「オープン性を重視しつつも統合のシナジーを出す」、DellがForce10統合後のネットワーク戦略を説明


DellとForce10の統合によるメリット
デル 執行役員 エンタープライズ・ソリューション・オーガニゼーション コンピューティング&ネットワーキング APJ統括本部長の町田栄作氏

 「ベンダーロックインをしない、ミッドマーケットを主なターゲットとするなど、DellとForce10 Networks(以下、Force10)の共通点は多く、当社のもともと手掛けていたサーバー、ストレージと、Force10のネットワーク製品のシナジーがきちんと生まれてくる」――。デル株式会社は6日、ネットワーク戦略の説明会を開催。デル 執行役員 エンタープライズ・ソリューション・オーガニゼーション コンピューティング&ネットワーキング APJ統括本部長の町田栄作氏は、Force10製品の統合効果をこう説明する。

 もともと、DellではPowerConnectブランドでネットワーク製品を提供していたが、製品的にはあまり高機能ではなく、それを補完する意味でBrocade、Juniperなどのベンダーから製品をOEM提供してもらい、自社ブランドでの販売を行ってきた。しかし、データセンターの仮想化やクラウド化が進む中で、ストレージやサーバーをつなぐネットワークの重要性が高まっていたこともあって、「お客さまのエンドトゥエンドのニーズをとらえて価値を提供するべく」(町田氏)、Force10の買収に踏み切ったという経緯がある。

 そのForce10製品の特徴は、「高密度・高パフォーマンスで遅延の少ない、データセンターに適した製品を提供している」(デル エンタープライズ・ソリューション・オーガニゼーション ネットワーキングソリューションズ Force10ユニット リージョナルディレクターの林田直樹氏)という点だ。仮想化/クラウド時代になり、データセンターの重要性が高まるにつれ、2000年以前の設立当初から10Gigabit Ethernet(GbE)を視野に入れてきた、Force10の強みがより訴求できるようになってきたのだという。

 特に、高速・低遅延が求められる金融業界やHPC向けの特化型データセンター、ポータル/Web 2.0企業の集約型メガデータセンターでは、これまでも実績を積み重ねており、前者ではニューヨーク証券取引所などを運営するNYSE Euronext、後者ではFacebook、Yahoo!、twitterなど多くの著名企業を顧客に持つ。さらに仮想化/クラウドのデータセンターについても、salesforce.comなどですでに実績を積み重ねてきた。

 また「オープンで、ユーザーの既存資源を活用できるようにする」(林田氏)というForce10の基本姿勢も、やはりオープン性を重視してきたDellとの親和性が高い領域。例えばForce10のスイッチでは、SFPモジュールにベンダーロックがかかっておらず、他社のモジュールを流用できるため、ユーザーはせっかくの投資を無駄にせずにすむのだ。

 もちろん、買収によるシナジーを出すために、Dellの製品との連携機能は今後提供されていくだろうが、「当社製品のお客さまの環境においても、他社のサーバー、ストレージ、ネットワーク製品との混在の事例は、現実にたくさんある」(町田氏)というように、Dell製品だけでのロックインはこれまでも考えていなかったし、今後も考えないのだという。


デル エンタープライズ・ソリューション・オーガニゼーション ネットワーキングソリューションズ Force10ユニット リージョナルディレクターの林田直樹氏Force10の強み
Force10の製品ラインアップ

 製品ラインアップとしても、既存のPowerConnectとForce10製品ではほとんど重複がないとのことで、既存のOEM製品に代わって積極的に販売していく。特にDellでは、買収によるシナジーを考慮し、データセンターのラック内でサーバーやストレージからのケーブルを集約する「トップオブラックスイッチ」に力を入れていく考え。この分野では、省電力、高密度のボックス型スイッチが求められることが多く、Force10でも「S4810」や「S60」など、トップオブラックスイッチに適した高密度のボックス型スイッチをラインアップしている。

 また、5月に発表した高密度40GbEスイッチ「Z9000」も、戦略的な製品として挙げた。同製品では、従来のシャーシ型よりも大きな2.5Tbpsのスイッチング容量を持ち、32ポートの40GbE、あるいは128ポートの10GbE(変換ケーブル利用時)を搭載できる、超高密度のボックス型スイッチ。これを利用すると、1台だけでも相当な規模を扱えるほか、複数台へのスケールアウトに対応し、“分散コア型”のフラットなアーキテクチャでネットワークを効率化できるとのこと。

 林田氏はこうした製品を念頭に、「Z9000は先月販売を開始したばかりだが、アジアではインドや日本ですでに導入が進んでいるおり、シャーシ型からトップオブラックスイッチへ市場の移行が見られるだろう。今までのデル製品にForce10のネットワーク製品を加えることで、トータルソリューションが提供できる」と話した。


Z9000の特徴分散コア型ネットワーク

 なお従来のOEM製品では、無線LANソリューションを提供する米Arubaの「Aシリーズ」は販売を継続。Juniperの「Jシリーズ」とBrocadeの「Bシリーズ」は、それぞれファイアウォール、FC SAN関連製品は継続するものの、Ethernet製品についてはForce10の製品に切り替えられるとのこと。また今後は、Force10のスイッチに共通して採用されているモジュラー型OS「FTOS」を、PowerConnect製品についても移植するほか、管理面の統合でもForce10側に合わせることを基調として、現在検討が進められているとしている。


Force10のボックス型スイッチ。手前に見えるのがZ9000
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