特集
エンタープライズに“必要十分”な仮想化基盤を――NTTデータ、KVMベースの仮想化基盤サービス「Prossione Virtualization 2.0」を3月から提供開始
日立などパートナー6社による展開も
2026年2月24日 06:15
株式会社NTTデータは、2025年7月に一般提供を開始したKVMベースの仮想化基盤サービス「Prossione Virtualization 1.0」のアップデートとなる「Prossione Virtualization 2.0」を、3月から提供を開始すると発表した。
前バージョンでは仮想化基盤の基本的な管理機能のみの提供だったが、今回のバージョン2.0は、仮想化基盤の構築から運用、長期サポートまでを一貫して提供するメニュー構成となっており、他社の仮想化基盤製品/サービスからの移行も想定した機能強化が実施されている。
発表を行ったNTTデータ 執行役員 テクノロジーコンサルティング事業本部長 新谷哲也氏は「仮想化基盤は企業にとって重要なインフラであるからこそ、ある程度は自国で主権を確保することが望ましい。昨年7月にProssione Virtualization 1.0を提供して以来、海外ベンダーの動向に左右されず、透明性を確保できる仮想化基盤への市場の期待を強く感じてきた。今回のバージョン2.0をもって、より広い範囲の顧客のニーズに応えていきたい」と語る。
仮想化基盤の構築工数を削減できるProssione Virtualization 2.0
Prossione Virtualization 2.0は、数十台程度のサーバー数を想定した、中規模なシステムをメインターゲットにしたサブスクリプション形式の仮想化基盤サービス。以下のコンポーネントが含まれる。
・Prossione Virtualization OS(PVOS) … AlmaLinuxをベースに仮想化基盤向けにNTTデータがチューニングしたLinux OSで、KVMと統合済み
・Prossione Virtualization Manager(PVM) … GUIおよびAPI経由で容易に操作できる仮想化基盤管理ツールで、複数のホストサーバーや仮想マシンをWebインターフェイスで一元管理
・仮想マシン移行支援(PV-V2V) … ほかの仮想化基盤からProssione Virtualizationへの仮想マシン移行を支援するツール、移行手順の大部分を自動化しており、手作業を最小化
・ミッションクリティカル向け高可用性機能(PV-HA) … ホストサーバー障害時に仮想マシンをほかのホストマシン上で自動復旧する機能、99.999%(ファイブナイン)の高可用性を実現
・長期サポート … 脆弱性対応を含む継続的なアップデートに加え、製品の互換性を維持したアップデートを提供するほか、近い将来には8年間のサポートを提供するLTS版を用意する予定
また、前バージョンと同様にさまざまなFAQや設計サンプルなどを含んだドキュメント群の提供や、オープンソースを専門とする技術者からの製品サポートも受けられるほか、オプションとしてシステムインテグレーションやトレーニングも用意されている。
Prossione Virtualizationがバージョン2.0になったことで得られる導入効果として、NTTデータ ソリューション事業本部 OSSソリューション統括部長 濱野賢一郎氏は「仮想化基盤の構築工数削減」「高可用性実現」「長期サポート」の3点を挙げている。
仮想化基盤の構築工数削減
バージョン1.0で提供されていたのは仮想化基盤管理機能のPVMとライブマイグレーション機能だけだったため、導入企業はKVMが動作するLinux環境を自前で準備しておく必要があった。しかし今回のバージョンアップではPVOSが提供されるため、仮想化基盤に必要なプロダクトを一括でセットアップでき、設計/構築フェーズでの作業を約60%(手作業でKVMベースの環境を構築する場合との比較)削減できるという。
また前バージョンから提供しているPVMも大幅にアップデートしており、仮想マシンの構成変更や外部ストレージとの接続管理、仮想ネットワークの管理などがGUIから一元的に行えるようになったほか、外部システムとの連携や運用作業の自動化用にAPIが提供され、より高度な運用が可能になった。
高可用性実現(99.999%)
バージョン1.0から提供しているライブマイグレーションに加え、「エンタープライズの顧客が熱望していた」(濱野氏)という、ミッションクリティカル向けの高可用性機能をPV-HAとして提供している。物理サーバー(特にホストサーバー)が故障しても待機系ホストサーバーで仮想マシンを自動で再起動する高可用構成が、GUI操作によって数ステップで設定可能となっており、高可用構成を実現するための設計コスト/期間を大幅に削減している。
