特別企画

学校導入? 家庭負担?――学校タブレット導入ケース別のメリット・デメリット

 6月5日~7日に有明の東京ファッションタウンビルで「NWE EDUCATION EXPO 2014」が開催された。7日(土)には、学校タブレットの導入ケース別にメリットとデメリットを紹介するセッションが開かれた。

 学校タブレットが浸透しつつある昨今。今までは教師用のツールとして捉えられてきたPCがタブレットに代わったことで、教師がどう使うかだけでなく、生徒にどう使わせるかが重要になってきている。

 一方で、その導入方法についてはいまだ最適解は見つかっていない。各学校・自治体でも導入方法はそれぞれ異なる。セッションのモデレーターを務めた放送大学 教育支援センター教授の中川一史氏によると、現在はおおむね「教師用」「グループ分」「1クラス分」「複数クラス分」「全校児童生徒分」「個人所有」の6タイプに分類できるという。

 セッションでは具体的な事例として、神奈川県厚木市立相川小学校の「学校独自購入」、熊本県阿蘇郡高森町の「町ぐるみ」、三重県松坂市立三雲中学校の「一人一台・学校導入」、千葉県立袖ヶ浦高等学校の「一人一台・個人所有」の4タイプが紹介され、それぞれの担当者から導入経緯、活用方法、そのメリット・デメリットが説明された。

 本稿ではその様子をレポートする。最初に4ケースのメリット・デメリットをまとめた表を載せておくが、特に「一人一台・個人所有」の事例は必見だ。

放送大学 教育支援センター教授の中川一史氏
4ケースのメリット・デメリットまとめ

「学校独自購入」~相川小学校の場合

厚木市立相川小学校 校長の中川洋太氏

 厚木市立相川小学校は、学年2クラスの市内でも小さな学校。中川洋太校長が論文を発表したところ最優秀賞に輝き、賞金30万円が手に入ったことから、学校独自に2台のiPadを購入した。

 「30万円で何を買おうかとアンケートを採ったときに、新しいコピー機、ポスタープリンタ、書画カメラなどがほしいという意見が出る中、ある先生がiPadなら1台で全部できますよとプレゼンした内容が見事で、iPadを購入することに決めた」(中川洋太校長)。

 併せて、体育館に専用の大型テレビも購入。先生たちが個人で所有していた4台のiPadを加えた計6台で、さまざまなICT授業に取り組んでいる。

プロジェクタと組み合わせて授業で活用
生徒の解法を撮影
グループ学習にタブレット活用
発表もタブレットを使って行う
体育館には専用の大型テレビも設置
跳び箱の様子を撮影しみんなで確認しているところ
タブレットなら校庭にも容易に持ち出せる
体育で動きを確認するのは今までになかった取り組みだ

 では、学校独自購入のメリット・デメリットは何だろうか。

 中川校長がメリットとして挙げたのは、使いたい機種やアプリ、ほしい情報がすぐに入手できる点だ。管理も自分たちでできるので、必要なときに職員室で研修が行えるなど、フットワークの軽さがあるという。

 一方でデメリットとして挙げたのは、故障時の保証がなかったり、消耗品の費用が捻出できなかったり、メンテナンスの課題をどう克服するか。また、学校独自の取り組みなので、他学校への展開や連携が見込めない点も強調している。

 まとめると以下の表のようになる。

 なお、独自にiPadを購入・利用するに際しては、「教育委員会へどこまでやっていいのか・悪いのかを確認しており、内緒でやっているわけではない。行政主導で取り組みがスタートしたらもちろんそれに従う」(中川校長)としている。ただ「それだといつになるか分からない、待てない」という思いがあったそうだ。

メリットデメリット
・好きな機種やアプリが選べる
・すぐに研修ができる
・校務用ではなく教務用として管理がしやすい
・LANに接続できない
・メンテナンス費用が捻出できない
・行政整備につながらない

(川島 弘之)