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困難だった津波浸水状況の「リアルタイム解析」、「京」で可能に!?
東北大と富士通が実証
(2015/2/27 12:39)
国立大学法人東北大学と富士通株式会社は27日、東北大の津波シミュレーションモデル「TUNAMI-N2」を基に、スーパーコンピュータで実行できる「高解像度の津波モデル」を共同開発したと発表した。津波警報の高度化が期待される。
想定された地震規模をはるかに超えた東日本大震災では、地震発生から3分後に出された津波予報が過小評価となり、リアルタイムの推定法に課題が残った。また、波高だけでなく浸水範囲情報も必要だと指摘された。
東北大と富士通研究所は、2014年から、津波の到達時間や波高に加えて浸水予測についてもリアルタイムに情報を提供する共同研究を進めている。課題は、浸水シミュレーション自体は広く用いられているが、そのシミュレーションは計算に時間がかかり、「リアルタイム解析」があまり行われていないこと。
今回開発した津波モデルは、「京」の計算パワーを十分に引き出すための高効率な並列計算を行うことで、浸水範囲のリアルタイム解析の実現可能性を追求したもの。東日本大震災の津波を対象に検証し、当時の観測データから即時的に得られる津波波源を入力して、浸水シミュレーションを行う。検証に際しては、詳細な津波の浸水状況を再現するために高解像度の地形データを整備し、仙台市の臨海域である南北約10キロメートルを5メートル解像度でモデル化した。
検証の結果、仙台市への浸水概要を把握するのに必要な2時間分のシミュレーションを2分以内で完了できることが分かったという。同じ計算をワークステーションで行った場合は数日を要するのに対して、観測データから津波波源を解析する時間を含めても、最短約10分で浸水の概要が掴める。東日本大震災で仙台市に実際に津波が到達した発災後1時間と比べても、十分に短い時間としている。
また、今回の高解像度解析により、震災で実際に見られた、仙台東部道路の盛土が津波をせき止める様子や、道路下の通路を津波が通り抜ける様子なども再現。「高解像度のリアルタイム解析」を通じて、具体的な災害のイメージを事前に伝えられるため、より適切な避難行動につなげられると期待される。
両者は今後、より広範囲の震源域をもつ南海トラフ巨大地震の想定ケースに対して同技術を適用し、その有効性について検証を進める予定。地方自治体や臨港地区の事業者による津波対策に貢献するとしている。