特別企画

Converged 3.0が実現するハイパーコンバージドの進化形「HPE SimpliVity」とは?

ハードウェアアクセラレーターによる次世代インテリジェントストレージで、HCIに新たな価値を生み出す

 日本ヒューレット・パッカード(以下、HPE)は6月15日、新たなハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)製品シリーズ、「HPE SimpliVity 380」を発表した。米HPEが今年1月に買収を発表した、SimpliVityの製品だ。HCIは無制限にスケールアウトできる仮想化基盤として日本企業でも導入が進んでいるが、HPEによるとSimpliVityの技術には、HCIを次のステージ「Converged 3.0」へと引き上げるインパクトがあるという。今回、発表前にHPE担当者にインタビューする機会を得たので、SimpliVityの特徴についてリポートしたい。

HPE SimpliVity 380。日本初上陸となる第1弾では、CPUにIntel Xeon E5-2600 v4×2(16~44コア)を搭載し、SSDの容量が異なる3モデルをラインアップ

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重複排除とデータ圧縮を前提とした「インテリジェントなストレージ」

 念のためにおさらいしておくと、HCIとは1つのノードにサーバーとストレージを一体化した仮想マシンの実行基盤である。製品によって実現方法はさまざまだが、ノードを追加することで処理能力とストレージを同時に拡張できるというのが特徴だ。汎用のサーバーをソフトウェア制御でストレージ化することから、SDS(Software Defined Storage)製品として扱われることが多く、HPEもSimpliVityをそう位置付けている。

 このSimpliVityについて、HPE プリセールス統括本部 データセンター・ハイブリッドクラウド技術本部のテクノロジーエバンジェリストの小川大地氏は、「優れた重複排除とデータ圧縮機能を備える"インテリジェントなストレージ"」と説明する。

日本ヒューレット・パッカード株式会社 プリセールス統括本部 データセンター・ハイブリッドクラウド技術本部 テクノロジーエバンジェリスト 小川大地氏

 「SDS製品の多くは、容量効率の向上のために重複排除やデータ圧縮といった機能を備えています。しかし、どちらも負荷が高く、ホストできる仮想マシンの数が減ったり、I/O性能が低下したりするなどトレードオフが大きいため、用途やアプリケーションの重要度によっては、重複排除やデータ圧縮の使用を控えることが推奨されているのが通常です」(小川氏)。

 この問題を、SimpliVityは専用のハードウェアアクセラレーターを搭載することで解決している。負荷の高い処理をオフロードできるだけでなく、判定サイズを小さくすることで、他社製品の重複排除機能よりも高い確率で重複排除が行える。
「SimpliVityの場合、ゼロ負荷で重複排除とデータ圧縮を利用できるため、用途や重要度に応じて機能をオン/オフする必要はなく、どんな用途でもオンのまま運用できます。重複排除とデータ圧縮で、メイン領域でもデータサイズを約3分の1に、バックアップ領域も含めれば約10分の1に削減することが可能です」(小川氏)。

SimpliVityの重複排除処理のイメージ図。判定サイズを小さくすることで、高い排除率を実現。判定サイズを小さくするほど処理が重くなるが、ハードウェアアクセラレーターを用いることでCPU負荷の上昇を回避している

 ハードウェアアクセラレーターによる重複排除とデータ圧縮で得られる効果は、容量効率の改善だけではない。まず、CPU負荷が抑えられ、かつ同じ容量でより多くのデータをストアできることから、より高密度な仮想マシンの集約が可能になる。同じ数の仮想マシンを運用する場合、SimpliVityならより少ないノード数で済むということだ。

 また、ノード間における仮想マシンの移動やバックアップ/リストアが高速に行える。SimpliVityは、ノード間のデータ移動をブロック(チャンク)単位で行う。移動先に内容が同じブロックがあれば、メタデータだけをコピーして、データそのものはコピーしない。コピーが必要なケースでも、データは圧縮された状態で転送されるため高速にコピーすることが可能だ。これにより、定期的なバックアップでは、更新されたブロックのみの差分コピーになり、バックアップが瞬時に完了する。

 このネットワークの高速化効果は、LANだけでなくWANでも同様に発揮される。すなわち、遠隔地にバックアップ・ノードを設置しておけば、SimpliVityの標準機能だけでBCP/DR対策が図れるということだ。

