。

 テレメトリーストリーミングも注目株だ(図3)。これはサーバーの稼働状況に関わるデータをリアルタイムに抽出して配信する機能。「IoT的なアプローチで180種類以上のサーバーと内部コンポーネントの稼働データを配信することができます。これをビッグデータ解析にかけることで、人では気がつかないような予兆などを可視化して運用に活かす取り組み、すなわち“AIOps”を可能にします。ネットワークスイッチなどでは先行していましたが、我々はサーバーでもAIOpsを実現すべく注力し、最新ファームウェアv4.0で対応しました」と岡野氏は話す。

図3:AIOpsを見据えたテレメトリー配信

統合管理コンソールでドラスティックな変革をもたらす

 ここまで説明してきたiDRACとファームウェアの機能は基本的に「1対1」を前提としたものだが、「1 対 多」つまりは何十台というサーバー環境を対象に、運用業務の簡素化と自動化を図る位置づけにあるのが管理ソフトウェアの「OpenManage Enterprise」である。iDRACと緊密に連携しつつ、デプロイ、アップデート、監視、メンテナンスなど、サーバー群を統合管理することに主眼を置いている。

 例えば、数十台のサーバー導入する際に標準モデルとなるサーバーを1台作成すれば、あとはその設定を他のサーバーにどんどんコピーしてデプロイを完了できる。さらに運用開始後は、同じ管理ネットワーク上で稼働しているサーバーの一覧やインベントリ情報、健全性、アラートなどをWebベースのコンソール上で一元的に把握できる。単に確認するだけでなく、各サーバーのファームウェアを最新バージョンに一括してアップデートするといったことも可能だ。

 「サーバー台数がある程度の規模になれば、アップデートタスクひとつとっても管理者は大きな責任を担い、その実務は手間暇がかかって面倒なものです。OpenManage Enterpriseを使えば、これまでかかっていた工数を40分から5分にするといったような、改善レベルとは一線を画したドラスティックな変革をもたらします」(岡野氏)。

 そのOpenManage Enterpriseは、モバイル対応も抜かりない。管理コンソールにある機能のすべてという訳にはいかないものの、ヘルスチェックなどの監視や設定・構成などのコンフィグレーションなど、主要な作業にスマートフォンやタブレットから対応できる点で、昨今にわかに評価を高めている(図4)。

図4:統合管理ツールはモバイル対応にも余念がない

顧客の利便性を優先し他社製ツールへのプラグインも可能に

 魅力的な機能が詰まっているOpenManage Enterpriseだが、デル・テクノロジーズのサーバーを導入するすべての企業が使うとは限らない。マイクロソフトの「Windows Admin Center」やヴイエムウェアの「VMware vCenter」などのメジャーなシステム管理ソフトが前々から現場に根付いているという企業が少なからずあるからだ。

 ここでデル・テクノロジーが用意しているのが共存策。例えばWindows Admin Centerを使っていても、そこにプラグインする形でOpenManage Enterpriseと同じ機能を利用できるようにしているのだ。企業がすでに確立している運用スタイルを崩すことなく、デル独自のインテリジェントな運用環境を取り込めるのである(図5)。

図5:統合管理機能は顧客のニーズに多面的に対応する

 その文脈において、昨今はAnsibleのいわゆる「Infrastructure as Code」スタイルで、構成管理やデプロイメント、アップデートなどの管理タスクを自動化したいという動きも活況だ。これに対しては、Playbookと言われるAnsible用のコードセットを同社が無償提供している(同社はこれをOpenManage Ansible Moduleと呼んでいる)。

 従前から、自分たちでスクリプトを書いて各種の運用タスクをこなしているというケースもあることだろう。ここで、iDRACとはAPI経由で連携を図ることが可能だ。つまり。スクリプトの中に、iDRACをどう使うかを組み込めるのである。これもまた、ユーザーの立場を尊重した選択肢と言える。

セキュリティにも貢献する独自の技術力

 OpenManageポートフォリオが運用シーンに飛躍的な変革もたらし、その中軸となるのがiDRACであることを解説してきた。そのiDRACは、セキュリティの面でも幾多の価値をもたらしている。

 輸送時から始まるライフサイクル全般にわたって「屈強な安全性」を担保することが狙いだ。「シャーシへの物理的な不法侵入はもちろん、USBポートへの不正アクセスもiDRACが検知してアラートを発信するほか、納品するハードウェアのコンポーネントレベルの整合性認証を暗号化署名により証明する、まったく新しいサプライチェーンセキュリティを2020年12月に追加したばかりです」(岡野氏)。一方で、万が一何らかの異常を感知した場合は、システムロックダウン機能によりBIOSおよびファームウェアのバージョンや各構成・設定情報の変更を完全にロックできるといった徹底ぶりだ。

 ここまでくれば、「コモディティ化に拍車がかかるx86サーバーはどのメーカーのものでも大同小異」という考えが、まったく筋違いであることが理解できるだろう。ビジネスとデジタルは今や密接不可分。それを支えるプラットフォームはどうあるべきかを実直に追求し、R&D投資を惜しまない同社のアドバンテージが如実にあらわれる領域なのである。