「既存資産を生かした移行が重要、100GbpsラインレートのOpenFlowも可能」~ブロケードがSDN対応を説明


 ブロケード コミュニケーションズ システムズ株式会社(以下、ブロケード)は23日、Software-Defined Networking(SDN)戦略に関する説明会を開催。米Brocade サービス・プロバイダ事業部担当副社長、ケン・チェン氏らが、同社の現状のソリューションと将来のビジョンを説明した。

 SDNとは、ネットワーク全体を1つのプラットフォームとみなして、ソフトウェアで設定・制御を行えるようにするという考え方。これが実現すると、異なるベンダーの多数のスイッチが混在する環境であっても一括して設定を行えるようになるため、ネットワークの管理工数が大幅に軽減されることになる。この代表格としては、Open Networking Foundation(ONF)などで標準化が進められてきたOpenFlowプロトコルがある。

 一方ブロケードでは2010年11月に、フラットなレイヤ2のネットワークを実現する「イーサネットファブリック」構想を発表。それを実現するための製品としてスイッチ「VDXシリーズ」を提供し、スイッチをクラスタ化する「Brocade Virtual Cluster Switching(VCS)」などの諸技術によって、ネットワークのシンプル化を実現してきた。

 今回の発表では、ネットワーク業界で進展するSDNと、従来のブロケードの戦略がマッピングされた。イーサネットファブリックにおいては、それを構成する複数のスイッチが単一の論理スイッチとして動作するため、もともと、運用上の複雑性を排除できるという特徴を持つ。ブロケードでは、こうした現状をSDNへの第一歩と位置付けるものの、従来の顧客の投資を保護するため、VDXシリーズ以外の製品についても、無理なくSDNへのアップグレードを行えるような手段を提供していくという。

 チェン副社長は、そのためには既存のネットワークとOpenFlowとの併存が絶対条件になるという点を指摘する。それは、スイッチ/ルータがOpenFlowに対応したとしても、ほとんどのサービス事業者では、既存サービスを維持しながらOpenFlowの利用を始めるとみられているためで、既存のネットワークを一気にOpenFlow対応製品のみに置き換えるというアプローチは現実的ではない。


投資を保護し、段階的な移行を提供する米Brocade サービス・プロバイダ事業部担当副社長、ケン・チェン氏
OpenFlow対応製品の第1弾

 ブロケードでは、9月にリリースされるスイッチ向けOSの「Brocade NetIron OS 5.4」によって、シャーシ型ルータの「Brocade MLX」とボックス型スイッチ/ルータ「Brocade CES/CER」をOpenFlow 1.0に対応させるが、こうした点を考慮し、同一筐体内の別ポートごとにOpenFlowなのか、既存のL2/L3フォワーディングなのかを選択できる「ハイブリッド・スイッチ」モードをサポートする。こうすれば、OSを書き換えた既存の機器で、これまでのサービスを継続しながら、OpenFlowの利用を開始できる。

 また今後は、同一ポートで既存のフォワーディングとOpenFlowの併存を可能にする「ハイブリッド・ポート」モードのサポートも予定しており、いっそうの利便性を顧客に提供できるとのこと。

 もちろん、SDNのメリットをフルに享受するためには、すべてがOpenFlowなどの技術で統一されていることが望ましいが、スイッチのOSを書き換えるだけで対応できるのであれば、それも十分可能ということになるわけだ。こうして顧客は、自らのペースに従って段階的にSDNへの移行を実現していける。

 一方管理面では、RESTfulインターフェイスや、VMware vCenter、Microsoft System Center、OpenStack、CloudStackなどへのプラグインを提供することで、さまざまなツールからネットワークの一括管理や設定の自動化などを行えるようになる予定。自社製品にこだわらない、オープンな観点からSDNを推進する。

 しかしオープン、柔軟性というだけではなく、ブロケードならではの特徴も打ち出していく。ブロケード プロダクトマネジメント&マーケティング部の佐宗大介ダイレクタはその特徴として、「ハードウェアベースでのOpenFlow対応」という点を挙げる。このため、100Gigabit Ethernet(GbE)ポートを持つBrocade MLXでOpenFlowを利用するのであれば、「100GbpsのラインレートでOpenFlowに対応する」(佐宗ダイレクタ)ことが可能。しかも、プログラマブルなネットワークプロセッサをこれらの製品が採用しているので、これからのOpenFlowの変化にも追随できる柔軟性があるとした。


OpenFlowに対するブロケード独自のアプローチブロケード プロダクトマネジメント&マーケティング部の佐宗大介ダイレクタ

 またブロケード データセンターテクノロジー部の小宮崇博部長は、「お客さまのところには既存のハードウェアがたくさんあり、(SDNなどによる)オーバーレイネットワークを実現するためには、ソフトウェアの仮想スイッチだけではできない。だからこそ、当社はソフトウェア、ハードウェアの両面から考えている」と、自社の考え方を説明している。

 なおブロケード 代表取締役社長の青葉雅和氏によれば、「かつては、ネットワークベンダーが相次いでファブリックを提唱し、一方米国ではOpenFlowがホットになってきていたので、どちらを使えばよいのか」という質問をよく受けたという。しかし最近では「データセンターの中ではファブリックを使い、データセンター間でOpenFlowを使うのが主流になってきている」そうで、共存するものだということが理解されてきたため、そういった質問も少なくなったとのこと。

 特に、価格競争がし烈なデータセンター事業者では、複数のデータセンターを結んでユーティライゼーションを上げるとともに管理コストを下げることが求められているため、そうしたネットワークの利用が指示されているとのことだ。


SDNとファブリックの共存
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