長期サポート(LTS)
システムのライフサイクル全体を見据えたサポートとして、8年間という長期のサポートを標準で提供、長期間の安定運用が求められるシステムにも適用しやすくしている。また、脆弱性対応などを含むアップデートを継続的に提供し、アップデートに伴う不具合発生リスクを低減する。
なお、バージョン2.0からはLinux OS(PVOS)込みの提供となったが、顧客自身が用意するLinux環境での展開も可能となっている。「NTTデータとしてはPVOSでの動作を推奨しているが、(Red Hat Enterprise Linuxなど)自社のLinux環境でProssione Virtualizationを動かしたいというニーズにも応えていきたい」(濱野氏)
Prossione Virtualization 2.0の標準価格は1サーバーあたり年間90万円だが、「できるだけ速くこの製品を市場に浸透させたい」(新谷氏)ことから、2026年2月12日から2027年3月31日までをキャンペーン期間とし、期間中は1台あたり年間65万円のキャンペーン価格で提供される。
販売/提供はNTTデータ自身が行うほか、今回新たにパートナープログラムに参加した日立製作所(以下、日立)を含め、6社のパートナー企業とともに販売/提供を行っていく。
説明会に登壇した日立 マネージド&プラットフォームサービス事業部 ハイブリッドクラウドサービス本部 本部長 滝沢武久氏は「透明性の高さから仮想化基盤としてKVMへの移行を望む顧客が増えており、機能を強化した新しい仮想化基盤の必要性を感じていた。Prossione Virtualizationはオープンソースに関してさまざまな知見を培ってきた日立が選んだ答え。日立独自の高信頼化機能とProssione Virtualizationを組み合わせることで、高信頼で使いやすい仮想化基盤を構築し、プライベートクラウドプラットフォームとして提供していく。NTTデータとの協業で、よりセキュアな安定基盤を提供し、社会インフラを支えていきたい」と語った。
******
「バージョン2.0になって、ようやくエンタープライズの顧客にとって“必要十分”な仮想化基盤を提供できるようになった。加えて日本企業が継続利用に伴う不安を抱かなくてもいい、安心して使える基盤を提供していきたい」――。
Prossione Virtualization 2.0の提供開始にあたり、濱野氏はこう語っている。シンプルな仮想化基盤管理機能とライブマイグレーションの提供のみだった2025年7月のバージョン1.0から、「さまざまな機能を拡充し、エンドツーエンドで必要と思われるものをひと通り提供できた」(濱野氏)というバージョン2.0は、仮想化市場で大きなシェアを誇るBroadcom/VMware環境からの移行を検討する顧客を主なターゲットにしている。特にエンタープライズには必須の高可用性構成と、他社基盤からの仮想マシン移行支援をメニューに含めたことで、VMwareライセンス更改を2026年内に控える企業のニーズに応えたかたちだ。
「仮想化環境だけ欲しいというエンタープライズのリクエストは本当に大きい。また、(VMwareの代替環境として)パブリッククラウドの移行は価格的にも乗り換えが難しいという声も聞く。エンタープライズにとって仮想化基盤として”欲しいもの”だけを届けられる製品は、他社からもほとんど出ていないという印象」(濱野氏)。
BroadcomによるVMware製品のライセンス改定とそれに伴う大幅な価格アップは世界中のユーザーに大きな衝撃を与えたが、現状ではVMwareを完全に代替する仮想化環境を構築することは非常に難しいとされる。
一方で、海外ベンダーの動向に振り回されない仮想化基盤サービスを求める声も強くあり、濱野氏は「NTTデータが“最後までやりきる”仮想化基盤サービスとして見てもらいたい。また、NTTデータだけでは支援の手が届かない中小企業や地方企業に対しては、ふだんはシステムインテグレーションで競合関係にある企業にもパートナーとして協力をお願いする。グローバルのニーズも認識しており、Prossione Virtualizationを扱いたいという海外のパートナーがいたら、前向きに話し合っていきたい」と国内外の仮想化ニーズに広く応えていく姿勢を見せている。
「まずはバージョン2.0でもって、使ってくれる顧客のサポートを丁寧にやっていきたい。大きな機能拡張などはその後の話」という濱野氏だが、最初の提供開始の発表から約1年かけて準備してきたProssione Virtualizationが、脱VMwareを図る企業のニーズにかなう存在になるのかに注目していきたい。












