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IT資産管理は、木を見ずに森を見ろ!~クラウド時代のIT資産管理イベント開催
(2014/9/26 06:00)
IT資産管理に特化したカンファレンスである「IAITAM ACE(アイエーアイタム・エース) JAPAN 2014」が25日、東京・品川の東京コンファレンスセンター・品川で開催された。
「クラウド時代の全体最適化を実現するためのIT資産管理」をテーマに掲げ、日本市場に適したIT資産管理への取り組みや市場動向を発信するのが狙い。
主催は、国際IT資産管理者協会(IAITAM)日本支部。本部は米国にあり、IT資産管理(ITAM)、ソフトウェア資産管理(SAM)、ハードウェア資産管理、IT資産管理のライフサイクルプロセスにさまざまな側面から関与している個人と組織のための団体と位置づけている。
IAITAM ACEは、2002年から米国で開催されており、春と秋の年2回開催。それぞれ3日間に渡って各種セミナーを実施し、500~1000人規模のIT資産管理関係者が参加しているという。
日本におけるIAITAM ACEの開催は今回が初めてとなる。企業のIT部門を中心に約200人が参加。IAITAM日本支部の武内烈支部長は、今後も年1回のペースで定期的に開催していく計画であることを示す一方、「IT資産管理というと、投資の観点からもどうしても後向きのイメージがあるが、本来は、全体最適化のための取り組みとしてポジティブなものととらえるべき。日本ではポイントソリューションとしてのIT資産管理導入が中心となっており、そうした考え方も変えていく必要がある。木を見るのでなく、森を見るように、IT資産管理をとらえてほしい」とした。
IT資産管理はIT部門だけでは完結しない
午前10時30分から開始したカンファレンスの冒頭に、「日本におけるIT資産管理の今後」と題して、IAITAM日本支部の武内烈支部長があいさつ。
「IT資産管理は、IT部門だけで完結するものではなく、多くの部門にまたがるもの。また、ひとつのツールだけで完了するものでもない。ばらばらにサイロ化されたツールやシステムを、IT資産管理という観点から統合して全体最適化を実現することが大切である。ITILは、システム管理のためのものではなく、IBPLはPC管理のものではない。そして、SAMはライセンス管理のためのものではない。それぞれに相互連携することになる。IAITAMでは、IT資産管理において、12の主要プロセスエリアを定義しているが、それぞれが独立して成り立つものではなく、相互に連携することになる。また、IT資産管理におけるロードマップは、5年や10年という長い期間でとらえて、あるべき姿を設定。段階的導入計画を立てて、取り組んでいく必要がある」などと述べた。
また、基調講演では、あらた監査法人 システム・プロセス・アシュアランス部 パートナーの岸泰弘氏が、「企業を取り巻くIT環境のパラダイムシフトとIT資産管理」をテーマに講演。
「従来のIT部門の役割は、システム開発や保守、ユーザーの要求に応えるといったことであったが、今後は全社的観点でのIT戦略の策定や企画立案、業務を理解した形でユーザーへの提案が求められるようになる。そして、システムを作るのではなく、調達し、ソリューションをビジネス側に提供する役割へと変化する。また、それらを管理する技術も求められる。つまり、ますます組織の中核を担うことになり、ハイパフォーマーの集団となる。これがIT部門の新たな姿である」と話した。
一方で今後のIT部門においては、「IT資産管理の確立に取り組むことが重要な要素になる。IT資産管理の目的は、IT資産を可視化し、組織の経営戦略に合致するようにIT関連支出、人的資源、リスクおよびIT資産を管理・運用することにある。IT資産管理は、段階を踏んで整備することで、最終的には企業に対して、コスト削減、コンプライアンス、セキュリティ強化などの大きな利益をもたらすことになる」と述べている。
クラウド時代に最適化したIT資産管理が必要に
さらに、特別講演として、日本マイクロソフトのエバンジェリストである西脇資哲業務執行役員が、「クラウド時代に最適化した<IT資産の運用管理>とは」として、市場環境の変化にあわせたIT資産管理の考え方について説明を行った。
西脇氏は、3台以上のデバイスを持っている人が52%に達していること、2020年までにクラウド関連のITコスト構成比が45%になること、2020年までに40ZB(ゼタバイト)のデータが生成されること、2020年までにネット接続対象となるモノが2120億個になるといったデータを示す。
その上で、「この1年で3万円以下のタブレットが6倍になっている。これは重要な変化である。高価なものを長年使うというIT管理や、決められた時間に使用され、決められた場所、決められたデバイスを管理するものから、安いものをどんどん入れて、いつでも、どこでも、どんなデバイスでも使えるという環境でのIT資産管理が求められているということになる。しかし、デバイスが安くなるのに対して、それによって多額なIT資産管理をするのはおかしな話。だからこそ、管理の最適化が必要である」とした。
西脇氏のデモンストレーションでは、Excelの画面を表示しながら、それをiPadやAndroidデバイスから利用していることを明かし、「私はマイクロソフトのデバイスでも、マイクロソフトのOSでもない環境から、Excelを利用している。個人が持つデバイスで、Excelのライセンスを利用しているにすぎない」という利用環境を説明。
また、クラウド上にデータを格納し、マルチデバイスでMicrosoft Officeのオンラインサービスを利用して、クラウド上のデータを閲覧することができる様子をデモンストレーションしたり、ビデオ会議システムを通じて、相手のデバイスに自分のPowerPointを表示。つながっている相手が、自らがライセンスを持つPowerPointにもアクセスして修正することが可能であることを紹介。
「この時のライセンスはどうなっているのか。お互いがサブスクリプションを持っていれば使えるというように、働き方を後押しするための新たなライセンス形態が必要である。こうした利用環境の変化や、働き方の変化にあわせて、マイクロソフトのライセンス方式も変更している。マイクロソフトでは、クラウド、サービスの時代にあわせて、1台について、1つのライセンスが必要というだけでなく、サブスクリプションで利用できるようにし、最大で15台のPC、タブレット、PCで利用できるようにした。IT資産管理も変え、進めていかなくてはならない」と語っている。
一方で、「新たな時代においては、長いサイクルでの資産管理、構成管理ではなく、継続的な資産管理や構成管理が必要であること、従来のハード、ソフトだけが課金対象ではなく、トランザクション量や転送量までが課金対象になるため、ここもモニタリングを行い、予測する必要がある。さらに、社内外での利用形態や、OSの種類、デバイスの形状を問わずに統合管理することが必要。マイクロソフトでもそのためのツールを用意している。また、突然、個人が使用しているデバイスが接続され、勝手に個人がOSをバージョンアップすることもあるため、セキュリティポリシーは接続時に確認、適用するといったことが大切である」などとも話した。
そのほか、パネルディスカッションとして、特定非営利活動法人itSMF Japan理事の伊藤清氏、日本IBM理事の我妻三佳氏、日本マイクロソフトの手島伸行本部長、IAITAM日本支部の武内烈支部長がパネリストとして参加し、「これからのIT資産管理(グローバル動向と日本市場)」をテーマに、ライセンスコンプライアンス、セキュリティリスクなどのITリスクとIT資産管理、クラウド最新動向などについて触れるとともに、構成管理データベースのあるべき姿や、標準化やライセンス契約統合といった日本の大手企業が留意すべき点を議論していた。