シスコ、包括的なネットワークプログラマビリティを提供する新アプローチ「Cisco ONE」


 シスコシステムズ合同会社(シスコ)は6月29日、アプリケーションによるネットワークプログラマビリティを促進する広範なアプローチ「Cisco Open Network Environment」(以下、Cisco ONE)を発表した。

 「Cisco ONE」は、シスコが新たに提唱するネットワークビジョン。アプリケーションの特性に合わせて、ネットワークインフラを柔軟にカスタマイズ可能にすることで、企業におけるサービス即応性の向上、リソースの最適化、新サービスの早期の収益化といった事業目標の達成を実現する。

ビデオカンファレンスを通じて「Cisco ONE」を説明する米シスコ データセンター、バーチャリゼーション グローバル マーケティング 戦略担当ディレクターのシャシー・キラン氏「Cisco ONE」のフレームワーク

 発表会では、米シスコ データセンター、バーチャリゼーション グローバル マーケティング 戦略担当ディレクターのシャシー・キラン氏が、ビデオカンファレンスを通じて「Cisco ONE」の概要を説明。「『Cisco ONE』では、包括的なネットワークプログラマビリティを提供するために多面的な製品戦略を展開し、豊富なプラットフォームに対応するAPIセット、エージェントとコントローラ、オーバーレイネットワーク技術という、大きく3つのアプローチからソリューションを提供する。また、伝送から管理、オーケストレーションに至るまで、ソリューションスタック全体を網羅することで、Software Defined Networking(以下、SDN)における従来までのアプローチの穴を補完する」としている。

「Cisco ONE」の3つのアプローチ「Cisco ONE」のソリューションポートフォリオ

 「Cisco ONE」の具体的なソリューションとしては、1つめのアプローチでは、同社のOSであるCisco IOS、IOS-XR、NX-OSで利用可能な開発者用の豊富なAPIセット「One Platform Kit(onePK)」を提供する。同社では、OSだけでなくハードウェアプラットフォーム(Cisco ASR、Cisco ISR G2、Cisco CRS、Cisco Catalyst、Cisco Nexusスイッチ)においても、「onePK」の段階的なサポートを提供する予定。まずは、「Cisco ASR 1000」と「Cisc ISR G2」の2機種に対して提供されるという。

 この「onePK」により、ソフトウェアアプリケーションとの緊密な統合が可能となり、ネットワークインフラストラクチャの可視性の向上、オーケストレーションと制御性の向上による迅速なサービス立ち上げと提供、複数のネットワーク タスクとプロセスの自動化を実現する。また、開発者は、使い慣れたプログラム言語や、既存のツールを選択して使うことができるため、既存の開発環境への統合が容易に行うことができる。

 2つめのアプローチでは、SDN研究のためのPoC(Proof of Concept:機能検証)用コントローラソフトウェアとPoC用のOpenFlowエージェントを提供する。「コントローラソフトウェアの提供にあたっては、現在、複数の学術・研究機関と協力して取り組んでいる。たとえば、大学では学術研究を行うために、キャンパスネットワークを、一貫したポリシー管理情報に基づき、SDNによっていくつかに分割する『キャンパスネットワークスライシング』を検討している」(キラン氏)という。また、エージェントについては、「Cisco Catalyst 3750-Xシリーズ」および「3560-Xシリーズ」のスイッチでPoC用のOpenFlow v1.0エージェントを提供する予定。

 3つめのアプローチとしては、物理/仮想のすべてのネットワークで一貫性を確保するために、仮想オーバーレイネットワークでのOpenStack、マルチハイパーバイザ、VXLANゲートウェイ機能のサポートを拡充する。具体的には、オープンソースハイパーバイザのサポートを通して仮想スイッチ「Nexus 1000V」ポートフォリオの機能強化を図ることで、スケーラブルなマルチテナントクラウドインフラストラクチャとIaaS向けに仮想オーバーレイネットワークソリューションを拡張する。これらは、既存のVMwareとMicrosoftのハイパーバイザに対するサポートに追加される。

 また、従来のVLANベースの物理ネットワーク環境とVXLANベースの仮想オーバーレイネットワークをつなぐVirtual Extensible Local Area Network(VXLAN)ゲートウェイを提供する予定。このほかにも、「Cisco Nexus 1000V」に実装されたvPath技術を拡張し、VSGとASA1000Vを含むVXLANベースのオーバーレイネットワーク上で仮想サービスをサポートする予定だという。

 「『Cisco ONE』は、様々な業界リーダー、学術機関、標準機関と協力することで、それぞれに異なるネットワークプログラマビリティへの要件に対応している。大学・研究機関をはじめ、ハイパースケールデータセンター、クラウドプロバイダー、サービスプロバイダー、一般企業まで、幅広い導入モデルをサポートしており、これは他社には追随できない『Cisco ONE』の大きな強みだ」と、キラン氏は力を込めていた。

シスコシステムズ 専務執行役員の木下剛氏

 日本での共同研究の取り組みについて、シスコ 専務執行役員の木下剛氏は、「情報通信研究機構(NICT)と協力し、『onePK』を利用したSDN実証実験を、2012年のさっぽろ雪まつりで実施した。こうした取り組みの中で、日本は、OpenFlowなど新しいネットワーク技術への関心が非常に高いことを実感した。今後も、NICTなどのパートナーと協力して、継続的に国内での研究開発活動を進め、マルチレイヤ、マルチプロトコルによる柔軟なネットワーク環境を提供できる整備していく」との考えを述べた。

 なお、同社では、「Cisco ONE」のベータトライアル版の提供と段階的な一般提供を2012年最終四半期から開始する予定。


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(唐沢 正和)
2012/7/2 06:00