ニュース

Windows Server 2003からの移行を早めに検討を~マイクロソフトが呼びかけ

2015年7月にサポートが終了

 日本マイクロソフト株式会社は29日、Windows Server 2003のサポートが2015年7月15日に終了するのにあわせ、最新サーバー環境への移行支援策に関する説明を行い、「Windows Server 2003の長年のご利用に感謝する。Windows Server 2003を利用しているユーザーは、移行に関して早めに検討をお願いしたい」(日本マイクロソフト 執行役 ゼネラルビジネスの高橋明宏ゼネラルマネージャー)と呼びかけた。

 クライアントPCにおいては、2014年4月9日に、Windows XPのサポートが終了するのにあわせて、現在、PCの新OS環境への移行が急ピッチで進んでいるが、約1年3カ月後にはWindows Server 2003も同じ状況を迎えることになる。

 高橋ゼネラルマネージャーは、「Windows Server 2003は、2003年5月の発売以来、当社の製品ライフサイクルポリシーにのっとって、7年2カ月後の2010年7月には、メインストリームサポートを終了。その後、延長サポートとして5年間のサポートを提供しており、これが2015年7月になると、トータルで12年2カ月のサポート期間を終了することになる」と、サポート期間について説明。

 また、「これにより、セキュリティ更新プログラムの提供、有料による時間制でのスポットでのサポートが終了するため、利用しつづけるとリスクにさらされることになる」と述べた。

Windows Server 2013のサポートライフサイクル
日本マイクロソフト 執行役 ゼネラルビジネスの高橋明宏ゼネラルマネージャー

クライアントPCより選択肢が多様化、その分時間がかかる

 一方、なぜこうした説明を行ったのかについては、「これまでWindows XPの移行支援活動を行ってきたが、これらの経験から、より早い時期から移行支援策を強化する必要があると判断した」と語る。

 同社では、告知活動や認知の徹底だけにとどまらず、予算化を含めた実際の移行プランの策定までを踏まえた提案活動が必要になるとの認識が強い。

 高橋ゼネラルマネージャーは、「ユーザー企業の予算期を考慮した告知および移行支援が重要であり、また、早い時期からのコミュニケーションが重要である」とする。

 現時点で、Windows Server 2003のサポート終了までに残された日数は532日。土日、祝日などを除いた実営業日では352日と、実質1年を切っているという言い方もできる。

 「来年度の予算化に向けて、ぎりぎりのタイミングであるこの1月に、今回の説明会を開くことで、移行に向けて予算確保にも取り組んでもらえると考え、前倒しで実施した」とする。

 実は、全世界のMicrosoftにおいても、Windows Server 2003の移行に関する説明会を開催したのは日本だけだ。

 「クライアントPCの場合は、ハードウェアの入れ替えによる移行が可能だが、サーバー製品の場合は、サーバー統合、仮想化、クラウドの活用といったように、選択肢が多様化しており、サーバー環境ならではの課題がある。経営環境に合致した選択肢をしてもらうことが最適であり、コスト、セキュリティレベルなどを勘案する必要もある。クライアントPCの移行よりも時間がかかるのは明らかだ」と指摘。「今日から、サーバー移行支援強化期間として、パートナー各社とともに、業界をあげて、Windows Server 2003の移行支援に取り組んでいく」とした。

サーバーならではの検討事項が多数存在するため、移行には時間がかかるという

 IDC Japanの調べによると、現在、日本では、約36万台のWindows Server 2003が存在するという。サーバー市場全体が223万台であり、Windows Server 2003は、その6分の1程度を占めることになる。世界の数字と比べても、日本における構成比は高いという。

 日本マイクロソフト 業務執行役員 サーバープラットフォームビジネス本部の佐藤久本部長は、「Windows Server 2003から、Windows Server 2008へと移行した2007年当時は、ビジネスアプリケーションサーバーとしての利用が25.1%、データベースサーバーが16.5%、ファイルサーバーやプリントサーバーが13.7%。そのほかをあわせても約7割がファイアウォールの内側で動いているものだった。だが、IDC Japanの調べによると、現在の潮流は、Webアプリのようにパブリッククラウドへの移行を中心に考えているケースや、業界特化型のようなパブリッククラウド以外に移行するもの、あるいは管理体制、法的規制でクラウドに移行できないものもある。こうした環境をとらえれば、Windows Server 2003からの移行については、オンプレミスとクラウドを適材適所で活用するハイブリッド環境への移行が中心になるだろう」とした。

