特別企画
タブレットと魅力的なコンテンツで営業革新、ドリーム・アーツの新サービス「YUKARi」に迫る
営業の縦割りを解消する情報共有も実現
(2013/10/15 00:00)
株式会社ドリーム・アーツは、タブレット端末を活用し、営業の革新を支援する新たなBaas(Best practice as a service)型クラウドサービス「YUKARi(ゆかり)」を9月10日に発表した。
会社や事業、製品・サービスなどの魅力を顧客に伝えるタブレット向けコンテンツを制作・配信・管理できるサービスだ。タブレット端末向け営業支援ツールといえば、すでに各社から様々なアプリがリリースされているが、「YUKARi」の大きな特徴は、単にツールを提供するのではなく、そのデザインから制作、環境構築、運用、コンサルまでワンストップで提供し、営業のやり方そのものを変革させることにある。「YUKARi」の開発経緯、サービスの概要、そして「YUKARi」が企業にもたらすメリットなどを聞いた。
“響感する営業”にこそタブレット端末を使うべき
今やタブレット端末は、個人だけでなく企業にも導入が広がり、経営層から営業部門まで全社規模でタブレット端末を展開する企業も増えつつある。しかし、その一方で、タブレット端末を導入したものの、思うようにビジネス効果があがらず、タブレット端末をどう活用したらよいのか頭を悩ませているIT担当者も少なくないのが実状だ。
「特に、当社が顧客から多く相談を受けていたのが営業部門におけるタブレット端末の活用法。パンフレットなどの営業資料をタブレット端末に格納して、客先でプレゼンを行うことで、営業マンにとっての利便性は向上したが、営業成績にはなかなか結びつかない。タブレット端末を、もっと効果的な営業ツールとして活用できないものか――そうした声に応えるべく、試行錯誤を繰り返していく中で、『YUKARi』のコンセプトが固まっていった」と話すのは、ドリーム・アーツ 取締役 最高技術責任者の前川賢治氏。
「YUKARi」の開発に当たっては、“営業マンの本来の役割とは何か”、その原点に立ち返ったという。「パソコンの性能向上やアプリケーションの進化は、営業マンにとって本当にメリットをもたらしているのか。凝ったプレゼン資料を作るために、パソコンに向かっている時間が増えただけではないのか。タブレット端末も、単なるパソコンの代わりにすぎないのではないか。本来、営業マンは客先に出向いて、多くの顧客と会って、“響感”を生む営業に力を注ぐべき。であれば、この“響感する営業”をサポートするフック的ツールとして、タブレット端末を活用しようと考えた」と、タブレット端末は対面営業の現場でこそ真価を発揮すると力を込める。
また、前川氏は、営業マンの抱える課題について「営業マンは、自分の担当分野や業務領域には詳しいが、他の分野まではなかなか気が回らない。とくに、縦割りでビジネスをしている大企業ほどその傾向が強い。そのため、営業マン一人の判断では、社内のすぐ側にビジネスチャンスがあっても、気づかずに見逃してしまうケースもある。そこで、営業マンが対面営業で得た一次情報を、社内で広く共有する仕組みも重要になる」と指摘する。
こうした着想のもと、同社が実際に営業現場でタブレット端末を活用し、また多くの顧客の課題解決を支援する中で得たノウハウを磨きあげ、その集大成として生まれたのが、営業スタイルを革新させるBaas型クラウドサービス「YUKARi」だ。ここからは、具体的に「YUKARi」のサービス概要について見ていこう。
営業の“フック的”な仕掛けとして魅力あるコンテンツを
「YUKARi」のサービスは、営業マンがタブレット端末を活用するための「フロントアプリ」と、フロントアプリを管理する「マネジメントサーバー」の大きく2つの要素で構成される。まず、「フロントアプリ」では、9つのタイル(横3×縦3)に分割された横画面と、タイル分割無しの縦画面を提供し、それぞれ用途に応じてさまざまなコンテンツを表示させることができる。
横画面では、9つのタイルを単独で使ったり、(表組みのセルを結合するように)結合させることで、コンテンツを自由にレイアウトすることが可能。画面は複数作成することができるため、例えば、ファースト画面に会社紹介やソリューションMAP、セカンド画面に商品やサービスの紹介、サード画面では付随情報やトピックスを掲載するといったページ構成が可能だ。一方、縦画面は、タイル分割がない1画面のスペースを提供。自社にとって最大の強みとなる事例や実績などをコンテンツ化し、画面一杯に表示させることができる。
