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前代未聞の110万IOPSを達成、EMCがミッドレンジストレージ「VNX」新製品

「マルチコア最適化」など革新技術を実装

マーケティング本部長の上原宏氏

 「ミッドレンジストレージの性能の壁を打ち破る革新をもたらした」――。EMCジャパンは5日、ミッドレンジストレージ「EMC VNX」新製品を発売した。革新的な技術により「超高性能」「超効率性」「高可用性」を実現したとのことで、登壇したマーケティング本部長の上原宏氏は興奮を抑えきれない様子で「発表できるこの日を楽しみにしていた」と語る。ポイントは「フラッシュ最適設計」と「マルチコア最適化技術」だ。

 VNXはミッドレンジのユニファイドストレージ。新製品では「VNX 5200/5400/5600/5800/7600/8000」の全ラインアップに新設計・新技術を採用し、全世界で一斉発売した(最下位モデルのVNX 5200のみ第4四半期発売予定)。EMCはロータスF1とスポンサー契約を結んでいるが、新製品の特徴は「まさにF1のようなスピードを実現した」(上原氏)ことで、実に110万IOPSの性能を達成したという。あくまでディスク単体のベンチマークで実環境での運用時の数値ではないが、それでも110万IOPSは「前代未聞」である。

VNX 8000
VNX 5400
フラッシュの力を解き放つ新VNXファミリー
クラス最高性能を従来価格で提供

 ポイントは「フラッシュ最適設計」と「MCx(マルチコア最適化技術)」。VNXでは従来よりフラッシュをサポートしていた。しかし、HDDを基礎に設計されたアレイ上にSSDを追加していたに過ぎず、コントローラやソフトウェアがフラッシュに最適化されていなかった。今回は一からフラッシュに最適化し、その利点を最大限引き出せるようにした。あわせて拡張性も向上され、最大32CPUコア、最大1500ディスクを搭載可能できるようになった(ただし現状は1000ディスクまで。1500台は今年末までに対応予定)。

フラッシュ採用当初はHDDを基礎に設計されたアレイ上にSSDを追加しただけ
新製品ではフラッシュに最適化した設計に
マルチコア最適化テクノロジーによってマルチコアがダイナミックに横断して利用される

 とはいえ、フラッシュ最適設計だけなら他社でもすでに実現されている。例えば、7月12日に日本HPが発表したオールフラッシュストレージも、フラッシュ最適設計をうたっている。今回のEMCの発表が一線を画すのは、「MCx」というマルチコア最適化技術を実現した点だ。

 従来、マルチコアのCPUを採用している場合、それぞれのコアにRAID、I/O、DRAMキャッシュというタスクを割り当てて、それぞれがシングルスレッドのように処理を行っていた。この場合、コアごとに利用率は異なり、あまり忙しくないコアはリソースを余らせる結果となっていた。一方、MCxではマルチコアがそれぞれのパワーを共有し、ダイナミックに横断して各処理を行う。コアごとの空きリソースも有効活用され、マルチコアの性能を生かすことが可能となるのだ。

 従来モデルより70%の性能アップという110万IOPSはこうして達成された。最新のSPECsfsベンチマークの結果では58万796SPECsfs2008 nfs OPS/Sec(全体レスポンスタイム=0.78ミリ秒)を実現し、従来モデルの4台以上のパフォーマンスを提供するという。また、OLTP処理で従来モデルの4倍となる73万5000IOPS、仮想マシン稼働数で6倍となる6600台以上という数値をたたき出した。

ミッドレンジ性能の壁を打ち破る110万IOPSを達成
OLTP処理性能は従来モデルの4倍に
VM搭載可能数は上位モデルのVNX 8000で6600台以上

 パフォーマンス面以外の強化としては、新しいブロック(8KBの粒度)重複排除機能を搭載。プールのLUN単位で設定でき、I/Oへの影響を抑えるためバックグラウンドで実行される。「特にVDI利用時に効果を発揮する」(兼市氏)とのことで、ディスク容量を50%削減できるという。また、「対称アクティブ/アクティブ構成」を実現。フェイルオーバーの概念を排除し、障害にも瞬断を起こさずシステムの稼働を継続できるという。

 提供方法は、VNXをコンポーネントとして個別に提供するものと、パートナー経由で提供する検証済みリファレンスアーキテクチャ「VSPEX」、VMware・Cisco・EMC連合で提供する「Vblock」(近日リリース予定)の3種類を用意。VNX自体は汎用性に優れるとしつつも、その突出した性能から、特にクラウド事業者、サービスプロバイダ、データセンター管理者をメインターゲットとして訴求する。価格は295万7340円(税別)から。

川島 弘之