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EMCジャパン、フラッシュメモリストレージ「Xtremシリーズ」~第1弾はPCIeフラッシュカード「XtremSF」

オールフラッシュストレージ「XtremIO」の開発も進行中

 EMCジャパン株式会社は7日、フラッシュメモリを利用したストレージ製品群「EMC Xtremシリーズ」を発表した。その第1弾として、サーバー機のPCI Express(PCIe)スロットに接続するフラッシュカード「EMC XtremSF」を発売する。価格は91万1880円(税別)から。

サーバーに搭載するフラッシュカード「XtremSF」

 EMCではかねてフラッシュストレージへの注力を表明しており、オールフラッシュストレージの開発計画「Project X」などを進めていると説明していたが、今回、現行製品を含めてフラッシュ関連製品をリブランディング。今後は、昨年米EMCが買収したイスラエルXtremIOのブランドを使い、Xtremシリーズとしてフラッシュ関連製品を提供することになった。

 その第1弾として提供されるXtremSFは、サーバーのPCIeスロットに搭載し、フラッシュメモリの利点を生かした超高速ストレージとして利用する、ハーフハイト/ハーフレングスのフラッシュカードである。ラインアップとしては、SLC(Single Level Cell)の350GBモデルと700GBモデル、eMLC(enterprise Multi Level Cell)の550GBモデルと2.2TBモデルが用意されており、今後はeMLCの700GBモデルと1.4TBモデルも追加される。

 その特徴は高いIOPS性能と低い遅延によって、アプリケーションの性能を劇的に向上させられる点。例えばeMLC 2.2TBモデルでは、リード帯域2.47GB/秒、ライト帯域1.1GB/秒、4Kのランダムリード34万3000IOPS、4Kのランダムライト10万5000IOPSといった性能を発揮でき、Web 2.0アプリケーションやVDI環境、HPC、高性能トレーディングなど、とにかく高いパフォーマンスとワークロード処理性能が求められる用途や、分析・レポーティング、データモデリング、バッチ処理のように、一度に大量の作業負荷が発生する業務での利用が見込まれている。

XtremSFの特徴
XtremSFのハードウェア
製品ラインアップ。SLCタイプとeMLCタイプが用意される

 システム・エンジニアリング本部 プロダクト・ソリューション統括部の永長純統括部長は、「他社がPCIe Gen2 x4を利用しているのに対し、XtremSFでは幅広い帯域を確保するためにx8を利用しているし、ガベージコレクションがフラッシュ上で発生した場合でも、パフォーマンスが低下しないようなアーキテクチャを採用している。また、なるべくカード上で多くの処理を済ませ、サーバー側のメモリやCPUをなるべく使わないようにしているので、構造的なアドバンテージもある」と述べ、XtremSFと競合製品を比べた場合の優位点を強調した。

競合製品と比べて、性能的なアドバンテージが提供できるとのこと

 さらに、サーバー向けのソフトウェアである「XtremSW Cache」と併用すると、既存ストレージの読み込み性能を向上させるキャッシュとしても利用可能な点も特徴。現行のバージョン1.5でも、重複排除、vMotion対応、VMAXとの統合、Active/Passiveのクラスタ環境サポートなどを実現しているが、2013年前半の提供が予定されている次期バージョン(2.0)では、「キャッシュコヒーレンシなどの機能強化によりActive/Activeのクラスタ対応を実現するほか、Windows/Linux/VMwareに加えてAIX環境もサポートする予定。またVMAXだけでなく、中小規模向けのVNXストレージとの統合にも対応する」(永長統括部長)としている。

 実はXtremSFのSLCタイプは、2012年10月よりサーバー向けのフラッシュキャッシュとして提供されていた「EMC VFCache」のハードウェアと同じもの。eMLCタイプの追加による容量の拡大とともに、DASとしての用途を強く訴求するようになったため、XtremSFとしてリブランディングされている。つまり、従来のVFCacheがXtremSFとXtremSW Cacheに分割され、製品ラインが新しくなった、ということになる。今後は、VFCacheの名称では製品化されないので、その点に注意したい。

XtremSW Cache
従来のEMC VFCacheは、ハードウェア側のXtremSFとソフトウェア側のXtremSW Cacheに分割された

オールフラッシュストレージの開発も順調に進行中

 また今回は、オールフラッシュストレージの開発計画、Project Xで開発されいている「XtremIO」の開発が、一般提供開始に向けて順調に進んでいることも明らかにされた。マーケティング本部の上原宏本部長によれば、一部の特定顧客に対しては先行して提供されており、ブラッシュアップを進めている段階という。

 この製品では、Active/Activeなブロック構成によるクラスタ単位のスケールアウトが可能で、10万から100万の高いIOPS性能を提供できる予定。さらに、シンプロビジョニングや重複排除、VMware VAAIなどの機能もサポートし、エンタープライズで利用可能な品質の製品として提供される予定だ。

マーケティング本部の上原宏本部長
順調に開発が進んでいるというXtremIO

 なお上原本部長はEMCジャパンのフラッシュ戦略について、「幅広いポートフォリオ」と「ソフトウェアによる優位性」の2つを軸に説明する。現在、フラッシュストレージの提供については、Violin Memory、Fusion-IO、Pure Storageなどベンチャー企業の方が進んでいるのだが、「断言したいのは、それらは“One fits all”ではないことだ」という点を指摘。その上で、「容量を重視するのか、性能を重視するのかは利用シーンによって異なり、1つしか製品がないと、そこに無理やり当てはめる必要が出てくる。それに対して、当社の、さまざまなポートフォリオを持っている強みをご理解いただきたい」と述べた。

 もちろん、そうしたベンチャー企業でも、すべての用途を自社製品だけでカバーできるなどとは考えていないだろうが、ほかに製品がないため、他社ストレージとの組み合わせで提案していくことになる。それに対してEMCジャパンでは、VMAXやVNXなどのポートフォリオと組み合わせて提案できることで、全体をカバーできる優位性を出せる。こうした戦略を推進するためにも、XtremIOの製品化が待たれるところだ。

 一方で、ソフトウェアでの優位性という点を上原氏が強調する背景には、ハードウェアのコモディティ化がこの分野でも進んでいることが挙げられる。Violin Memoryのような独自のアプローチならばともかく、SSDやそれに近い技術を利用する場合は、ハードウェアだけではなかなか差がつけにくくなるので、重複排除だったり、統合管理だったり、DASとキャッシュとしての両用だったり、といったソフトウェアによる差別化が今後大きなポイントになってくる。

 EMCジャパンでは、今後もこのようなソフトウェア分野に注力することで、フラッシュストレージにおいて顧客にどういうメリットを提供できるかを検討し、他社との差別化に力を入れていく考えだ。

広範なポートフォリオにより、適材適所での提案ができる強みがあるという

(石井 一志)