ビッグデータ活用の本格普及は2015年ごろから、NRI予測

電力不足も回避するスマートグリッドも実現


 株式会社野村総合研究所(NRI)は24日、2016年度までのビッグデータ活用の進展と、そのインパクトを予測した「ITロードマップ(ビッグデータ編)」を発表した。ハードウェア・ソフトウェア技術の進化により、これまで困難だった複雑で大規模なデータの分析処理が可能となり、今後、企業の競争力の向上や社会問題の解決に役立つことが予想されるという。

 ソーシャルメディア内のテキストデータ、携帯電話・スマートフォンに組み込まれたGPSからの位置情報、時々刻々と生成されるセンサーデータなど、ここ最近のデータ量は数年前とは比べものにならないほど膨大かつ複雑化している。

 昨今、これまでは見捨てるしかなかったこれらのビッグデータを分析することで、新サービスの提供や自社の競争優位につなげたり、社会インフラを高度化しようとする動きが、欧米を中心に盛んになっている。

 この動きの原動力になっているのは、CPUの高性能化/マルチコア化、ディスクやメモリ価格の低下など、ハードウェア面での進化に加えて、膨大なデータを高速・安価に処理できる分散処理フレームワーク「Hadoop」に代表されるソフトウェアの進化だという。

 今後さまざまなシーンでビッグデータの活用が見込まれるが、NRIではそのロードマップを以下のように予想する。

ビッグデータ活用のロードマップ



2011~2012年度:ビッグデータ活用の黎明期

 Googleが提唱した、大規模データを複数の安価なコンピュータ上で高速に分散処理させるプログラミングモデル「MapReduce」と、それをオープンソースとして実装したフレームワーク「Hadoop」に大きな注目が集まっている。

 IBM、HP、EMCなどのITベンダーは2010年から2011年にかけて、相次いでDWH(データウェアハウス)製品を手がける新興ベンダーを買収しているが、これは膨大なデータを高速に分析するマシンが必要だったことに加えて、これらの製品がHadoopをサポートしていたことも大きい。クラウド上でHadoop用のプログラムを比較的容易に開発できるツールなど、Hadoopを巡るエコシステムも急ピッチで拡大している。

 企業においては、WebアクセスログやPOSデータなどの分析処理の効率化に利用されることが考えられる。


2013~2014年度:ビッグデータ活用の発展期

 DWHは、構造化データだけでなく、Hadoopをサポートすることで、ソーシャルメディアなどの非構造化データの処理も可能となる。企業にとっては、自社のWebサイトを訪れた顧客の購買履歴や行動履歴、コンタクトセンターへの問い合わせ履歴などに加えて、ソーシャルメディア上での顧客の声も分析することで、より最適なマーケティングを実施できるようになる。

 一方で、分析対象とするデータも企業内に蓄積された業務データやインターネット上のデータに加えて、スマートグリッドやモノのインターネット(Internet of Things)などの進展により、スマートメーターやRFID、各種センサーから収集される実世界のデータへと拡大する。

 これによって交通渋滞のリアルタイム予測など、新しいサービスの提供が考えられ、より一層、リアルタイム処理(ストリームデータ処理)に対するニーズが高まると予想される。


2015~2016年度:ビッグデータ活用の普及期

 この頃になると、発生したデータを順次データベースなどに蓄積し、蓄積されたデータに対して一括して集計・分析処理を行う従来の「ストック型」データ処理と、データ発生時にメモリ上でリアルタイム処理を行う「フロー型」データ処理の融合が本格化するだろう。

 例えば、各家庭に設置されたスマートメーターから収集した電力消費量データと気象情報など電力消費に関係するデータを、過去データも組み合わせて分析し、リアルタイムの電力需要予測が実現するという。この際、仮に電力不足が想定される場合は、オフピーク時間帯の料金を大幅に割り引くなどのキャンペーンを実施することで、社会全体の電力不足も回避可能になると考えられる。

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(川島 弘之)
2011/5/24 15:48