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HCIの弱点を克服したHCI――、実証されたハイブリッドクラウドインフラ「Azure Stack HCI」の価値

 ITインフラ、特に仮想環境を導入する場合、HCI(ハイパーコンバージドインフラ)はすでに当たり前の選択肢になっており、各社からさまざまなHCI製品が提供されるようになった。しかし多様な製品が存在するがゆえに、企業がHCIを導入しようとしても、どういった基準でどの製品を選択すれば分からない――、といったケースが多いのではないだろうか。

 こうした疑問に対して、さまざまな製品を取り扱ってきた経験に加え、自社での検証を根拠として、明確な回答を提示している企業がある。それがJBCC株式会社だ。同社は主に中堅・中小の企業を対象にITソリューションを提案し、構築・運用している企業だが、そのJBCCでは、Hewlett Packard Enterprise(HPE)のハードウェアを利用して、MicrosoftのHCIシステム「Azure Stack HCI」をソリューション化し、販売を行っている。

 JBCCがメインターゲットとしている中堅・中小企業にとって、Azure Stack HCIとHPEのハードウェアを組み合わせた構成はどのようなメリットを持つのか、そして、実際にどのような検証を行ってその価値を確認したのか。同社の早川珠理氏(プラットフォーム・ソリューション事業部 ソリューション企画)に話を聞いた。

JBCC株式会社の早川珠理氏(プラットフォーム・ソリューション事業部 ソリューション企画)

HCIは中堅・中小企業の課題解決にフィットする

 JBCCは、主に中堅・中小の企業2万社以上に向けて、さまざまなITソリューションを提供しており、「現在の注力分野としては、ハイブリッドクラウドを含めたクラウドや、セキュリティ、アジャイル開発などがあります」と早川氏は説明する。

 また、HCIの取り扱いを2016年から開始しており、実際に各社のHCI製品を検証し、その時、その顧客に最適なソリューションを提案しているという。

 「中堅・中小のお客さまでは、いわゆる"一人情シス"だったり、管理者が少なかったりするお客さまが非常に多い。そこに、運用簡素化というHCIの魅力を提案しています。HCIなら、サーバやストレージを別々に設置する従来型の複雑な構成では運用管理が大変とか、増強や拡張に手間がかかるとか、スペースや電力消費が大きいといった問題を解決できます」と早川氏は説明する。

 また、「システム更改の時も、従来型のソリューションではデータ移行などリプレースが大変という問題がありますが、HCIの場合、スケールアウトの仕組みを利用し、新しいサーバを追加し、移行作業後に古いサーバを外せばいいので、HW更改がとても楽です。そのほか、クラウドライクにすぐに利用でき、運用管理負荷が軽減され、また拡張しやすい点も、少人数情シスのお客さまには取り入れやすいソリューションです」とのことだ。

 その同社では、Microsoft Azureにも力を入れていることもあって、Azure Stack HCIにも注目し、実際に検証を行って有効性を確認したうえで、ソリューションを提供している。

これまでのHCIはコストとパフォーマンスに課題

 早川氏は、Azure Stack HCIに力を入れる背景として、従来のHCIでは2つの課題を感じていたため、とも説明する。

 1つめはコストだ。「HCIが安くなったとはいえ、全体としてはまだ高価な製品で、手を出せないお客さまも多かった。これまでのHCIでは、省スペース、台数削減、運用管理負荷軽減といった間接的なコスト削減は提案できていましたが、どうしてもライセンスの部分でコストが高く見えてしまっていた」という。

 しかしAzure Stack HCIは、Windows Server 2019 Datacenter Editionの標準機能として提供され、ライセンスの面で明確なコスト優位性を持つ。追加でゲストOS、ハイパーバイザやSDS(Software Defined Storage)のライセンスを購入することなく利用することが可能だ。

 コスト面ではさらに、Azure Stack HCIが小規模構成に対応しているのも大きい。まず、Azure Stack HCIでは2ノード構成から実用できるという。「他社でも2ノード構成をうたっている製品も存在するが、そうした製品の場合、2ノード構成では後々の拡張性が乏しいケースもある。ゆえに最小構成では、3ノードのスイッチレス構成が可能(高価な10Gbpsスイッチが不要)なのは、Azure Stack HCIの強みです。当社のお客さまには2~3ノードの規模で利用される場合が多いため、メリットになるといえます」(早川氏)。

 Azure Stack HCIではこうしたことから、小規模構成では、従来のHCIに比べて2~3割ほどコストが下げられる場合が多いという。

 HCIにおける課題の2つめはパフォーマンスだ。一般的なHCIでも特殊な要件がなければおおむね問題ないというが、「夜間バッチ、DBのインポート/エクスポートや大量のバックアップが終わらず他の業務に支障がでてしまうケースがあった。これらは、シーケンシャル IOが遅いことによる影響であり、ミッドレンジ以上の3Tier(Storage)を活用した解決策をとっていた」と早川氏。

