大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ
サポート終了まであと10カ月、クラウドがWindows Server 2003移行の切り札になる? (まずは情報システムの棚卸しを早急に!)
(2014/9/30 06:00)
まずは情報システムの棚卸しを早急に!
日本マイクロソフトでは、Windows Server 2003からの移行に関して、まだ手つかずのユーザー企業に対しては、「まずは、情報システムの棚卸しから手をつけてほしい」(日本マイクロソフトの藤本部長)と呼びかける。
同社では移行手順を、ソフトウェアや利用用途などを確認する「棚卸し」、アプリケーションと利用用途を分類する「アセス」、移行先を特定する「ターゲット」、そして移行の実作業である「実行」、といった段階を踏む形とするが、残り10カ月という状況を考えれば、棚卸しにいち早く手をつけることが大切だとする。
その際に重要な鍵を握るのが、ユーザー部門の協力体制である。
「棚卸しの際には、『移行対象に含まれるアプリケーションが本当に利用されているのか』ということを、ユーザー部門と話し合う必要がある。その際に、まったく使っていないアプリケーションであるにもかかわらず、『いつ使うかわからないから保持したい』といったことが繰り返されると、新たな環境移行へのハードルが高くなるだけ。ユーザー部門には、使っていないものは捨てるという気持ちを持ってもらうような協力関係が必要」(藤本部長)というのだ。
同社では、Office 365、Microsoft Azure、そしてDynamics CRM Onlineという3つのクラウドサービスを提供。さらに、パートナーが持つクラウドサービスの活用も選択肢になるとする。
「棚卸しをした上で、これらのサービスがどう活用できるかを見極めてほしい」と語る。
メールサーバーに関しては、Office 365への移行がひとつの選択肢になるだろう。移行を支援するための各種ツールを用意しているほか、サーバーの削減、ライセンス数の削減といった導入コストや運用コストの削減も可能になる。さらに、LyncをはじめとするOffice 365で提供されるさまざまな機能が活用でき、コミュニケーション力を強化、ワークスタイルの変革へとつなげることもできる。
ファイルサーバーでは、Microsoft Azureへの移行提案が多くのSIerから行われているが、特に、Windows Server 2012 R2で提供されるMicrosoft Azure Site Recoveryを利用することで、クラウド上に簡単にデータバックアップを取れることから、オンプレミスとクラウドによる、ハイブリッド型のディザスタリカバリ(DR)環境なども実現可能となった。このように、エンタープライズグレードのクラウド環境を利用できる点が、ここにきて注目されている。今年2月から日本おけるデータセンターが稼働したことも、Microsoft Azureの利用を促進することに大きく寄与しているのは間違いない。
一方で、ハードウェアのリース期間の問題などもあり、すぐにはすべてを移行しにくい環境にあるユーザーも、確実に存在する。
日本マイクロソフト チーフセキュリティアドバイザーの高橋正和氏は、「コストの観点から、リース解約が現実的ではないのも事実。だが、攻撃側は待ってくれない。3年後、5年後にベストな環境はなにかということを想定した対策を行うこと、優先順位をつけて、重要性や危険性の高いシステムなど、できるところから移行を進めてほしい」と述べ、段階的にではあっても早急に取り組みを進めるべき、という点を強調した。
なお、オンプレミス・クラウド(IaaS)を問わず新たな環境への移行については、Windows Server 2008/2008 R2などの旧製品へ移行するケースもあるようだが、日本マイクロソフトでは、Windows Server 2012 R2への移行を強く推奨する。
「Windows Server 2012 R2は、Hyper-Vによる仮想化機能が大幅に改善されており、高いスケーラビリティを持つほか、DR機能を標準で搭載。重複除去によってストレージ利用量を最大80%削減でき、ハードウェア更新の高速化も実現している。さらに(System Centerとの併用で)ハイブリッドクラウド環境においても、同一管理画面からの運用管理も行えるといったメリットがある。ここにきて、エンタープライズ環境におけるソフトウェアの展開とメンテナンスを効率化できるリモートデスクトップサービスへの関心も高まっている」。
また、Windows Server 2012のActive Directoryは、仮想化運用向けに強化されており、仮想マシン上のドメインコントローラの安全性を向上したほか、社内に乱立したドメイン環境を整理し、運用管理を効率化。さらに、標準実装されたActive Directory Federation Service(ADFS)により、クラウドサービスへのシングルサインオンを実現。Microsoft Azure上のさまざまなアプリケーションにも社内からアクセスできる。
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日本マイクロソフトでは、「ワークロードごとにオンプレミスで利用した方が最適なもの、あるいはクラウドへと移行した方がいいものがある。『手組みで構築されたものや、業界特化型のシステムはオンプレミスに移行するのが適切である』というのがその一例。適材適所での移行を考えてほしい」とするが、「だが、残り10カ月という期間を考えれば、クラウド活用は『時間』の問題を解決する切り札になる」とも語る。
日本マイクロソフトの藤本部長は、「Microsoft Azureは、オープンプラットフォームであること、そして、ロードマップが明確に示されているという点でも、安心して選択していただけるクラウドサービスへと進化している。その点でも、クラウドは、Windows Server 2003からの移行の切り札になる」と語った。
Windows Server 2003からの移行はもはや待ったなし。クラウドを活用することは、それを解決する有効な手段になるのは間違いなさそうだ。