NECなど4社、高効率省エネ型データセンタモジュールを開発

ファンレス・外気冷却で約60%の空調エネルギーを削減


 日本電気株式会社(NEC)、東洋熱工業株式会社、NECフィールディング株式会社、NSK株式会社の4社は27日、「高効率省エネ型データセンタモジュール」を開発したと発表した。同モジュールを利用することで、従来のデータセンターの運用形態に対し、年間で約60%の空調エネルギー削減(データセンター全体では約20~30%のエネルギー削減)が可能になるという。

 独立行政法人科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業CRESTの採用テーマである「ULPユビキタスセンサのITシステム電力最適化制御への応用」のシステム実験グループとして取り組んだ共同研究の成果。ICT機器製造(NEC)、空調エンジニアリング(東洋熱工業)、コンテナが他データセンターの製造販売(NECフィールディング、NSK)などのそれぞれの立場から、サーバーの動作情報や運用形態、サーバー室内の空気の流れや温度分布の変動メカニズムを明らかにすることで、ICT機器側と空調側の双方の特性や要求を融合したデータセンターモジュールの開発が可能となった。

 開発したデータセンターモジュールは、通常のコンテナ型データセンターで利用する輸送用コンテナを組み合わせて利用できるサイズとした。奥行きが6mのモジュールでは、1ラックあたり8kWまでのラックを6台設置できる。

 モジュール内に1列に並べたラックの吸気側のモジュール側面下部に外気を取り入れる外気流入口を、反対側のモジュール側面上部に排気の流出口を設けている。流入口から取り入れた外気とサーバーの排熱を駆動力として利用し、さらにモジュール内での煙突効果を高めるように排熱促進機構を設置することで、換気用のファンを用いない自然換気システムを構成し、サーバー室内の冷却・排熱を可能としている。

 自然換気システムにおける外気利用の可能性を評価するため、日本各地の年間の気象データを用いて、ASHRAE(American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers:アメリカ暖房冷凍空調学会)の推奨温湿度範囲を満たせるかどうかを確かめた。現在多くのデータセンターで用いられているASHRAEの推奨温湿度範囲(2004年版)を適用すると、日本のほとんどの地域で外気を利用できる期間はわずかだが、改定されたASHRAEの推奨温湿度範囲(2011年版 Class A1)を適用すると、東京で年間の26%、札幌で年間の14%の期間、外気利用が可能。さらに寒冷期に換気取り込み量を調整することで、外気を利用可能な期間を東京で65%、札幌で62%まで拡大させることが期待できるという。

 年間の空調エネルギーを試算したところ、換気用のファンを用いない自然換気システムを用いて換気取り込み量を調節する場合、従来のASHRAE(2004年版)の推奨温湿度範囲を満たすように空調システムを用いる場合に比べ、東京で約64%のエネルギー削減が可能になることが分かった。これに加え、換気用のファンを用いる機械換気を組み合わせることで、東京で70%、札幌で68%の期間で外気利用が可能となり、空調エネルギーをさらに削減できるとのこと。

 今後の展開としては、建物条件や地域性を考慮したデータセンターの設計や、データセンターを運用される顧客のニーズや運用形態に応じたシステムを早期に提供できるよう、引き続きICT機器と空調システムとの連携による省電力化に取り組むとともに、自然エネルギーを最大限に活用する自然換気と機械換気・空調を組み合わせたハイブリッドシステムを2013年度内の完成を目指し開発していく。また、コンテナ型データセンターだけでなく、大規模なデータセンターへの適用も視野に入れ、事業化に向けた開発を進める方針。

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