NTT Com、「グローバルトータルICTアウトソーシング」の具体的な取り組みを明らかに

「NTT Com Forum 2012」で有馬社長が基調講演


NTT Com 代表取締役社長の有馬彰氏

 NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は、10月25日・26日の2日間、ザ・プリンス パークタワー東京で、プライベートイベント「NTT Communications Forum 2012」を開催した。今年は「Seamless Cloud for the World」を開催テーマとし、NTT Comグループがグローバルシームレスに展開するクラウドサービスやネットワークサービスの展示、最新ICTの動向や戦略的ICT活用の講演・セミナーなど各種プログラムを通じて、顧客の経営課題を解決するためのICTソリューションを紹介。初日の25日には、代表取締役社長の有馬彰氏が、“グローバルクラウドビジョンに基づく「グローバルトータルICTアウトソーシング」の新たな展開”と題した基調講演を行った。

 まず、有馬氏は、急激に変化するビジネス環境において、企業が抱える主な経営課題として、「新市場/成長分野へのリソース集中」、「コスト競争力強化」、「ワークスタイル変革」、「セキュリティ強化」、「BCP」の5つを挙げ、「これらの経営課題に対して、ICTシステムは企業の重要な経営戦略ツールとなりつつある。しかし、その一方で、既存のICTシステムは必ずしも全体最適化が図れていないのが実状。例えば、現地法人や事業部ごとにICTシステムがバラバラであったり、運用管理コストがかさんだり、セキュリティリスクへの対応が遅れるなどの課題を抱えている企業は多い」と指摘する。

 NTT Comでは、こうした市場背景の中で、顧客のICTシステムを全体最適化するソリューションとして、クラウドを活用した「グローバルトータルICTアウトソーシング」を展開。これによるメリットについて有馬氏は、「事業部や国内外拠点に分散したICTシステムをクラウドを用いて統合することで、コストを大幅に削減できる。また、ICT資産を所有から利用に転換、変動費化することにより、市場環境の変化に対応できる弾力的な事業構造を実現する。そして、当社にアウトソーシングすることで生じたICT人員などの経営資源を新たな収益源に集中させることができる」と述べている。

 次に有馬氏は、2011年に発表した「グローバルクラウドビジョン」に基づき、「グローバルトータルICTアウトソーシング」を実現する、(1)インフラストラクチャー、(2)ネットワーク、(3)クラウド、(4)カスタマーポータル、(5)クラウドマイグレーション、(6)トータルセキュリティ、(7)汎用アプリケーション、(8)パートナーシップ――の8つの項目について、それぞれ具体的な取り組みと今後の展開などを説明した。

 「インフラストラクチャー」の取り組みでは、グローバルデータセンターの拡充を行い、アジア、欧州6か国に約3.5万平方メートル(サーバールーム面積)を追加する。今年4月から8月にかけて、マレーシア、シンガポール、イギリス、インドの4カ国に開設しており、今年度第4四半期に香港TKO、13年度第1四半期には東京第6データセンターを追加する予定。これで、同社のグローバルデータセンターは全世界145拠点、約17万平方メートルになる。あわせて、グリーンデータセンター化も推進し、「3つの空調ソリューション(空調自動制御システム/アイルキャッピング/ブランクパネル)の相乗効果により、空調消費電力を約30%削減した」(有馬氏)という。

グローバルデータセンターの拡充高信頼・低遅延の大容量海底ケーブルの拡充

 また、高信頼・低遅延の大容量海底ケーブルを拡充。今年8月に、Asia Submarine-cable Express(ASE)を提供開始した。これは、日本からシンガポールの間を業界最低遅延で接続する海底ケーブルで、地震や台風などの被害が頻発する台湾南沖バシー海峡付近を回避することで、高信頼性を実現している。今年度第4四半期には、香港TKOとも接続する予定。

