C&Cユーザフォーラム&iEXPO2012で、NEC・遠藤信博社長が基調講演

未来をつくるICT~「ビッグデータ」と「SDN」


 NECが、11月8日から2日間に渡り、東京・有楽町の東京国際フォーラムで開催している「C&Cユーザフォーラム&iEXPO2012」(主催・NEC C&Cシステムユーザー会、NEC)において、開催初日の午前10時から、NEC・遠藤信博社長が、「人と地球にやさしい情報社会へ ~あらゆる情報を社会の力に~」をテーマに基調講演を行った。
 

基調講演には長い行列が基調講演に先立ち、ユーザー事例論文の表彰式などが行われた


情報を集積することで、まったく違う新しい価値が生まれる

NEC・遠藤信博社長

 遠藤社長は、世界的な課題から、講演の内容をスタートした。

 「現在、70億人の世界人口は、40年後には90億人になり、都市化率が70%に高まる。人口は30%しか増えないが、資源はそれを上回るものが必要とされており、これは都市への集中傾向が背景にある。今後は、資源そのものを増やすのではなく、第2の資源として『効率化』が重視されるようになるだろう。資源の枯渇をICTでどう解決できるかが鍵になり、そのためには、ビッグデータを活用し、これまでにないような効率化に取り組む必要がある。この10年で通信速度は250倍、CPU性能は100倍となり、これによってクラウド、ビッグデータが本当に使える時期にきた」などと語った。

 具体的な事例として、インドでの都市化に対する課題について説明しながら、「情報収集と分析によって、本質的な課題が見える。直接的に入手可能な情報であるExplicit(形式知)をたくさん集めると、そこから、表面的には見えないImplicit(暗黙知)が見えてくる」とした。

 さらに、自動車のワイパーの動作情報をもとに、「自動車の位置情報に加え、ワイパーが動いているか、止まっているのか、それがどのぐらいの速度で動いているのか、という情報を集めると、どこでどのぐらいの雨が降っているか、時間とともに、どう雨雲が動いているのかがわかるというように、違う意味合いが見えてくる。隠れた部分の情報を集めると、まったく違う価値を生んでくる。これがビッグデータの面白さである」と述べた。

2050年に直面する世界的課題ICTによる効率化の実現ITとネットワーク技術の飛躍的な進化
増大するデジタル情報インドでの都市化課題と対応(1)インドでの都市化課題と対応(2)
複雑な情報構造の中の真の情報価値大量の情報収集による新たな価値創造通常表に出てこない“隠れた”情報(Inplicit情報)の大量収集による価値

 また、遠藤社長は、ビッグデータに関して、「大量データ・情報の収集」、「データ・情報分析」、「価値創造」という3点から説明した。

 情報の収集については、センサーやカメラ、スマートデバイスを活用し、収集した大量のデータをeデータ化するプロセスに触れながら、「情報を収集するセンサーは、小型であり、軽量、小電力が求められる。NECでは、小型の振動センサーを開発し、建物の安全性、水道管の漏水のほか、人体につけることで血管の状況もわかるようにしている。センサーから新たな価値が見いだすことができる」と説明した。

 そのうえで、「情報の収集における最終的な問題は、セキュリティにあると考えている。たとえば、センサーに対してセキュリティ面で影響があると、間違ったデータがセンターにあがってしまう。それを活用したインフラは、すでにデータをもとに動き始めている。間違った情報が入ると大きな混乱が起こることになる」として、情報を活用する上でのセキュリティの重要性を指摘した。

 NECでは、センサーなどにセキュリティ機能を搭載できるように、セキュリティ機能をチップ化。暗号アルゴリズムのTWINEを開発したことで、センサー機器の盗聴、改ざんなどの危険性を防止できるなどと説明した。