 このように、SimpliVityでは重複排除とデータ圧縮を、容量効率の向上だけではなく、HCIの価値を向上させる基本機能として位置付け、積極的に活用しているのだ。

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ITインフラの管理を徹底的にシンプルに

 ハードウェアアクセラレーターと並ぶSimpliVityの特徴が、その管理性の高さである。SimpliVityではハイパーバイザーにVMware ESXiを採用しているが、SimpliVityの管理機能はVMware vCenterのプラグインとして実装されており、単一コンソールでの集中管理を実現している。

 「他社のHCI製品には独自の管理ツールを提供しているものがありますが、ハイパーバイザーにVMwareを使用している場合に、VMwareの標準ツールではない独自ツールで管理すると、当然ながら同社のサポートを得られません。私もメーカーの人間ですのでこのリスクは良く把握しています。SimpliVityがvCenterのプラグインとして管理機能を開発・実装している背景には、VMware社の管理ガイドラインに準じており、お客様がサポートを受ける際に反故にされないようにしたいという理由があります」(小川氏)。

 複数の管理ツールを行き来しなくて済むだけでなく、SimpliVityでは仮想マシン単位での管理が徹底されており、操作も極めてシンプルだ。例えばバックアップを行う場合は、対象の仮想マシンを右クリックして「Backup」を選択するだけでよく、ストレージボリュームのLUNなどを意識する必要はない。高度なITスキルが不要なので、オペレーションミスも発生しにくい。

SimpliVityの管理画面。VMware vCenterに統合されており、右クリックメニューの「All SimpliVity Actions」からバックアップやクローン作成、移動などの操作コマンドを実行できる

 「手動バックアップも簡単に行えますが、通常は自動バックアップで十分です。これまでバックアップは、システム負荷の低い夜間に一日一回集中的に行うものでしたが、SimpliVityは超低負荷かつわずかな容量消費でバックアップが行えるため、1時間ごと、あるいは10分ごとといった短いサイクルでの自動バックアップ運用ができ、データ消失リスクを大きく低減できます」(小川氏)。

HCI市場を大企業だけでなく、中小企業・部門レベルにまで拡大

 2ノード構成によるスモールスタートが可能な点も、SimpliVityの特徴である。
「他社のHCI製品では、冗長性を確保するために最低3ノードを必要としますが、SimpliVityなら2ノードから導入できます。極端な話、2ノードなら10Gスイッチを使わずに、ノード間をクロスケーブルで直結した構成も可能です。今後、x86サーバーのメニーコア化がさらに進んでいけば、業務システムの数が100個未満の中小企業なら、数ノードのHCIで運用できるようになるでしょう。そうなったときに、より少ないノードで導入できることはSimpliVityの強みになります」(小川氏)。

 確かにこれまでのHCI製品は、大企業がVDI用途で導入するような、スケールメリットが得られやすい規模と用途で使われることが多かった。だが、SimpliVityが提供するシンプルなIT管理は、専任のITスタッフを確保しにくい中小企業でこそ必要とされているものだ。

 SimpliVityは、用途を問わず収容することが可能であり、汎用の仮想化基盤として利用できる。今回、国内発表されたSimpliVityシリーズの第1弾モデル群は、いずれも流行のオールフラッシュ・タイプだが、SSD+HDDのモデルやGPU搭載モデル、バックアップ専用のHDDモデルなど、順次ラインアップの拡充を進めていくという。また、日本初上陸となったにもかかわらず、すでに海外でSimpliVityを導入している外資系企業から「ようやく日本でも購入できるようになった」と引き合いが来ているそうだ。

 ちなみに、HPEにはSimpliVity以外にも複数のHCI製品ラインが存在するが、既存製品の位置付けに変化はないという。

 「弊社の既存のHCI製品ラインは、多くの実績のあるSANストレージのエンジンを移植したのが特長で、従来からの運用スタイルを変えずにSDSやHCIを使いたい企業や、ファイブ・ナイン(99.999%)といった高い堅牢性を重視するお客様に今後も提供していきます。一方、SimpliVityはITインフラの管理に行き詰まっていて、根本から変えたいという企業にうってつけの製品。従来製品がカバーできなかった領域を、SimpliVityで切り開いていきます」(小川氏)。