NEC、仮想デスクトップとクラウド印刷で仮想オフィスを実現「C&Cクラウド・ワークスタイル(仮称)」


 日本電気株式会社(以下NEC)は21日、非接触ICカードを読み取り装置にかざすことで、端末や場所を問わずオフィスと同様の環境で書類作成などが可能となる、仮想デスクトップサービスとクラウド印刷サービスを組み合わせた「C&Cクラウド・ワークスタイル(仮称)」の試作システムを開発したと発表した。

いつでも、どこでも、どんな端末からでも

システムのNEC 新事業推進本部 情報キャリア事業推進部 マネージャ 加藤一器氏

 「C&Cクラウド・ワークスタイル」では、業務データやアプリケーションソフトとともに、仮想デスクトップ、認証システムをクラウド上のサーバーで提供。ユーザーは社員証などの非接触ICカードをリーダーライターにかざすだけで、Windowsログイン画面が表示され、ログインしてOfficeアプリケーションで資料を編集・作成するなど、場所や端末を問わず同じ環境で作業が行える。

 プリンタドライバなどプリンタ制御機能もクラウド上のサーバーに置かれており、ユーザーがドキュメントを印刷すると、印刷待ちデータがクラウド上に保持される。ホテル、空港ラウンジなどに設置された対応読み取り装置付きの複合機に非接触ICカードをかざし、ICカード認証が通ればディスプレイでパスワードを入力するよう促される。パスワード認証が通れば、印刷待ちデータのリストが表示され、選択するだけでプリントアウトが得られる仕組みだ。

 印刷したデータは複合機のメモリーから自動的に消去される。また、読み取り装置のディスプレイで、プレビューを表示できるほか、印刷形式・印刷条件の変更なども可能だ。

 仮想デスクトップにクラウド印刷サービスを組み合わせることにより、機密情報や個人情報などを、データとしても印刷物としても持ち歩く必要がなくなる。セキュリティ面の安全を担保した上で、パソコンだけでなくタブレットやスマートフォンから、外出先でも作業ができる環境を提供する。

「C&Cクラウド・ワークスタイル」システム構成「C&Cクラウド・ワークスタイル」プロトタイプシステムの構成

 

左にある認証用リーダーライターに社員証をかざすと、Windowsログイン画面が表示される。ログインするのはクラウド上のWindowsだ複合機に認証用リーダーライターを装備したパネルコンピュータを取り付け、ホテルや空港などに設置。社員証をかざしてプリントアウトが得られる
複合機のパネルコンピュータのリーダーライターに社員証をかざして認証するICカード(社員証)の認証が通ると、パスワード入力画面が表示される。物理的なキー(社員証)とパスワードの二重認証でセキュリティを担保。印刷が完了すると印刷データは複合機から自動削除される

 

7月から社内トライアルを実施、年内に実用化~「クラウド コンピューティングEXPO春」に出展

 重要情報や個人情報などのデータが入ったノートパソコンや印刷物を紛失することによるリスクがなくなるだけでなく、災害でパソコンなどが故障したりといった場合の重要データが失われるリスクも軽減でき、パンデミックなどで社員が出社できない場合にも在宅勤務で出社時と同様に業務が可能など、非常時の対策にもなることから、こうしたサービスへのニーズは震災をきっかけに、さらに高まっているという。

 NECでは、7月からNEC本社地区および玉川事業場など複数拠点で社内トライアルを実施。また、利用できる機器が多いほどサービスプラットフォームの利便性が高まることから、システムの仕組みを国内外の端末メーカー、プリンタメーカー、通信事業者、サービス事業者など各社に公開。Win-Winとなる形で提携・協力進めていきたいとしている。

 プリンタドライバはクラウドサービス側に置くが、1つの企業でも1社の複合機だけを導入しているケースはむしろ少なく、複数メーカーの複合機やプリンタが設置されていることが多いため、NECではできるだけ多くのプリンタメーカーの協力を得たいとしており、すでに4~5社の複合機プリンタメーカーとは技術検討に入っているという。

 「C&Cクラウド・ワークスタイル」のICカード認証には、ID管理機能、リアルタイム処理機能、セキュリティ機能などを実現するクラウド型認証基盤システム「BitGate」を採用。また、ICカードの読取り装置として、13.56MHz、952-955MHz、2.4GHzの3つの周波数帯、6種類の主要なプロトコルすべてに対応したマルチリーダーライターを開発した。NECによれば、3つの周波数帯、6種の主要プロトコルに対応したリーダーライターは世界初だという。

 通信技術については、3月にサービスを開始した「RFIDケータイ/モバイルクラウドサービス」の構築ノウハウを活用し、3GおよびWiMAXによる閉域型の高速モバイルネットワークを採用、インターネットなどの公衆網を経由しない高セキュリティな通信環境を実現した。

 将来的には顧客ニーズなどにより、NECが2月に発表した非接触型で指紋認証と指静脈認証を同時に行う「非接触型指ハイブリッドスキャナ」の採用なども可能としている。また、通信環境についても、LTEの対応エリア拡大などをみて、LTE対応も検討するという。

 NECでは、今回の試作システムを、5月11日から13日までの3日間、東京ビックサイトで開催する展示会「クラウド コンピューティングEXPO春」に出展。また、「C&Cクラウド・ワークスタイル」システムのデモは、NEC本社ビル1階の「クラウドプラザ」で見ることができる。

NECがこの春発売したAndroidスマートフォン「MEDIAS N-04C」。ピンチインで拡大して文字を修正するなどの編集も十分できるNECのRFID携帯「MC-E05SH」では、認証用リーダー内蔵により、単体でクラウドサービスにログイン、利用できる。写真はファイルを一覧表示した画面

 

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(工藤 ひろえ)
2011/4/22 15:26