IDC Japan、国内ITサービス市場の産業分野別ベンダー競合分析を発表


国内ITサービス市場 主要ベンダーの売上額前年度比成長率に関する産業分野別の分析、2009年度(会計年、出典:IDC Japan)

 IDC Japan株式会社は17日、国内ITサービス市場でのベンダー売り上げを産業分野別に調査し、ベンダーの競合状況についてまとめた結果を発表した。調査した分野は「金融」「製造」「流通」「通信/メディア」「政府/公共」「その他」の6つ。2010年3月期のITサービス売上高でトップ5に入った富士通、NEC、NTTデータ、日立、IBMは、すべての産業分野でトップ10に入ったほか、3つの産業分野ではトップ5を占めたという。

 2010年3月期は、リーマンショックなどによる景気後退局面の影響をもっとも強く受けた1年となり、すべての産業分野で、トップ10ベンダーの過半数が前期からマイナス成長になり、全体でもプラス成長を遂げたのは、金融分野でのIT投資動向の変化をとらえたベンダー、政府/公共で確実に売り上げを伸ばしたベンダーなど、ごく一部にとどまった。

 またトップ5のベンダーでは、金融、政府/公共からの売上高が全体に占める割合が高い傾向が見られ、特に、ベンダーによって違いが見られた金融分野における業績は、全体の業績を大きく左右したことがわかったとのこと。具体的には、地銀向けの共同アウトソーシング需要や、証券/保険などの需要拡大を的確に取り込んだベンダーが業績を伸ばしたという。

 また、市場規模の大きい製造分野は、売上高でトップ10にランクインした全ベンダーが、前年同期比でマイナス成長を記録し、厳しい経済環境を反映する結果になった。ただしその中でも、比較的不況に強いアウトソーシング事業により、減少幅を最小限に抑えるベンダーが見られるなど、マイナス幅に違いが見られたことから、同分野が全体業績に及ぼした影響も大きくなったとしている。

 なお今後、景気の先行き不透明感は依然として継続しているものの、一部の企業では底を打つ兆しが見られている。このことなどから、IDC Japanでは、IT投資の回復は緩やかに進むと予測されているが、各産業分野、各企業によるバラつきは大きく、業績の回復後も2008年以前のようなIT投資に戻ることは考えにくい状況にあると指摘。

 同社のITサービス リサーチアナリスト 植村卓弥氏は「ITサービスベンダーは、短期的には数少ない成長分野や、政府/公共などの堅実なIT投資が見込める分野を確実にとらえることが重要。しかし中長期的な視点に立つと、注力する産業分野についてユーザー企業の成長のドライバーとなり、新たなIT投資需要を自ら作り出すことも必要になる」と、こうした状況を分析している。

関連情報
(石井 一志)
2011/2/17 15:24