 データ・情報分析については、NECが世界トップレベルの分析エンジンを用意していることを示しながら、独自技術をベースにしたインバリアント分析、異種混合学習、顔画像解析、行動分析、テキスト含意認識などの分析サービスを提供できることを示しながら、「分析には、パターンや相関関係を見つける必要があり、また、モデリングによって、異常や変化を検出できる。これにより、大量の蓄積情報をベースにモデリングし、現在の状態とリアルタイムで比較するといったことも可能になる」と説明した。

 「さらに異種混合学習では、大量のデータのなかから、まったく異なるカテゴリー、パターンや規則を自動で発見し、今後の状態を予知、予測することができる。また、画像解析では、多数のカメラ映像を同時にリアルタイムで分析できること、さらには群衆や遠方からの映像のなかから、小さな顔やナンバープレートなどの文字を高精度に認識することもできる。ここにもビッグデータを活用した分析技術が使われている。」

 異種混合学習の例としては、すでに稼働しているオフィスにおける電力予測の例をあげ、「オフィスにおけるPCの利用状況、働く社員数や性別、天気などをもとに、1週間後の電力使用量を2~3%の誤差で電力予測ができる。予測ができれば、対応が可能になる」とした。

 価値創造の観点では、NECが提供する分析クラウドサービスによる事例をあげながら、「ビッグデータが様々な分野で価値を創出している。ワインも、ぶどうへの風の当て方などによって、味が変わってくるというが、そうした対応もビッグデータによって可能になる」と語った。

価値創造のプロセス大量データ(Inplicit情報)収集で価値を創造超高感度“振動センサ”
センサーに搭載可能な暗号化モジュールで情報収集世界トップレベルの分析エンジン群オフィスビルの電力予測
分析クラウドサービスの提供あらゆる分野で新たな価値を創出


さらなるICTの発展~SDNによるリアルタイム・ダイナミック処理

 一方、「さらなるICTシステムの発展」へとテーマを移した遠藤社長は、SDNによるリアルタイム・ダイナミック処理について言及。

 「より利便性が高いネットワークを作ろうという動きがある。それがSDNであり、データセンターに蓄積されたデータを利用するのでなく、流通しているデータをリアルタイムに、ダイナミックに処理および伝送するストリームライン・コンピューティングが注目されている。これは、どこのデータを、どこに移せば、どこにどれだけ速く到達し、いち早く処理ができるかということを、ネットワーク自体がインテリジェンスを持って、制御することになる。鮮度を保ったまま、情報を活用できる世界がやってくる」とした。

利便性、柔軟性の高いICT基盤でリアルタイム・ダイナミック処理SDNによるストリーミング・コンピューティング世界初のOpenFlow対応製品

 また、「NECは、SDNにおいて、Programmable Flowを発表し、ネットワークの仮想化ができるようにした。現在、これをNECのデータセンターのなかで活用し、検証をしている。消費電力は80%削減し、ネットワーク構成変更費用もソフトウェアで対応するために0となり、障害発生時の切り替え時間も大幅に短縮されることになる」とし、「NECは、総務省と一緒に、災害時において音声通話とメールを優先する、フレキシブリティで、可用性の高いネットワークを構築している」と語った。

 遠藤社長は、「次世代のICTシステムにおいて、ビッグデータは重要な技術になる。そして、データの価値は、背後にある情報、つまり暗黙知を集めることによって生まれていく。いままでできなかった領域の価値を生むことができる。これからは、リアルタイムとダイナミックがキーワードになる。これにより、変化が先読みでき、スピード対応が可能になる。少しでも先を推定できれば、新たな対応ができる」とした。

 最後に遠藤社長は約6分間に渡る、C&C Cloudによって実現する近未来のビデオを放映。「新たな価値の創出に向けては、表面的なデータだけでなく、Explicitのデータを導き出すことが必要である。お客様とともに新たな価値を創出し、競争力のあるビジネスを構築していきたい」として講演を締めくくった。

IT・ネットワークの最適な構成をダイナミックに実現PFlowの導入による効果(データセンターでの利用)
公演の締めくくりには、C&C Cloudによって実現する近未来のビデオを放映新たな価値を生み出すICTシステム
関連情報