「フロントアプリ」のデザインコンセプトについて前川氏は、「パソコンのホームページのような画面や、パンフレットのデータを表示させるだけの画面にはしたくなかった。タブレット端末ならではの特徴を生かし、客先でパッと見せて、相手の興味をひけるようなデザインを目指した。営業マンは、ファーストコンタクトで、いかに自社の商品に興味を持ってもらい、“響感”を生むことができるかが重要。それができれば、次の機会につながり、より詳しい商品説明を行うチャンスが得られるはず。そこで、『フロントアプリ』は、余分な表示を徹底的に省き、ビジュアルやキーワードで印象的に自社の商品や特徴をアピールできる画面デザインに仕上げた。テーブルに相対して説明するのではなく、隣に座って一緒に画面を見ながら会社や製品を説明する、そんなイメージを想定している」と説明する。
「フロントアプリ」には、このコンテンツ画面に加えて、社内システムと連携し、営業活動で必要な業務機能を集約した「ワークステーション」機能も搭載している。標準搭載される機能としては、通知・通達/行動予定/メール/社内SNS/問合せDB/営業レポート作成・営業レポート一覧/顧客情報検索/案件情報検索/営業予算管理/営業資料・My書庫があり、オプションとしてVOC(顧客の声)/電子稟議決裁/アンケート調査/見積もり作成などを提供する。
「『ワークステーション』機能の大きなメリットは、営業レポートを全社員で共有できることだ。これにより、今までの縦割り営業の課題であった、横の連携を実現することができる。営業レポートには、営業の内容や経過だけでなく、雑談した内容なども記入できるようになっており、この一次情報を、営業マネージャーからエンジニア、サポート、経営層まで全職種のスタッフと共有し、それぞれの視点からアドバイスやヒントをもらうことができる。営業マンの何気ない営業レポートがきっかけで、意外なところからビジネスチャンスが生まれることもある」(前川氏)という。
「フロントアプリ」を管理する機能を提供するのが「マネジメントサーバー」。DBには、NoSQLのMongo DB、アプリケーションサーバーにはNode.jsを採用し、大量アクセスを処理するとともに、容易な開発環境を実現している。「マネジメントサーバー」の機能としては、フロントアプリへの各種コンテンツのデータ登録、画面のエフェクト設定、ボタンや画像の配置などが行え、フロントアプリを簡単に作成することができる。
デザイン・制作・構築・運用・コンサルまでワンストップに提供
このように、「フロントアプリ」と「マネジメントサーバー」によってサービス提供される「YUKARi」だが、ここまでのソリューション構成であれば他社でも提供できないことはない。「YUKARi」の最大の差別化ポイントは、デザインから制作、環境構築、運用、コンサルまで、ドリーム・アーツがワンストップで提供するという点にある。
「サービス提供に当たっては、単にツールを提供するのではなく、顧客の担当者と打ち合わせを行い、『YUKARi』への要望をヒアリングするとともに、フロントアプリに掲載する資料や素材を提供してもらう。これをもとに、ビジュアルやキーワードを当社がすべて制作し、顧客にとって最適なフロントアプリのコンテンツを提案する。企画から提案、サービス提供までは、約1ヵ月間。そして、実際に営業マンに活用してもらい、ニーズに沿って、順次カスタマイズ対応していく」と前川氏は述べる。
同社は「YUKARi」提供以前より、タブレットアプリやシステムの開発を手がけてきた。その一例が株式会社レンタルのニッケンに導入した「営業支援コンテンツポータル」だ。営業担当者が現場で顧客に対して製品の特徴・仕様を説明する際に使えるドキュメントや動画などを集めたポータルサイトで、製品が動いている様子を見せることで口頭や文書で説明するよりも高い訴求力を実現した。
「YUKARi」はこうした経験に基づいている。経験を基にした“ソリューション提案力”にこそ、他社にはマネできない、ドリーム・アーツならではのノウハウや知見が凝縮されているのだという。
「YUKARi」の発表以降、ドリーム・アーツ社内のサービス提供体制も急ピッチで整備が進められており、「YUKARi」を中核に営業改革を推進するチームを新たに編成する予定。このチームには、「YUKARi」のサービスを担当するデザイナーやエンジニア、コンサルタント、サポート要員などが結集するという。
今後の展開について前川氏は、「まずは、営業活動を支援する機能にフォーカスして『YUKARi』をサービス提供したが、次のステップとしては業務に密着した機能を追加していく予定だ。例えば、経営者が社内で気づいた点を報告できるアプリや、レンタカーの貸し出し前後の状態を写真で比較できるアプリなど。これらは、個別案件で開発したものだが、今後、『YUKARi』のプラットフォーム上で展開していきたいと考えている」と、営業支援にとどまらない「YUKARi」のさらなる可能性の広がりに意欲を見せた。