 Windows Server 2003からハイブリッドクラウド環境へと移行した事例としては、サンリオを紹介。同社では、地方拠点にあったすべてのサーバーをデータセンターに集約。Windows Azureを活用することにより、災害対策の強化、ビジネス要件に応じた柔軟なシステム拡張、コスト削減のほか、System Centerを活用することで、システムの自動化による作業時間の短縮、人的ミスの排除を実現したという。

クラウドへ移行する場合は、ハイブリッドクラウドの活用が望ましいとした
サンリオの事例

 また、「Windows Serverは、OSを改版するごとに新たな脅威に対応し、マルウェア感染率を大幅に改善してきた。Windows Server 2012では、20倍以上の堅牢性を実現している」とし、「Windows Server 2003が開発された当時は現在のような脅威があったわけではなかった。脆弱性に対応し安全性を保つということだけではリスクを避けられない。最新のOSでは、サーバーに侵入された場合でも、サーバー全体が侵入されることはないように対策が採られているなどの特徴もある」とした。

バージョンアップによってセキュリティが強化されるという

 同社は会見において、ビジネスアプリケーションの移行の際に考慮する点にも言及。「棚卸し、移行方法の検討、構築と導入、動作確認という作業を行わなくてはならない。すでに10年以上を経過しているシステムのため、開発者が退職していまった、あるいは設計書がないという問題もあるようだ。また、物理サーバーから仮想サーバーに移行するP2Vは、ハードウェアの保守切れの移行には適しているが、OSのサポート切れには適していないという点も考慮するべき」と述べる。

 さらに、「Windows Server 2003の多くのアプリケーションは32ビットで書かれており、新たな環境では64ビット対応が必要であること、IIS 6.0からIIS 8.5への対応のためのスクリプト書き換え、ASP.NET 1.1への対応、開発環境のアップデートも必要である。そして、互換性テストや、マニュアル整備をはじめとする運用環境の再整備も必要となる。またあらゆるシステムが連携するために、すべてのシステムの移行を同時に行わなくてはならない。これらを行うために、金融機関では、1年半のプロジェクトを組んでいる例もある」などと、移行期間が長期化すること、大規模な移行が必要となることを示した。

ビジネスアプリケーションを移行する際の考慮点

 高橋ゼネラルマネージャーは、Windows Server 2003を利用していたるユーザーに対して、すぐに取り組んでいただきたいこととして、対象となるサーバーの台数や用途、場所などを確認する「既存サーバー環境の棚卸し」、クラウドかオンプレミスか、あるいはハイブリッドかといった「移行先の選択」、移行に必要な費用と期間を策定する「予算とスケジュールの確認」の3点をあげ、「これらに一日も早く取り組んでいただきたい。もし移行に関してお悩みの際は、マイクロソフトのパートナー企業に相談してほしい」とした。

 日本マイクロソフトでは、Windows Server 2003移行相談窓口(0120-39-8185)を開設。ユーザーやパートナーからの問い合わせに対応するという。また、移行に関する情報を一元的に提供するWindows Server 2003移行ポータルを用意し、セミナーやトレーニング情報の提供、Windows Server移行ガイド、パートナー向け最新情報、移行支援パートナーの紹介などを行う。現在、日本マイクロソフトでは、全国に400社の移行支援パートナーがあり、これらのパートナーを通じて移行支援サービスを提供するという。

 現時点では、日本マイクロソフトから具体的な移行支援施策は出されていないが、今後、なんらかの施策が発表されることになりそうだ。

既存サーバー環境の棚卸し、移行先の選択、予算とスケジュールの確認に取り組んでほしいとした

 会見には12社の移行支援パートナーが参加。その1社である大塚商会の片倉一幸取締役専務執行役員は、「Windows Server 2003が登場した当時は、いまとはネットワーク環境が異なり、クラウドやタブレットがなかった時代。最新のサーバーOSは、ユーザーの効率性向上、生産性向上に寄与できる。具体的にはダイレクトアクセスが強化されており、いつでも、どこからでも、安全な環境で仕事ができるようになる。パートナー各社が一体となって、日本の生産性をあげるために貢献してきたい」とした。

移行支援パートナー
12社の移行支援パートナーが登壇した

大河原 克行