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富士通と東北大、精緻な「三次元津波シミュレーター」を開発

 富士通株式会社は14日、2012年に開始した東北大学との共同研究の成果として、津波が市街地や河川を遡上する様子を精緻に再現できる「三次元津波シミュレーター」を開発したと発表した。

 (1)東北大学 災害科学国際研究所所長 今村文彦教授が開発した二次元シミュレーション技術と、(2)富士通の三次元流体シミュレーション技術の融合に成功。「三次元津波シミュレーター」を実現した。

 (1)は沿岸部への津波の到達時刻や波高の計算に広く活用されているが、市街地への浸水や河川遡上を精緻に再現するには、建物・堤防の形状などの三次元的な情報の取り扱いに課題があった。一方の(2)は、流体を粒子のつまりとして表現する粒子法の採用により、砕波や越流などの三次元挙動が可能だが、計算量が多いため広域シミュレーションが難しいという課題があった。

 たとえば、波源から市街地までの津波を三次元流体シミュレーション技術だけで再現しようとすると、1万ノードのスーパーコンピュータを用いても200年以上の時間がかかるのだという。

 新技術では、比較的計算量の少ない二次元シミュレーション技術で波源から沿岸部にいたる広域での津波を再現し、沿岸部や市街地などの領域内でのみ三次元流体シミュレーション技術を活用。三次元での津波の動きを実用的な時間内で再現することに成功した。

 たとえば、1万ノードのスーパーコンピュータで160時間程度で、港や湾1つ分に沿うとする10km四方の領域内の津波の動きを、0.5m径程度の解像度で再現できるという。

 また、地震に伴って発生した津波の複雑な流れや、沿岸部での砕波や越流などの挙動を再現できるため、防波堤を越えて激しく打ち上がり、落下する津波の衝撃力による被害などを、より正確に見積もれるようになると期待がかかる。

(a) 波源から沿岸部までの広域における津波の波高・流速を再現。(b) 沿岸部に流入する津波の三次元的な挙動を再現

 今後は、巨大地震とそれに伴う津波の複合災害における被害予測に応用するべく、文部科学省のHPC戦略プログラムの中で活用する考え。複合的な被害予測により、西日本のモデル地域における減災の計画立案につなげていく。また、この研究成果を踏まえ、「三次元津波シミュレーター」による減災ソリューションを構築し、政府・自治体などへの提案を通じ、災害に強い街づくりに貢献するとしている。。

川島 弘之