JAIC、建築物確認検査の膨大な手間を軽減するクラウド
日本IBMのクラウドを基盤にサービス開始
国土交通省指定確認検査機関である株式会社J建築検査センター(JAIC)は8日、日本初の建築物確認検査クラウド「建築物確認検査申請支援システム(BOSS:Building certification Order Support System)」を構築し、サービス提供を開始した。
BOSSは、建築物の新築や改築などの際に必要となる着工前の「建築確認」、着工後の「中間検査」、工事完了後の「完了検査」の時間を短縮し、審査状況の見える化を実現するため、一連の建築物確認の申請から適合書発行通知までの処理を支援するクラウド型システム。
従来は必要事項を紙の申請書に記入し、郵送や持参にて最低でも1日かかっていた建築物の確認申請。設計者や工事施工者といった設計者情報、延べ面積や建ぺい率といった建物情報など、100個以上の項目を記入する必要があったほか、工事着工前の設計図による建築確認だけでなく、着工後の中間検査、さらに工事完了後の完了検査と、1件につき複数回の申請が必要なため、申請書の作成は負荷が高く、記入ミスも発生しやすかったという。
BOSSでは、必要事項を過去の入力情報を利用しながらWeb画面上の申請書に入力し、ネットワーク経由で即座に提出できるため、申請書の作成・提出時間が1~2時間程度に短縮されるという。建ぺい率や容積率なども自動で計算してくれるほか、入力チェック機能も備えるため、ページ数が膨大になる大規模な建築物の場合もミスが削減されるという。
また従来、申請は指定確認検査機関や特定行政庁などに郵送するか、持参する必要があり、JAICでは毎日特定の時刻に申請のピークを迎えていた。加えて、月末や週末は通常時の10倍以上の申請があり、申請者は受付まで1時間以上待たなくてはならない状況があった。
BOSSはクラウド上に実現したことで、JAICの支店ごとに受け付けていた申請をどこでも受け付け、どこでも審査できることから、全社の業務平準化や審査・検査のスピード向上も期待できるとしている。
採用されたクラウド基盤は、日本IBMが幕張データセンターから提供するパブリッククラウド「IBM Smart Business Cloud - Enterprise」。同基盤を活用し、ファイナンシャルテクノロジー株式会社が構築した。
今後は、BOSSを全国の指定確認検査機関に提供することで、業界全体の効率化を目指す考え。建築確認申請においては、建築物が建築される区市町村の各条例によりさまざまな制約を受けるが、他機関での利用に向け、区市町村ごと、建築物ごとに適応される条例を明示し注意喚起すると同時に、適切な入力ガイドを表示できるようにする。
また、建築確認とともに依頼されることが多い、「性能評価」「長期有料住宅」「ふらっと35」「瑕疵担保」についても、クラウドサービスに付加していく予定。