富士通の法人携帯戦略、メール&健康ソリューション披露


富士通の大谷氏

 富士通は、法人向けFOMA端末「F-10B」の発売に伴って、法人市場に向けた取り組みを説明した。説明会では、富士通の法人戦略や法人向け端末の紹介のほか、法人向けのメールソリューションや健康ソリューションのデモなどが披露された。

 登壇した富士通の執行役員常務の大谷信雄氏は、携帯電話市場について、個人向け端末市場がほぼ頭打ちの状況ではあるが、法人市場については発展途上であるとした。パソコン事業も担当する大谷氏は、「ビジネスマンにとってパソコンは、自宅、会社、移動中とすでに複数台所有している状況だが、携帯電話は個人と会社の区分けが曖昧。本当の意味で企業のことを考えた携帯電話があるのではないか」と語った。

 なお富士通では、2008年3月、法人およびビジネスコンシューマーをターゲットとしたWindows Mobile端末「F1100」を投入している。社内の内線に接続できるなど法人需要を見越した製品であったが、大谷氏は「内線設備はコストの問題があり広がらず、端末にはバーコードリーダーがないなど、帯に短したすきに長し、ユーザーのニーズを捉えきれなかった」と総括した。こうした経験を踏まえ富士通では、ハンディターミナルとして活用できる特化型端末の「F-05B」と、低コストで使い勝手を考えた「F-10B」を投入する。

 大谷氏は、法人ユーザーのヒヤリング結果も紹介し、低価格、セキュア、防水、エンターテイメント機能(ワンセグやゲーム、AV機能)非搭載、長期の端末調達が可能、同じ機種で容易な管理といったキーワードを挙げた。個人向けの携帯電話では、春夏商戦と秋冬商戦に大きな山場を迎え、大きく分けると半年ごとに端末が切り替わっていく。法人用途ではこうした短い販売サイクルを敬遠する傾向が顕著で、スタッフが同じ機種を長く使える環境が求められているという。

F-10BF-05B

 こうした要望に応えて開発したのが、「F-10B」だ。エンタメ系の機能を排除し、指紋センサーや遠隔ロック、防水機能などが用意されており、大谷氏は「長く使っていただける安定品質・安定供給。まさにMade in Japanといった製品」(大谷氏)と紹介した。販売サイクルについては「要望次第だが最低1年以上」とのこと。

 また、通常の端末ではカメラキーがある位置に配された通話メモ機能は、企業からの強い要望から搭載されたとのこと。相手の声を録音するだけでなく、自分の声も含め全通話が録音可能で、録音したデータはmicroSDカードに記録されていく(AMR形式)。音声データはパソコンで管理できる。大谷氏はこのほか、通話を聞き取りやすくする「スーパーはっきりボイス3」や、歩数計、活動量計などの機能を紹介した。

 なお、端末コストについては、端末をNTTドコモに卸す立場の富士通から明確なコメントは得られなかった。説明会に出席していたドコモの法人担当者は「法人市場が厳しいと言われる中、思い切った価格、戦略的な価格を設定できた。性能面だけでなくコストパフォーマンスの麺でも満足いただけるものではないか」と語っていた。

メール&健康ソリューション

メールソリューション

 こうした法人向けの端末展開と併せて、富士通では法人向けのメールソリューションと健康ソリューションをスタートさせる。サービス開始時期は、メールソリューションが2011年1月(2010年10月からβ版提供)、健康ソリューションが2010年12月。

 メールソリューションは、会社のメールアドレス宛に届いたメールがセキュアに携帯電話で閲覧できるiアプリ。富士通のネットワークソリューション「FENICS」と連携するサービスで、導入する企業のサーバーに届いたメールは、FENICSセンターをゲートウェイにして携帯電話側に届けられる。インターネット網ではなく閉域網へ接続するサービスとなる。

 メールは、FENICSセンター側で変換され、添付ファイルは全てJPEG形式の画像に置き換えられる。受信したメールはアプリ領域に格納されるため、Webメールのように画面メモで保存できない仕組み。アプリ起動時に指紋センサー(または8桁の暗証番号)で認証するほか、添付ファイルを開く際にも認証がかかる。

 アプリ領域に保存されるため、メールの保存件数は最大150件程度となる。フィルタリング機能を利用して、携帯電話側に届くメールを制限できる。メールはプッシュ配信され、iモードの携帯メールのように着信通知が可能だが、指定のメールのみ通知するといった利用が可能。端末を紛失際は遠隔操作でリセットできる。

 対応する端末は現時点でF-10Bのみだが、指紋センサーを搭載したそのほかの富士通製機種にも対応していく予定。導入費用は1台あたり月額500円で、別途FENICSの費用がかかる。

アプリ起動時に指紋センサーで認証受信メールメニュー
返信画面添付ファイル画像として表示される
健康ソリューション

 健康ソリューションは、端末に搭載された歩数計や活動量計などを連携させて、保健指導などに活かしていくiアプリ。8月10日に個人向けの健康管理サービス「深体創工房」を発表しており、その法人向けサービスとなる。

 体重や血圧、食事などを入力しておくと、歩数や活動量が毎晩自動的にサーバーに送信されて日々の運動量が数値化される。従業員の健康管理の基礎データとして活用が可能で、加入する健康組合から健康指導メールなどが届けられる。富士通社内で検証したところ、体重や腹囲の平均データに大きな変化は見られなかったが、中性脂肪は大幅に減少したという。担当者によれば、健康指導メールでアドバイスが届くため、本人が生活を振り返り、「行動変異」が起こるという。アドバイスは運動科学博士と社内病院医師によって作成したという。

 なお、こちらの端末も当初は「F-10B」のみだが、今後そのほかの富士通製モデルに対応拡大していく予定。

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