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津波被害予測、20分以内で――東北大・NEC・国際航業が技術実証へ

 東北大学 災害化学国際研究所、東北大学大学院理学研究科、東北大学サイバーサイエンスセンター、日本電気株式会社(NEC)、国際航業株式会社は1日、大規模地震発生時の津波浸水被害をリアルタイムに予測する実証事業を推進すると発表した。

 総務省「G空間シティ構築事業」の1プロジェクトである「G空間情報と耐災害性ICTを活用した津波減災力強化―リアルタイム津波浸水・被害予測・災害情報配信による自治体の減災力強化の実証実験」に参加する。G空間情報は、位置情報、または位置情報とそれに関連づけられた情報のこと。

 本実証では、大規模地震発生時の地震情報やGNSS(Global Navigation Satellite Systems)測位技術を活用した地殻変動データから、NECのスパコン「SX-ACE」を用いて東北大学と国際航業が開発した「津波浸水・被害予測シミュレーションプログラム(以下、同シミュレーション)」を高速に実行し、「地震発生から約20分以内で津波による浸水被害の予測を可能にする」という。

 各分担・役割としては、東北大学災害化学国際研究所の越村俊一教授が実証事業の実施責任者として、全体の計画・事業推進を担当する。また、同シミュレーション手法の開発者として、陸域における精緻な浸水・遡上予測と被害の量的な予測を行う。

 東北大学災害化学国際研究所の日野亮太教授と東北大学大学理学研究科 地震・噴火予知研究観測センターの太田雄策准教授は、地震によって沖合で励起された津波の高さ分布(津波波源モデル)を、同シミュレーションの初期条件として提供するために必要な、震源断層モデルの即時推定(地震発生後10分以内)を担当する。この即時推定には、気象庁の震源情報に加え、国交省国土地理院と共同開発を進めたリアルタイムGNSS観測データによる地殻変動検知技術などを駆使する。

 東北大学サイバーサイエンスセンターの小林広明センター長・教授は、同シミュレーションの高速化と大規模並列化をNECと共同で行う。通常時は全国共同利用計算機として運用しているSX-ACEを、津波発生時には同シミュレーション専用運用に迅速に切り替えるという。

 国際航業は、波源から陸域までの高精度な津波遡上プログラムを、越村教授と共同で、高速化・並列化に配慮した改良を行う。また、より精緻な津波遡上・被害予測を実現するために、地形モデルおよび被害推定システムを開発する。

川島 弘之