 「それに対してAzure Stack HCIは、RDMA(Remote Direct Memory Access)技術によりパフォーマンス面でも優れていることに注目した」と早川氏は話す。そして後述のように、実際にパフォーマンスを検証して、シーケンシャルIOの性能が高いことを確認した。

 なおJBCCでは、この2つの課題に加えて、ハイブリッドクラウドについてもAzure Stack HCIのメリットを感じているという。「例えば、クラウド移行の提案で、IPアドレスが変更できない、アプリケーションの制約でクラウドに移行できないケースが発生することがあります。そのような場合に、Azureと親和性が高いAzure Stack HCIなら、オンプレでもクラウド連携できる構成をご提案できる、という点にも注目しました」(早川氏)。

コスト、パフォーマンス、管理機能を実機検証し、その効果を確認

 前述のように、JBCCではではAzure Stack HCIを中堅・中小企業向けのHCIソリューションとして提供するために、実際に検証を行っている。検証にあたってのポイントは大きく分けて3つだ。

 1つめはコスト。「コストをおさえた構成ができるというのは情報としては理解していましたが、2ノードで本当に使えるものなのか、可用性や性能などを実際に検証しました」と早川氏。

 また3ノードのスイッチレス構成でも、実際にその構成で動かして問題がないかを検証した。さらに、無停止で2ノードから3ノードへのアップグレードがきちんと行えるかどうかも検証したとのことで、これらの結果、最小構成でも十分に顧客に提供できることが確認できたという。

 2つめはパフォーマンスだ。前述の通り、HCIでシーケンシャルIOがボトルネックでパフォーマンス低下という問題があったため、「Azure Stack HCIで実際にこのボトルネックが解消されるのか検証してみた」と早川氏。

 その結果、種類や環境にもよるが、ミッドレンジクラスのストレージと匹敵する程度のパフォーマンスを持つことが検証できた。なお、検証したのは2ノードと3ノードの各構成だが、ノード数を増やすとさらに速くなる傾向である仕組みであることも分かったという。

 なおベンダー側として、日本マイクロソフト株式会社の高添修氏(パートナー技術統括本部 シニア クラウドソリューションアーキテクト)は、「HCIでは、複数のノードを接続することになりますので、ネットワークを含めてパフォーマンスはしっかりやっていこう、という方針で開発されています」とコメント。性能面について自信を示している。

日本マイクロソフト株式会社の高添修氏(パートナー技術統括本部 シニア クラウドソリューションアーキテクト)

 3つめは、管理機能であるWindows Admin Center関連である。Windows Admin Centerでどこまで管理作業ができるか、Azure Stack HCIはAzureとの一元管理がうたわれているがそこはどうか、といったことを、いままでのHyper-V環境と比べた。

 その結果としては、見やすさを感じたという。性能情報がリアルタイムで見られ、過去の性能情報も見やすい。ホスト、仮想マシン(VM)、ディスクなどのパフォーマンス情報も可視化できる。「そうした可視性の点でよくなっていると思いました」と早川氏は述べる。

Windows Admin Center クラスターマネージャーダッシュボードの画面イメージ。クラスター全体の状況が確認できるダッシュボードだ(出典:日本マイクロソフト)

 その一方で課題となった点として、まず、Azure連携については、Windows Admin Centerだけでは難しく、Microsoft Azure側のAzure Portalを使う必要があることが分かった。

 こうした、Windows Admin CenterからのAzure Stack HCIの管理について、日本マイクロソフトの高添氏は、「当社では、もともと提供していた管理製品のクラウドシフトを進め、クラウド側での新規開発も進めてきたので、クラウド優先に見えるのはその方針からきています。Windows Admin CenterのAzure連携強化はもちろん進めていきますが、うまくはまるところから使ってほしいと思っています」と回答した。

 ITインフラは現在、間違いなくハイブリッドクラウドの方向へ向かっており、それを踏まえたうえでの機能提供、ということになる。

 もう1つ、障害のアラートをメールで通知するといったことは難しいという点も判明したが、これは、サーバハードウェア側の機能で補完できるという。JBCCがベースハードウェアの1つとして採用しているHPE製のサーバ「HPE ProLiant」は、クラウドベースの統合管理・監視ツール「HPE InfoSight」などを活用した充実した管理機能が特長となっており、こうした弱点の補強にはうってつけだ。

HPE Solutions for Azure Stack HCI(出典:HPE)

導入から運用、マネージドサービスまで含めて提供

 これらの検証結果を受けて、JBCCではAzure Stack HCIを信頼できるソリューションとして提供を開始した。ハードウェアを含めた動作検証済みの構成に加え、導入・保守サポートを含めたソリューションパッケージとしても提供する。

 ベースハードウェアの1つとして採用しているHPE ProLiantについては、前述の通り管理機能の補完という面でもメリットがあるが、さらに早川氏は「Azure Stack HCIの対応ハードウェアの種類が、他社より多いと感じています。特に当社で魅力と考えているのが、1ソケットサーバから対応しているところで、Azure Stack HCI自身の特徴とあわせ、小規模でも構成しやすい点は魅力的です」と語った。

