日本HP、アプリ優先度付けや階層化が可能な新ハイエンドストレージ


P9500ディスクアレイ

 日本HPは28日、ミッションクリティカル環境向けのハイエンドストレージ「HP StorageWorks P9000ファミリ」を発表した。同ファミリの第一弾製品として、「HP StorageWorks P9500ディスクアレイ(以下、P9500ディスクアレイ)」を同日より発売する。

 P9500ディスクアレイでは、従来の「XPファミリ」で培ったハイエンドのストレージ技術を継承しつつ、性能を50%向上、スペースを30%、消費電力を40%削減。高可用性と高性能を確保しながら、仮想化・自動化、ならびにシンプルな運用に対応した新製品となる。

 ストレージワークス事業本部 製品マーケティング本部 担当マネージャーの諏訪英一郎氏は、「XPファミリの後継として、99.9999%の可用性やBoot Onceなどのノンストップ性能を備え、ハードウェア面で新アーキテクチャを採用して性能を50%向上した」とアピールしている。

外観内部の様子
ストレージワークス事業本部 製品マーケティング本部 担当マネージャーの諏訪英一郎氏

 新機能としては、アプリケーションの処理優先付けQoS機能「APEX(Application Performance Extender)」を搭載した。ホスト/アプリケーションごとにサービスレベルを定義して、個々のI/Oに優先度情報タグを自動的に付加。この優先度に応じてP9500ディスクアレイ自身が必要なリソースを割り当て、最適な処理を実現する。

 諏訪氏によると「ストレージの性能問題は非常に厄介。ホスト上で重要度に応じてCPUやメモリなどのリソースを割り当てても、SAN上で必要な帯域が確保できずボトルネックになったり、ストレージ上のキャッシュやコントローラー、ドライブパスがボトルネックになったりして、設定通りにアプリケーション性能を確保するのは難しい。またサーバーとストレージの管理者が異なり、どちらが対応するかでもめることもある。APEXを使えば、優先度情報タグでホストからストレージまで一貫したQoSを実現し、性能に関する大幅な運用改善が可能となる」という。

 利用イメージとしては、ホストにAPEXソフトを導入。ワークロードごとに要求される最小帯域幅または最大遅延時間を設定。ジョブスケジュールを作成して、動的にQoSをコントロールする。

アプリケーション性能の確保は困難。さまざまなレイヤでボトルネックが生じてしまうAPEXでは優先度情報タグで一貫したQoSを実現

 これに加えて、データ自動階層化管理機能「Smart Tiers」も搭載した。高速SSD(Tier0)、多目的HDD(Tier1)、低コストHDD(Tier2)といった複数の種類のストレージで1つの仮想ボリュームを構成。データをセクションという小さな単位に分割し、その利用頻度に応じて最適なTierのストレージを割り当てる。

 「ストレージ階層化もだいぶ一般的になってきたが、従来の技術はボリューム単位で階層分けするため、粒度はあまり細かくなく、仕分けポリシーの設定やアプリケーション上でのデータ配置設計が難しいという課題を抱えている。階層化のためのデータ移行も管理者がタイミングを決定することが多く、結局は管理者がシステムを深く把握している必要があり、階層化がかえって管理を複雑にするケースもある。この課題を解決する最もシンプルな方法が、すべてのストレージを1つの仮想ボリュームとし、その内部で複数の階層を構成すること。ボリューム単位で階層化するよりも透過的に処理できて、容易な運用、シンプルな管理が実現できる。それがSmart Tiersの大きな特長だ」(同氏)という。

一般的なデータ階層化管理はボリューム単位のため運用管理が大変Smart Tiersの概要。1つの仮想ボリュームを構成することでより透過的なストレージ階層化を実現する
シン・プロビジョニング機能も強化

 さらにシン・プロビジョニング機能も強化した。「ワイド・ストライピング機能」を強化し、プール内でのディスク再利用を実現したほか、複数のディスクでデータ量を平準化する「自動リバランス機能」を強化し、ディスク追加時・削除時でスムーズにプールサイズのリバランスが行えるようになっている。

 このほか、新たな管理ツールの提供で、シンプルな運用を実現。操作手順が簡略化されており、「例えば論理ボリュームの割り当てとマッピングというタスクにおいては、従来43クリック必要だったところを、わずか16クリックに削減している」(同氏)とした。

 環境対応としては、業界標準19型ラックや2.5型HDD/SDDを採用し、最大内蔵ディスク搭載数2048基、最大仮想ストレージ容量255PBを実現しながら、1000ディスク搭載時の設置スペース比で34%減、1コントローラーモジュールシステム最大構成時の消費電力値比で40%減を達成している。

 日本HPでは新製品を「次世代ハイエンド・クラウドストレージ」として紹介。4月に発表した「第2世代HP Integrityサーバー」とともに同社が提唱するミッションクリティカル・クラウド基盤「HP Converged Infrastructure」のプラットフォームとして訴求していく。

 P9500ディスクアレイの最小構成価格は、3280万2000円。

 なお、米HPによる3PAR買収について、「3PARも同様に優れた技術を持っている。今後について現状で話せることはないが、ストレージはいま最も革新が進んでいる分野。そういう意味で大きなシナジーが期待できる」と述べた。

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