 「ネットワーク」の取り組みとしては、グローバルレベルで展開するネットワークサービスのクラウドシームレス機能を実装。「世界159か国で提供中のArcstar Universal OneとNTT Comクラウド基盤をあらかじめ接続することで、追加の回線費用を負担することなくクラウドサービスを利用可能となった。これにより、顧客は、高信頼なクラウドサービスをリーズナブルな価格で利用することができる」と、有馬氏はそのメリットを強調した。

 「クラウド」への展開としては、今年6月に企業向けプライベートクラウド「Bizホスティング Enterprise Cloud」、今年3月にパブリッククラウド「Bizホスティング Cloud n」の2つの新サービスを提供開始した。「Bizホスティング Enterprise Cloud」では、世界で初めて、商用サービスにネットワーク仮想化技術(SDN:Software Defined Network)を採用。これにより、スイッチなどの設定変更が柔軟かつ迅速に行えるほか、データセンターをまたがるバックアップが安価な定額料と従量料金で実現可能となった。「現在、香港と日本で提供しているが、今年度中に8カ国9拠点でサービスを展開し、今後さらに拡充していく」(有馬氏)と意欲を見せた。一方、「Bizホスティング Cloud n」については、10月以降に、オブジェクトストレージやリレーショナルデータベース、aPaaSといった機能を拡充しつつ、グローバル展開を進めていく計画。

「Bizホスティング Enterprise Cloud」の展開計画「Bizホスティング Cloud n」の機能拡充

 「カスタマーポータル」の取り組みでは、各種サービスにカスタマーポータル管理画面を用意し、利用状況の「見える化」と、申し込み/設定変更のオンデマンド化を実現した。「クラウドマイグレーション」の取り組みでは、オンプレミスシステムのクラウド化を支援するシステムコンサルティングと標準化された移行メニューを提供。有馬氏は、「来春には、仮想ネットワークを利用することで、既存システムのIPアドレスを変更せずに、クラウドへのマイグレーションを実現する、世界初の新サービスを提供する」との計画を明らかにした。

マイグレーションサービスの機能拡充セキュリティ情報/イベント管理エンジンの拡充

 「トータルセキュリティ」については、オンプレミスだけでなく、クラウドにも対応したグローバルに利用可能な「Bizマネージドセキュリティサービス」を提供。世界13か国に設置したセキュリティオペレーションセンターにより、400人強のスタッフが24時間365日リアルタイムでセキュリティ運用を監視する。また、新タイプの脅威にも対応するため、同社とIntegralis社、Secode社のもつノウハウと、NTT研究所の先端技術を活用した相関分析機能などを有するセキュリティ情報/イベント管理(SIEM)エンジンを拡充していく。

 「汎用アプリケーション」の取り組みでは、メールや仮想デスクトップ、音声などの汎用アプリケーションを活用することで、BYODソリューションの提供に注力していく。「当社では、私用端末約3600台を自社導入し、年間で約1億円超の通信コストを削減した実績がある。また、オフィスに戻らず、効率的に業務ができる環境を整備したほか、紛失や盗難時のセキュリティを確保し、会社と従業員双方のBYOD導入への不安を解消した。これらの豊富なノウハウをもとに、顧客に適したBYODソリューションを提供する」(有馬氏)という。現在は、「音声サービスによるBYODソリューション」、および「アプリケーションサービスによるBYODソリューション」を提供しており、今後、業務で利用する連絡先データをクラウド上に保存する「統合アドレス帳サービス」や、プライベート情報を残したまま業務関連情報だけを消去する機能を備えた「新MDMサービス」などを提供していく予定。

NTT comのBYODソリューションコンセプトNTT comのBYOD自社導入事例

 最後の「パートナーシップ」の取り組みについて、有馬氏は、「顧客のグローバルトータルICTアウトソーシングの提案において、ビジネスコンサルティング会社との連携を推進する。また、特別なノウハウを必要とする個別業務アプリケーションの移行/統合においては、SIerとの連携を行っていく。さらに、国内外の通信キャリアやSIerなどのパートナー向けにも、NTT comクラウドサービスを提供していく」との考えを示した。


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(唐沢 正和)
2012/10/26 06:00