 またJBCCならではの特徴としては、「当社では各社のHCI製品を把握していて、お客さまに最適なソリューションを提案できます。お客さまの現状を分析するアセスメントサービスも無料で提供しており、利用状況を考慮した提案ができます」と早川氏。

 さらにAzureと組み合わせたオプションとして、バックアップの「Azure Backupオプション」、VMレプリケーションの「Azure Site Recoveryオプション」、ファイルサーバ複製の「Azure File Syncオプション」の3つがあり、特にAzure Site Recoveryでは、災害時にクラウドへの自動切換えまでを対応するJBCCマネージドサービスもある。

 「購入後も一貫したサポートが可能なため、運用工数を削減できます。Azure Stack HCIを構成するソフトウェア、ハードウェアにマネージドサービスを加え、オンプレミスからクラウドまでを含め、適材適所に提供することが可能です」(早川氏)。

Azure Stack HCIとJBCCのサービスによるメリット(出典:JBCC)

 なおJBCCでは、すでにAzure Stack HCIの導入実績があり、その多くはHyper-V環境をHCIへ移行したいというケースだという。従来のHCIではHyper-Vベースの選択肢は少なかったが、もちろんAzure Stack HCIであれば問題ないわけだ。

 現在提案中の案件では、Azureとのハイブリッドクラウドとしての例もある。もともとAzure移行から入った案件だったが、パブリッククラウドへ移行にするにはアプリケーション側でのIPアドレス改修が必要となってしまう部分をオンプレミスに残すことになり、そのインフラとしてAzure Stack HCIを提案した。「一元管理のメリットを訴求し、いい反響をいただいています」(早川氏)。

 また今後、ソリューションを提案していく分野について、早川氏は「従来のHCIで提案できなかったところ」と語った。「例えば、10台未満のサーバしか導入されておらず、コスト的な問題などでHCIには移行できていなかった、といったケースに対して提案ができます。そうしたお客さまで使われているOSはWindowsが多いので、最もコストパフォーマンスに優れ、既存のスキルが使えるAzure Stack HCIのメリットは大きいでしょう。さらにHCIですから、そうしたケースでも冗長性を持たせた構成になります」(早川氏)としており、HPEハードウェアベースのAzure Stack HCIによって、魅力的な提案が可能になると説明している。

今後はハイブリッドクラウドでの提案にも注力

 このように、実機検証を済ませてその効果をきちんと認識したうえで、顧客へのソリューション提案を行っているJBCCだが、では、Azure Stack HCIとJBCCの取り組みについて、ハードウェアパートナー側ではどう見えているのだろうか。

 日本ヒューレット・パッカード株式会社の原聖氏(ハイブリッドIT事業統括 プロダクトアーキテクト統括本部 製品技術本部サーバーソリューション部)は、Azure Stack HCI自身について、「Windows ServerのライセンスだけでHCIのインフラを作れてしまうAzure Stack HCIは、面白い製品だと思います。リーズナブルにハイブリッド環境ができるため、ハードルの低さも魅力的ですね」とコメント。

 そのうえで、「しかも、実際にJBCC社にストレージ性能などを検証していただいた結果からも分かるように、安かろう悪かろうでなく、高性能という点もあります。リーズナブル、ハイブリッドな提案、高性能の3点のそろった製品だと思います」と述べた。

日本ヒューレット・パッカード株式会社の原聖氏(ハイブリッドIT事業統括 プロダクトアーキテクト統括本部 製品技術本部サーバーソリューション部)

 日本マイクロソフトの高添氏も、JBCCのAzure Stack HCIへの取り組みについて、「単にHCIとして販売するだけでなく、最初からハイブリッドクラウドとして検証していただくなど、製品の在り方をコンセプトから理解していただいていると感じます。新しい価値訴求のためにも、とても重要なパートナーです」と話している。

 なお早川氏は、今後のAzure Stack HCIへの取り組みについて、「世の中の流れがパブリッククラウドにシフトしてきていますが、それだけですべて解決するわけではないので、Azure Stack HCIを使ったハイブリッドクラウドも積極的に提案していきたいと思います。(一般的なHCIとしての)オンプレミスでも、ハイブリッドクラウドソリューションでも、お客さまの課題にあったものを提案できるのが我々の強みです」と、あらためて強調していた。

 コストメリットがあり、小規模構成が可能で、性能面も申し分がないことが実証されたAzure Stack HCI。さらに、ハイブリッドクラウドへの対応がしやすく、JBCCとHPEによるしっかりしたサポートも提供されている。

 現在、インフラとしてHCIを考えている、既存のHyper-V環境の統合を検討している、あるいは将来的なクラウド移行を検討している企業にとって、JBCCによるAzure Stack HCIソリューションは強い味方になりそうだ。