日立、2011年度上期決算は増収減益も計画値からは上振れに~データセンター新設でクラウド事業拡大に意欲


2011年度上期連結業績の概要

 株式会社日立製作所(日立)は、2011年度上期(2011年4~9月)の連結業績を発表した。

 連結売上高は前年同期比1.6%増の4兆5727億円、営業利益は同21.8%減の1706億円、税引き前利益は同49.6%減の1330億円、当期純利益は同62.0%減の777億円となった。

 日立の三好崇司執行役副社長は、「第1四半期においては、東日本大震災の影響が大きく、その結果、上期は増収減益になった。震災影響は少し残っている部分があるが、第2四半期にはかなり回復し、ほぼ正常に戻ったと判断している」と語った。

 バンテックを子会社化した日立物流を含むその他部門や、情報・通信システム部門、建設機械部門などが前年同期を上回り、売上高は前年同期比約2%増収、見通し比では建設機械部門を除いて上回り、見通し比4%増収。営業利益は、資材費低減などのコスト削減を推進したものの、東日本大震災や円高の影響により前年同期を下回ったという。だが、すべての部門で見通しを上回り、見通し比706億円増になった。

 最終利益は東日本大震災の影響を受け減益になったが、8四半期連続で黒字を計上した。

 なお、東日本大震災の影響は、売上高でマイナス1900億円、営業利益でマイナス700億円。主に部品調達難による操業度の低下などが要因としている。


日立の三好崇司執行役副社長東日本大震災の影響
事業部門別の売上高
事業部門別の営業利益

 事業部門別では、情報・通信システムの売上高は前年同期比3%増の7970億円、営業利益は同10%減の310億円。

 情報・通信システムのうち、ソフトウェア/サービスの売上高は前年同期比6%増の5531億円。そのうちソフトウェアの売上高が同13%増の835億円、サービスが同5%増の4695億円。ハードウェアの売上高は同4%減の2439億円。そのうち、ストレージの売上高は同7%増の920億円、サーバーは同4%減の240億円、PCは同3%減の145億円、通信ネットワークは同6%減の612億円。その他の売上高は同17%減の519億円となった。また、ストレージソリューション事業は、売上高が同13%増の1670億円となった。

 情報・通信システム部門は、海外でのストレージ向けソフトウェアおよびサービスが増加したことなどにより、ソフトウェア/サービスが前年実績を上回ったことが貢献。営業利益は東日本大震災の影響があったという。

 三好副社長は、「ストレージソリューションが全世界で堅調であり、国内においてもソリューション事業が着実に回復してきている」と語った。

 電力システムの売上高は前年同期比3%減の3724億円、営業利益は同96%減の6億円。社会・産業システムの売上高は同1%増の5135億円、営業利益は同41%減の63億円。電子装置・システムの売上高は同1%増の5335億円、営業利益は同31%増の213億円。建設機械は売上高が同6%増の3558億円、営業利益は同42%増の258億円。

 高機能材料の売上高は前年並の7006億円、営業利益は同33%減の338億円。オートモーティブシステムの売上高は同2%増の3881億円、営業利益は同161%増の147億円。コンポーネント・デバイスの売上高は同7%減の3674億円、営業利益は同65%減の126億円。デジタルメディア・民生機器の売上高が同7%減の4713億円、営業利益は同53%減の52億円。金融サービスの売上高は同3%減の1814億円、営業利益は26%増の141億円。その他部門の売上高は同25%増の4678億円、営業利益は同27%増の163億円となった。

 「デジタルメディア・民生機器は、7月以降のテレビが厳しい。空調、白物家電は伸長している」(三好副社長)という。

 日立グローバルストレージテクノロジーズによるハードディスクドライブ事業の業績は、2011年1~6月の実績で、売上高が前年同期比14%減の2322億円、営業利益は同63%減の135億円。

 HDDの出荷台数は前年同期比1%増の5550万台。そのうち、民生・情報機器向けの2.5型が1%増の3260万台、3.5型が3%減の1560万台。サーバー向けは25%増の420万台、エマージング向けが11%減の146万台、外付けHDDが10%増の161万台となった。

 だが、第3四半期(7~9月)の業績は改善しており、速報値での売上高は2%増の1316億円、営業利益は18%増の140億円。2.5型が19%増の2000万台、サーバー向けが48%増の270万台と成長しているという。

2011年度(2012年3月期)の連結業績見通し

 なお、通期の見通しについては据え置いた。

 売上高は前年比2.0%増の9兆5000億円、営業利益は同10.0%減の4000億円、経常利益は5.1%減の4100億円、当期純利益が同7.6%減の2800億円。営業利益では約900億円のマイナス影響があるものの、最終利益では2年連続での2000億円台を見込む。世界経済動向やタイの洪水被害による影響、為替レートの推移、原材料価格の変動などが極めて不透明なものの、社会イノベーション事業のグローバル展開の加速、事業構造改革やコスト構造改革プロジクトの推進により、当初見通しを達成するとした。

 「外部環境は厳しいが、社会イノベーション事業のグローバル展開のほか、運用・保守までを含めたトータルソリューション提案力の強化、日本においては、東日本大震災からの復興への着実な貢献、コスト構造改革を強力に推進する」とした。

 社会イノベーション事業の中核部門のひとつとなる情報・通信システムにおいては、米ブルーアークの買収により、ビッグデータ関連ソリューションの開発力を強化。南アフリカでのショウデンデータシステムズ(Shoden Data Systems)の買収による、アフリカ大陸におけるストレージソリューションの販売・サービス体制を強化したことをあげながら、グローバル展開の加速を強調。また、日本および中国におけるデータセンターの新設など、クラウド事業の国内外の強化に取り組む姿勢を強調した。

 「今後、さまざまな領域において、大量データが重視されると考えている。これまでにも、当社自身で取り組んできた経緯はあるが、ブルーアークの専門的な技術を利用することでさらに強化できる。ストレージソリューションは当社がこれからも強くしていける分野であると考えており、内部ではもっと上を狙えといっている」と語った。

 なお、タイの洪水被害は、冷蔵庫向けコンプレッサー工場のほか、日立金属で2工場、日立化成の工場の、合計4つの工場が冠水しているという。「水害保険などでカバーできるため業績面でも影響は少ない。最も影響が大きいのは、冷蔵庫向けコンプレッサー工場だが、他社からの調達を含め挽回(ばんかい)策を展開している。また、タイには2.5型とサーバー向けのHDD生産拠点があるが、ここは直接的な被害を受けていない。課題はHDD関連の日系部品メーカーである。いま接触して話し合いを進めている。HDD事業は、年内までにWestern Digitalに売却する方向で進めており、本年度の業績には7~9月分までが反映されるため、タイ洪水被害は、10月以降の業績への影響はないと考えられる」などと語った。

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