電子証拠開示を強力に支援する「Symantec Enterprise Vault」新版
Exchange Onlineのメール保全にも対応
プロダクトマーケティング部 石井明氏 |
e-ディスカバリのワークフロー |
株式会社シマンテックは7日、アーカイブ製品新版「Symantec Enterprise Vault 9.0」と、e-ディスカバリ(電子証拠開示)を強力に支援する新技術「Enterprise Vault Discovery Collector(英語版)」を発表した。前者は9月17日より国内販売を開始し、後者は今後日本語化を検討する予定。
e-ディスカバリとは、訴訟の際などに電子データを証拠として裁判所に提出する、そのための検索・収集を含めた仕組みのこと。日本での推進は遅れているが、米国では「メールの証拠能力は高い」ということが常識となっており、裁判ではe-ディスカバリが義務化されてもいる。
Enterprise Vaultは、このe-ディスカバリも支援するアーカイブソフト。メールサーバーやファイルサーバーなどのデータをアーカイブサーバーへ移動し、企業における情報の保存、管理、検索を容易にする。
新版では、コンテンツソースのプラットフォームを拡充し、「Exchange Server 2010 SP1」「SharePoint Server 2010」「Domino 8.5.1」に対応。ストレージプラットフォームも拡充し、「Symantec FileStore」「Dell DX Object Store」に対応した。
また、クラウド対応として「Microsoft Exchange Online」もサポート。「クラウド上のメールを社内にアーカイブできる。メールをクラウドへ移行した後も、e-ディスカバリやコンプライアンスはオンプレミスで運用することで、ハイブリッドモデルの情報管理を実現している」(プロダクトマーケティング部 石井明氏)。
さらに単に情報を集めて保管するだけでなく、不必要なものは削除する仕組みを備えるのも特徴。アーカイブする際にデータの重複を排除する「Enterprise Vault Discovery Accelerator」オプションを用意し、「70~80%の重複排除を実現する」(石井氏)ほか、企業のポリシーに応じて保管期限切れのデータを削除する機能を搭載している。
牧野総合法律事務所の牧野二郎弁護士 |
この価値に関連して、牧野総合法律事務所の牧野二郎弁護士が「e-ディスカバリとしてメールの証拠能力は高く、裁判所でも頻繁に利用されている。的確なデータがあれば裁判に勝てることも多いが、それを探すのが大変」と裁判の現状に言及。
「メールの収集・提示が必要になった際、米国では弁護士が直接精査し、時には数百人の弁護士がチームを組んで集中的に判別作業をすることもあるが、日本では社内法務スタッフが限られた人員で判別するケースがほとんど。これからは日本でも、電子記録の正確性の確保を大前提に法的対応をしなければならない。特に会社法・金融商品取引法の内部統制の一環として、また免責のための準備として、業務記録が重要となる」とした。
電子データの証拠化という課題 | 企業の法的対応はこうあるべき |
SymantecのEnterprise Vault導入効果 |
実際に、Symantec自身のEnterprise Vault導入事例でも、レビュー対象のデータをおよそ83%に削減し、弁護士によるレビュー費用を約18万5000ドルから約1万4000ドルに削減したという。石井氏はさらに「重複排除の機能により、3万4577件(6213MB)のメールを2689件(457MB)まで削減できた」と、ストレージコストの観点からも不必要なものの削除が重要だと指摘している。
このほか、Symantec Enterprise Vault 9.0では、新技術のEnterprise Vault Discovery Collectorを用意。アーカイブデータのみならず、クライアントPC内の非構造化データやファイル共有でアーカイブ化されていないデータも検索し、収集できる機能。現状は英語版のみだが、日本のニーズを見極めながら日本語化も検討し、「アーカイブに限定されないe-ディスカバリや内部監査を実現する」(石井氏)とのこと。
Enterprise Vault Discovery Collectorの概要 | Microsoft Exchange Onlineにも対応 |
牧野弁護士によれば、「現状、国内には、米国のようにe-ディスカバリを制度化しようという動きはない」という。しかし、「現場では訴訟にあたってのメールの重要性は疑いようもなく、その扱いをどう効率化しようかという水面下でのニーズが確かに存在する」という。シマンテックでは、当面、海外に進出する日本企業の国際訴訟対策としてEnterprise Vaultを訴求しながら、国内訴訟におけるe-ディスカバリの動きに注視していく方針だ。
なお、新版発表に伴い、電子証拠開示支援システム「Lit i View(リット・アイ・ビュー)」を提供する株式会社UBICとも協業。電子証拠の収集から提出までをサポートする同システムの、収集対象にEnterprise Vaultを追加し、訴訟対応ソリューション「UBIC Enterprise eDiscovery Solution」として提供する。