メインフレームやPCに続く“第3のITプラットフォーム”が市場をリード、2020年のIT市場は5兆ドル規模に
IDC Japan、国内および世界のIT市場規模予測を発表
IT調査専門会社のIDC Japan株式会社は8日、2016年までの国内および世界のIT市場規模予測を発表した。
■スマートデバイスが市場を先導、Windows 8がPC市場を活性化?
これによると、2012年における世界のIT市場の規模は、前年比6.5%増の2兆0230億ドルとなり、スマートフォンのほか、タブレットおよびリーダー、ストレージ、ソフトウェアがけん引。Windows 8がPC市場を活性化すると予測した。
内訳は、ハードウェアが1兆20億ドル、ソフトウェアが3700億ドル、ITサービスは6510億ドルとなっている。
「先進国を中心にPC、サーバー、ITサービスは成長率が鈍化。ITサービスは、1990年代には10%以上の成長率となっていたが、これが4%前後の成長率にとどまっている。また欧州市場では、不景気やユーロ安が企業の収益に悪影響となっている。中国でも景気悪化のリスクがある。ITベンダーは、高成長率の製品への取り組み、先進国市場と新興国市場を適切にカバーすることが重要である」(IDC Japan ITスペンディング/ソフトウェア&セキュリティ グループディレクターの和田英穂氏)とした。
特に成長率が高いのが、スマートフォンで、2011年には前年比49.1%増、2012年は28.3%となっており、スマートフォン以外でもっとも成長率が高かったソフトウェアの6.5%(2011年)、ストレージの8.0%(2012年)をはるかに超える成長率となっており、「スマートフォンを含めるか含めないかで、市場の見方は大きく変わることになる」などとした。
スマートフォンを除く世界のIT市場の規模は、2012年予測で前年比4.0%増の1兆6060億ドルとした。
モバイルの影響 | IDC Japan ITスペンディング/ソフトウェア&セキュリティ グループディレクターの和田英穂氏 |
2012年の対前年成長率は、PCが3.5%増、サーバーが0.8%減、ストレージは8.0%増、ネットワークは3.7%増、HCPが3.0%増、ソフトウェアが6.0%増、ITサービスが3.5%増と予測している。
また、2016年の世界のIT市場規模は2兆4650億ドル、2006年からの10年間の年平均成長率は4.6%増となる。日本のIT市場規模は1710億ドルとなり、同じく年平均成長率は0.6%減と予測した。2006年における世界市場における日本市場の構成比は11.5%だったが、2016年には6.9%にまで縮小することになる。
ワールドワイドの製品別IT市場成長率(2011年/2012年) | ワールドワイドの地域別IT市場成長率(2011年/2012年) |
■日本のIT市場規模は中国に抜かれて3位に
一方、2012年の日本のIT市場規模予測では、2012年に前年比2.3%増の1690億ドル(約13兆円)となるものの、中国市場が同14.0%増の1700億ドルとなり、日本は中国に抜かれ、世界第2位の市場から、米国、中国に次いで3位に転落することになるという。
日本国内のIT市場については、2011年は東日本大震災や電力不足の影響で、前年比0.9%減の13兆1665億円となったが、2012年は前年比2.3%増の13兆4691億円になると予測した。
「前回発表時には、2012年は前年比1.1%増としていたが、それに比べて1.2ポイント上方修正したのは、2012年上期にPCの動きが想定よりもよかったこと、プリンタや複合機の需要が堅調であること、スマートフォンがけん引していることなどがあげられる。複合機については、コンビニエンスストア向けに1000台規模の入れ替えがあることなどがプラスに影響している。またサーバーは、前年にあった理研向けの京の反動でマイナスになる」などとした。
また、ユーザーを対象にした調査では、2011年10月調査時と2012年4月調査時で、IT支出を前年に比べて減少させると回答した企業が縮小しており、「2012年度のユーザー企業のIT投資マインドは改善方向にある」とした。
ワールドワイドのIT市場と国内のIT市場(2006年~2016年) |
2012年の13兆4691億円の内訳は、ハードウェアが前年比2.4%増の6兆1620億円、ソフトウェアは同3.4%増の2兆3833億円、ITサービスは同1.6%増の4兆9238億円としている。
成長率では、PCが前年比1.0%増、サーバーが同9.0%減、ストレージが同2.2%減、テレコムが同3.2%増、HCPが同7.2%増、ソフトウェアが同3.4%増、ITサービスが同1.6%増とした。
「ハードウェアから、ITサービス、ソフトウェアへと支出がシフトしている。第3のITプラットフォームの時代へ移っており、ハードウェアベンダーは中長期的にビジネスモデルの見直しが必須」だとした。
■第3のITプラットフォームとは?
IDC Japanが定義する第3のITプラットフォームとは、第1がメインフレーム、第2がPCおよびインターネットで構成されたのに対して、第3のITプラットフォームは、クラウドサービス、モビリティ、ソーシャル、ビッグデータの4つで構成されるものだとしている。
「第3のITプラットフォームは4つの構成要素が緊密に連携し、第2のITプラットフォームとは異なる新たなITプラットフォームを実現。第2のITプラットフォームは2020年までの年平均成長率(CAGR)が2.5%とほぼ横ばいであるのに対して、第3のITプラットフォームは15%増という高い成長を遂げる」と予測し、2020年には第3のITプラットフォームが成長をけん引することで、世界のIT市場は5兆ドル(約400兆円)の市場規模に達すると予測した。
「第3のITプラットフォームはアイデアが勝負の時代となり、特にビッグデータが新たな価値を生むことになる。ITベンダーは、第3のITプラットフォームに早期に取り組むことが、生き残りのために必須になる」と語った。
第3のITプラットフォーム | 第3のITプラットフォームが市場をリードする |
一方、2016年の国内IT市場規模は、13兆6463億円で、2011年から2016年までの年平均成長率は0.7%の微増。特に、2014年は更新サイクルの谷に当たることから、一時的に前年割れすると予測している。
2016年までのハードウェアの年平均成長率はマイナス1.2%と減少傾向で、ソフトウェアは3.2%増、ITサービスは1.7%増と予測している。
IT市場の定義 |