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富士通の2015年度連結決算は減収減益、為替の影響大きく
ニフティに対する公開買い付けを開始
(2016/4/29 00:00)
富士通株式会社は28日、2015年度(2015年4月~2016年3月)の連結業績を発表した。売上高は前年比0.3%減の4兆7392億円、営業利益は前年比32.5%減の1206億円、税引前利益は同33.7%減の1318億円、当期純利益は同38.0%減の867億円となった。
富士通 取締役執行役員専務兼CFOの塚野英博氏は、「ネットワークプロダクトやPCが減少となったが、システムインテグレーションなどのサービスで売上高が伸張。一方でビジネスモデル変革費用で415億円を計上。為替影響で調達コストが上昇し、減益となった。主要セグメントはすべて減益となっている。2期連続での減収だが、その多くは為替の影響であり、実ビジネスの減少とは捉えていない」とした。
また、「北米のマネージドインフラサービス関連設備で減損損失を計上したため、営業利益が悪化している。これはビジネスモデル変革の一環であり、北米においては、データセンターに顧客IT資産を引きつける既存型のマネージドインフラサービスでは成長性や効率性に限界がある。中期的なビジネスプランを慎重に見直した。今後のビジネスモデルは、クラウド基盤であるK5をベースとしたアセットライト型サービスの比重を高めるなど、安定化を優先し、分散したデータセンターの再編を含めて、改めて市場攻略を考えていく」と述べた。
セグメント別業績では、テクノロジーソリューションの売上高が前年比0.6%減の3兆2833億円、営業利益は同16.3%減の1862億円。そのうちサービス事業の売上高が同2.2%増の2兆7651億円、営業利益が同7.5%減の1639億円。また、サービス事業のうち、ソリューションSIの売上高は前年比6.2%増の1兆109億円、インフラサービスの売上高は前年並の1兆7542億円となった。
システムプラットフォームは、売上高が前年比13.1%減の5181億円、営業利益は同50.7%減の223億円。そのうち、システムプロダクトの売上高は同5.8%減の2620億円、ネットワークプロダクトの売上高は同19.6%減の2560億円となった。
「テクノロジーソリューションは、ネットワークプロダクトや為替影響による減収を、サービスの増収で吸収した。ソリューションSIが初めて1兆円を突破。国内SIサービスが好調に推移した。また、前年のメインフレームの大口商談の反動があり、エンタープライズ分野が減収となったが、IAサーバーは国内外ともに順調。ネットワークプロダクトは、キャリアの投資抑制の影響を受けて国内外ともに減収となった」という。
ユビキタスソリューションは、売上高が前年比2.1%減の1兆409億円、営業損失は前年の87億円の黒字から、76億円の赤字となった。そのうち、PCおよび携帯電話の売上高が前年比8.2%減の6513億円、モバイルウェアの売上高が同10.2%増の3895億円となった。
「モバイルウェアは伸張し黒字化しているが、PCは法人向けリプレースが低調。さらに調達コストの上昇もあり、PCは3けたの赤字。出荷台数は前年比15%減の400万台となった。携帯電話は360万台の実績(前年実績は330万台)。上期にハードウェアの不具合への対策費用があり、開発効率化、コスト削減が追いつかず、若干の赤字が残った」という。
デバイスソリューションは、売上高が前年比1.4%増の6039億円、営業利益は同17.7%減の303億円。そのうち、LSIの売上高は同0.3%増の3146億円、電子部品は同2.6%増の2907億円となった。
一方、2016年度(2016年4月~2017年3月)通期業績見通しは、売上高は前年比2.9%減の4兆6000億円、営業利益は同0.5%減の1200億円、当期純利益は同2.0%減の850億円とした。
「2016年度も450億円のビジネスモデル変革費用を計上する。これは実行確度の高い費用であり、2年間に渡るビジネスモデル変革の総仕上げに挑む」とした。
セグメント別では、テクノロジーソリューションの売上高は前年比2.2%減の3兆2100億円、営業利益は同31.6%増の2450億円。そのうち、サービスの売上高は前年比2.7%減の2兆6900億円、営業利益は同19.0%減の1950億円。また、サービスのうち、ソリューション/SIの売上高は前年比1.1%減の1兆円、インフラサービスの売上高が同3.7%減の1兆6900億円。システムプラットフォームの売上高は同0.4%増の5200億円、営業利益は同124.1%増の500億円。システムプラットフォームのうち、システムプロダクトの売上高が前年比0.8%増の2600億円、営業利益は同1.5%増の2600億円とした。
「ソリューション/SIは、金融系の大型システム商談がピークアウトするが、マイナンバー系商談の裾野拡大による売り上げ増でカバー。1兆円の目標に上積みを目指す。また、ソリューション/SIは、オリンピックに向かってあがっていくイメージでとらえている。2020年までは右肩あがりになると見ている。また、システムプロダクトは、メインフレームが減少するが、国内外のIAサーバーか伸張すると見ている」と述べた。
ユビキタスソリューションの売上高は前年比3.9%減の1兆円、営業利益は前年から216億円回復し、黒字転換した140億円。PCの出荷計画は、前年並の400万台。携帯電話は前年比15%減の310万台としている。
携帯電話では台数減があるほか、PC、モバイルウェアで円高に伴う減額影響があるが、円高に伴う部材コストダウンを見込むほか、ビジネスモデル変革費用賀なくなる影響もあり、利益は改善する。
デバイスソリューションの売上高は6.4%減の5650億円、営業利益は80.3%減の60億円とした。
一方、ニフティに対する公開買い付けを開始することを発表。塚野氏は、「ニフティは、ニフティクラウドを中心としたエンタープライズ事業と、コンシューマ向け事業があるが、ニフティクラウドは富士通がやっている事業に近づいており、別々に成長を考えるのではなく、ひとつとなって成長を考えることが適していると判断した。MetaArcやK5と一緒に考えていくことになる。またコンシューマ事業については、会員数拡大に向けたテコ入れが必要。一度本体に取り込んだ上で、再生するためのアライアンスパートナーなどを検討し、事業強化を図っていくことになる。10年前に上場したときとは環境が大きく違っている」と説明した。
なお、PC事業の再編については、「白紙という報道があるが、当社から発表したものではなく、白紙という表現が異なる。2015年10月の事業方針説明で示したように、経営資源は、テクノロジーソリューションに集中し、つながる部分に投資する。PC事業は、グループ会社として独立させ、強い事業とするために様々なことを考えている。どうやって強くしていくのかを様々な方法で考えている。ビジネスモデル変革費用は、2015年、2016年の2年間で計上。2015年は仕込みをして、2016年度は実行する。2016年度中やるべきことをやるつもりでおり、PC事業は2016年度中になにかが起こる」とした。
なお、2015年度のビジネスモデル変革費用の415億円のうち、PCをはじめとするユビキタスソリューションで40億円を計上している。