富士通の2010年度第1四半期連結決算は16億円の最終黒字、全セグメントが黒字スタート


取締役執行役員専務 CFOの加藤和彦氏

 富士通株式会社は29日、2010年度第1四半期の連結業績を発表した。

 売上高は前年同期比0.3%増の1兆472億円、営業利益は前年同期から471億円改善した100億円の黒字。経常利益は465億円改善した66億円の黒字、四半期純利益も308億円改善して16億円の黒字となった。

 売上高はほぼ前年並みだが、取締役執行役員専務 CFOの加藤和彦氏によれば、「円高で300億円の影響を受けた点が響いた。さらに、昨年度の第2四半期までやっていたHDD事業が、第1四半期には400億円あったため、実質では700億円の増加だった」とのこと。また2008年度と比べた場合は、売上高で1割の減収になっているものの、円高とHDD事業売却の影響を除けば若干の増加が見られるそうで、「経済危機前までは回復してきたといえる」と、好調をアピールする。

 セグメント別の業績では、テクノロジーソリューションの売上高が前年同期比1%減の6657億円で、為替の影響を除けば2%増。営業利益は前年同期から199億円改善した85億円の黒字となった。

 そのうち、サービスは前年同期比2.6%減の5420億円、営業利益は109.9%増の66億円で、売上高は為替の影響を除くと1%の増収。欧米が依然厳しい中でAPACが堅調に推移したほか、年金費用減や、価格低下に対抗するためのコストダウン、リストラなどが寄与して計画を上回ったという。

 システムプラットフォームは、売上高が前年同期比6.3%増の1236億円、営業利益が164億円改善した19億円の黒字。ネットワークプロダクトが国内外で増収になったことに加え、年金費用減、またサーバーやネットワークビジネスにおける、グローバルベースでの開発コストダウンが寄与している。

 このテクノロジーソリューションのプラットフォームにおいては、クラウド事業の伸長は順調だという。加藤氏は「昨年度1年の受注をこの3カ月でとれたくらいで、市場の中ではクラウドは認知されつつある状況。受注が増えてくるとそれなりの規模にはなるだろう」としたほか、事業の割合としては、「SaaSがおおよそ半分で、PaaSが3割、プライベートクラウドが2割」と、概況を説明している。

 ユビキタスソリューションは、売上高が前年同期比8.9%増の2768億円、営業利益が10%減の106億円。個別に見ると、パソコン/携帯電話の売上高が5%増の2027億円、モバイルウェアの売上高が21.5%増の741億円。ビジネスは国内外とも伸長しており、モバイルウェアがアジアを中心に伸びているとのこと。また、営業利益は携帯電話の新機種開発費の増加などによって減益となっているが、計画よりは改善しているという。

 デバイスソリューションは、売上高が前年同期比22.4%増の1585億円、営業利益が221億円改善した60億円の黒字。そのうち、LSIの売上高は前年同期比15.7%の805億円、電子部品が同29.6%の784億円。「LSIはすべての分野で受注が拡大し、第4四半期に不透明感はあるが、ほぼ計画通り。電子部品も、増収効果とコストダウンにより、計画を上回って改善している」(加藤氏)とした。

 全体を総括した加藤氏は「第1四半期は大概良くないため、営業利益ベースでは若干の赤字スタートと見ていたが、すべてのセグメントが計画を上回る改善だった。すべてが黒字スタートなのは、大きなセグメントで見ると2006年以来、サブセグメントでは相当に久しぶりだ。さまざまな改善をやってきて、それが効果を出したのだろう」と述べている。

2010年度上半期の業績予想を修正、減収も営業利益を100億円積み増し

 なお富士通では、2010年度上半期の業績予想を修正している。

 上半期では、売上高は為替の影響で当初予想より200億円の減額となる2兆1800億円に下方修正したが、営業利益はテクノロジーソリューションの改善などを見込み、100億円増の350億円に増額された。

 通期も、売上高は為替レートの影響が500億円分見込まれているものの、逆に、東芝から携帯電話事業を買収することでプラスの影響が見込まれるとのこと。これ以外にも、業績は全般的に改善しているが、「第4四半期で読み切れない部分があり、下期のリスクをヘッジする意味で、売上高、営業利益とも期初計画通り」(加藤氏)とした。

 ここでいうリスクについて加藤氏は、「国内のSEの仕事量については、第1四半期はようやく昨年並みの受注ができたが、第2四半期から先の受注活動が予定通り進むかどうかだ。また、海外市場、特に欧州が厳しく、政府系の商談が停滞状態で、地方と民需を他社と競い合っている状態。一方で、アウトソーシング系のサービスを取り切れないというリスクもないではない」と、システムプラットフォームの状況を説明。

 部品系でも、「第4四半期がもう一つ見えない。第2四半期以降で、これをどこまで確実にものにできるかだ」と述べ、年初計画の達成に向けて、リスクヘッジをしながら確実な手を打っていきたいとしている。

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(石井 一志)
2010/7/30 00:00