日立の第1四半期決算、計画値に対しては上ぶれも厳しい内容~情報・通信システムは増収増益
日立の三好崇司執行役副社長 |
株式会社日立製作所(日立)は、2011年度第1四半期連結決算を発表した。
連結売上高は前年同期並みの2兆1506億円、営業利益は前年同期比41%減の524億円、税引前利益は同71%減の411億円、当期純利益は同97%減の29億円となった。
日立の三好崇司執行役副社長は、「震災の影響が大きく、厳しい内容。だが、6月9日に発表した計画に対しては、売上高で860億円増、営業利益では560億円増、最終利益で370億円増となり、全セグメントで上ぶれした」とした。
上ぶれしたセグメントでは、建設機械、高機能材料、社会・産業システム、情報・通信システム、電力システムなどをあげ、10~15%程度の上ぶれがあったという。
震災影響は、売上高では1300億円、営業利益では500億円、税引前利益では650億円、純利益で500億円の影響があったというが、「日増しにサプライチェーンが回復しており、影響度合いが減っている」として、上期への震災影響は「売上高では当初見通しに比べて500億円減の2400億円、営業利益で100億円減の800億円程度になるだろう」としたほか、「自らが被災した拠点が多く、慎重に見ていたことも背景にはあったのかもしれない」などとした。
また為替の影響では営業利益で約150億円。建設機器と高機能材料への影響が約半分を占めたという。
事業部門別では、情報・通信システムの売上高は前年同期比1%増の3507億円、営業利益は前年同期の1億8400万円から21億200万円と大きく伸長した。
「海外のストレージソリューション事業が成長したこと、国内案件で前倒しになったものがあったこと、BCPやBCMといった点からデータセンターに関する商談が増加していることがある。しかし、震災の影響として、もともと計画していた投資案件が先送りになるという状況も見られている。震災影響は回復基調にあるために、長くは先送りにはならないが、本年度中にどこまで回復するかはわからない」とした。
海外を中心としたコンサルティングサービスやストレージ向けソフトウェア、サービスが増加したほか、ストレージの上位機種が伸長したという。
情報・通信システムのうち、ソフトウェア/サービスの売上高は前年同期比5%増の2443億円。そのうちソフトウェアの売上高が同7%増の382億円、サービスが同4%増の2060億円。ハードウェアの売上高は同8%減の1064億円。そのうち、ストレージの売上高は同2%減の449億円、サーバーは同3%増の103億円、PCは同5%増の59億円、通信ネットワークは同17%減の249億円。その他の売上高は同14%減の202億円となった。また、ストレージソリューション事業は、売上高が同12%増の830億円となった。
電力システムの売上高は前年同期比6%減の1663億円、営業損益は46億円の黒字から32億円の赤字に転落。社会・産業システムの売上高は同1%減の2298億円、営業利益は62%減の9億円。電子装置・システムの売上高は同2%減の2461億円、営業利益は33%増の71億円。建設機械は売上高が同6%増の1725億円、営業利益は59%増の110億円。
高機能材料の売上高は前年並の3470億円、営業利益は26%減の193億円。オートモーティブシステムの売上高は同4%減の1771億円、営業利益は6%増の20億円。コンポーネント・デバイスの売上高は同8%減の1777億円、営業利益は74%減の49億円。デジタルメディア・民生機器の売上高が同9%減の2331億円、営業利益は54%減の32億円。金融サービスの売上高は同2%減の924億円、営業利益は34%増の69億円。その他部門の売上高は同26%増の2269億円、営業利益は3%減の57億円となった。
コンポーネント・デバイスのうち、HDD事業は、日立グローバルストレージテクノロジーズの4月~6月の売上高は16%減の1169億円、営業利益は価格低下の影響を受けて60%減の68億円となった。
HDDの出荷台数は前年同期比5%減の2690万台。そのうち、民生・情報機器向けの2.5型がスマートフォン効果もあり1%増の1680万台、 3.5型が19%減の670万台。サーバー向けは独自製品の強みが発揮されたこともあり、19%増の230万台、エマージング向けが43%減の49万台、外付けHDDが3%増の67万台となった。
デジタルメディア・民生機器では空調機器が省エネ機種への買い換え需要により、国内を中心に増加したものの、光ディスクドライブ関連製品が東日本大震災に伴う部材不足や円高の影響により、前年同期を下回ったほか、薄型テレビも販売価格の下落により減少したという。
■上期の業績を上方修正、営業利益は200億円増を想定
また、同社では上期の業績予想を上方修正した。
売上高の4兆4000億円は据え置いたが、営業利益では当初予想より200億円増の1000億円、税引前利益では200億円増の750億円、純利益では100億円増の100億円とした。
部門別売上高ではオートモーティブシステムで200億円増となり、全社消去で200億円減。また営業利益では、社会産業システム、電子装置・システム、建設機械、オートモーティブシステム、デジタルメディア・民生機器が上方修正した。
「第1四半期が計画よりも上ぶれしたこと、第2四半期以降、サプライチェーンの回復、自動車産業がアクセルを踏み始めるといったプラス要因はあるものの、円高の影響やレアアースを中心に材料費が高騰する可能性があること、電力供給環境の問題、各国の情勢が不透明であることなどの懸念材料がある」などとした。