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富士通、聴覚障がい者の会議参加を促進する「LiveTalk」
音声認識で複数の発言をリアルタイムにテキスト化
(2015/4/14 14:40)
富士通株式会社と株式会社富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ(富士通SSL)は14日、聴覚障がい者参加型コミュニケーションツール「LiveTalk」を発表した。5月中旬から企業・学校向けに販売する。
LiveTalkは、聴覚障がい者と健聴者のリアルタイムな情報共有を、音声認識技術で実現するツール。会議や授業など複数人が情報共有する場で、発話者の発言を音声認識し、即時にテキストに自動変換。その内容を複数のPCに表示して、聴覚障がい者を含むコミュニケーションを可能にする。
ハンドマイクやヘッドセットマイクを通した発話を音声認識してテキスト化。複数人が同時に発言した場合も、テキスト化を並行処理しながら同時に表示するため、テキストチャットを行うような感覚で話の流れを正確に掴める。テキストに誤りがある場合はPCから修正可能。また、キーボード入力のほか、直感的に意思を表示できるスタンプや、使用頻度の高い文章を登録しておく定型文入力により、スピーディに発言できる。
テキスト表示は、同一の無線LANルータ環境に接続された全端末に可能。PCやタブレット端末に対応する。
開発の背景を説明した富士通SSL 公共ビジネス本部 第三システム部長の塚野芳一氏によると、聴覚障がい者数は約29万人で、およそ1000人に2.5人が該当する(平成18年調査)。雇用も進みづらく、2016年4月1日から「障がいを理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が施行される予定だ。
仕事の場面ではコミュニケーションをいかに円滑にするかが課題で、「従来は筆記通訳などを行っていたが、議論の内容をリアルタイムに把握するのは困難で、適切なタイミングで発言するのも難しい。結果、会議に参加メンバーとして呼ばれない」という現実も。
こうした状況を鑑みて、総務省平成25年度情報通信利用促進支援事業費補助金の採択を受けて、富士通SSLが開発・製品化したのがLiveTalk。
2012年度に聴覚障がい者の会話や気づきを支援する研究を開始し、2013年~2015年にシステム制作。プロトタイプにて、音声認識の精度やテキスト表示速度、5種類のマイク評価などを経て、「時系列による会話表示」(特許出願中)による「健聴者だけの会議と同等のパフォーマンスの実現」「聴覚障がい者の発言が容易(発言手段の提供)」「発話者と発話内容が直観的にわかる表現」などを実現した。
今後も富士通と富士通SSLは、ソフトの機能開発を重ね、会話ログ保存や議事録作成などへと応用を利かせる考え。税別価格は、5ライセンスで20万円、追加1ライセンスが5万円。年間で2000ライセンスの販売をめざす。