NEC、コンテンツ配信の基盤から端末までをトータルで提供するクラウドサービス


テレコム・コンテンツソリューション事業部長の高石勝氏

 日本電気株式会社(以下、NEC)は6日、電子書籍・映像・音声・ニュースなど多種多様なコンテンツを、PCやスマートフォン、タブレット型端末などあらゆる端末に配信する「コンテンツ配信クラウドサービス」を、本日より販売開始すると発表した。サービス提供は7月末より開始される予定。

 今回のサービスは、NECがコンテンツ配信プラットフォームを用意し、コンテンツプロバイダ(以下、CP)から提供される電子書籍や映像、ニュース、音楽などの様々なコンテンツを、企業や消費者に向けて、端末の種類や情報の形式を問わず配信することができるクラウドサービス。

 NECがCPから様々なコンテンツの提供を受け、それらを安全・安心に配信および管理するための様々な機能を備えている。動画コンテンツの動きにあわせてテキストデータを流したり、利用者に対して、異なるメディアや複数のコンテンツを組み合わせて提供するといった配信にも対応する。また、配信プラットフォームに加え、PCやスマートフォン、Android搭載タブレット型端末「LifeTouch」といった端末までを、同社がワンストップで提案。配信プラットフォームについては、クラウドだけでなく、企業内に個別に構築するSI型での提供も可能だという。

 デジタルコンテンツを取り巻く市場環境について、テレコム・コンテンツソリューション事業部長の高石勝氏は、「現在、コンテンツ産業の売り上げは2007年度をピークに減少が加速している。一方で、スマートフォンのユーザーは増加し続けており、デジタルコンテンツが急速に普及しているのが現状だ。このため、コンテンツプロバイダにとっては、新たな販売チャネルの拡大、利用者にとっては様々なコンテンツをいつでもどこでも手軽に見たいなど、企業・ユーザーを問わず、デジタルコンテンツ市場への期待が高まっている。また、広告業界においても、テレビや新聞などのマス広告が減少するなかで、デジタルコンテンツを活用したパーソナル広告の展開に期待されている」と説明する。

 しかし、デジタルコンテンツ市場への期待が高まる中で、「デジタルコンテンツの利用・流通には様々な課題が出てきている」と高石氏。そして、「いつ、どんな時でもきちんとコンテンツを提供できるのか」、「提供先によってフォーマットがバラバラで管理・変換が大変」、「利用者は、多様な端末を持っていてコンテンツが共有できない」、「端末、基盤、コンテンツ事業者が異なるため、利用手続きが煩雑」といった課題を指摘する。

NECのコンテンツ配信サービスの特長

 こうした課題に対して、NECがもつデジタルコンテンツ配信の技術と実績、ノウハウを結集し、今回の「コンテンツ配信クラウドサービス」を提供するという。高石氏は、「当社はミッションクリティカル分野において、24時間365日の稼動を保証する信頼性の高いサービス基盤の構築で多数の実績をもつ。また、放送・新聞などのメディア業界においても、多数の導入実績があり、豊富なコンテンツマネジメントノウハウを有している。さらに、PCから携帯電話、スマートフォン、タブレット端末まで、ビジネス/コンシューマを問わず様々な端末を提供できる技術とノウハウがベースにある。これに加えて、デジタルサイネージ事業において10年以上の実績をもち、国内約2500社、3万5000パネルに様々なコンテンツを配信・管理してきたノウハウを蓄積している」と、NECがデジタルコンテンツ配信サービスを提供することの強みをアピールした。

 「コンテンツ配信クラウドサービス」の提供形態としては、企業内で社員にコンテンツ配信を行う「inB」と、企業が消費者に対しコンテンツ配信を行う「BtoBtoC」の2パターンを用意する。


「コンテンツ配信クラウドサービス」の概要

 「inB」では、社員が利用する作業マニュアルや教育資料などを社内外で使用できる端末に配信するソリューションを提供する。これにより社員は、作業現場や社内教育において、膨大な紙のマニュアルを参照する必要がなくなり、常にデータを最新のものに更新することができる。また、打ち合わせやプレゼンの際には、資料を印刷することなく手元の端末や会議室のディスプレイに表示させることなどが可能。日時を指定した配信や、端末を指定した配信もできる。

 一方、「BtoBtoC」では、企業がサービス事業者として消費者に対しコンテンツ配信サービスを提供する際、そのサービスを実現する配信プラットフォームから端末までをNECが提供し、トータルにサポートする。サービス事業者は、CPとの個別契約やコンテンツの登録・入稿・著作権管理、また、配信先の様々な端末に合わせたコンテンツのフォーマット変換などの作業が不要となり、容易に配信サービスを開始することができる。さらに、端末側でのダウンロード数や閲覧状況、最終アクセス日時などを確認することで、サービスの向上につなげることが可能となっている。


ロードマップと販売目標

 同社では、まず、「inB」サービスを7月末から提供し、今秋には「BtoBtoC」サービスの提供を開始する予定。さらに、将来的には、「NECが消費者に向けて直接デジタルコンテンツ配信サービスを提供する『BtoC』サービスまで事業を拡大していく」(高石氏)考えで、2015年度末には累計1000社へのサービス提供を目標としている。


関連情報
(唐沢 正和)
2011/7/7 06:00