日立ソフト、米TerraGo社と提携。「GeoPDFソリューション」を販売


日立ソフトエンジニアリング株式会社 執行役員 久慈正一氏

 日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社は7月27日、米国TerraGo Technologies社とロケーションインテリジェンスビジネスで業務提携すると発表した。第1弾として、地理情報システム(GIS)データや衛星画像をPDFに出力して簡単に利用できるTerraGo社の「GeoPDFソリューション」(英語版)を7月28日より提供開始する。

 GeoPDFのソフトウェアは、GeoPDFを利用するための、Adobe Readerのプラグインソフト「TerraGo Toolbar(TerraGo社サイトで無償配布)」、GeoPDF作成ソフト「TerraGo Publisher for ArcGIS(39万7950円)」、GeoPDF編集ソフト「TerraGo Composer(86万6250円)」の3種がラインナップされる。

 無料のPDFリーダー、Adobe Readerのプラグイン「TerraGo Toolbar」は、災害地で現場担当者が現場の情報をGeoPDFにオフライン環境で埋め込んで、オフィスに戻ってからデータをアップロードしてフィードバックするなどの使い方ができる。

 編集ソフト「TerraGo Composer」は、たとえば災害対策の際に、地方自治体が持つデータと警察が持つデータ、消防が持つデータなど複数の地理空間情報を統合することができる。

日米の地理空間情報分野動向地理空間分野情報での日立ソフトの取り組みロケーションインテリジェンスとは

「潜在需要は2000万人~1億人の市場」久慈執行役員

 日立ソフトエンジニアリング株式会社の久慈正一執行役員は発表会で、現状、GISのユーザーは100~200万人で、うち衛星画像ユーザーは数万人であると説明。しかし、Google Earthなどの地理空間情報を利用する一般ユーザーは2億人以上おり、GISの専門知識なしで地理空間情報をビジネスに活用したいと考えている潜在ユーザーは2000万人から1億人ほどいると日立ソフトでは試算しているという。

 日立ソフトでは1980年代のCADCoreから始まり、HMAP、GISCoreに続き、GeoMationなど地理空間情報ソリューションを手掛けてきているが、今回TerraGo社を提携相手に選んだ理由として、コンセプトが明快で、PDFだが、情報発信は双方向――GISのデータをGIOpafに現場のデータを付加することができる。これをGISのデータにフィードバックすることができる――点を挙げた。

 また、GeoPDFの特長として、以下の5点を挙げた。

1)PDFだから、誰でも簡単に扱える、2)関係者間でデータを共有できる、3)コンパクトだから、現場への持ち出しも容易(GISでは、1枚の写真が500GBくらいと、ほぼDVD1枚になるが、その1/6から1/7くらいに圧縮して持ち出すことができ、利用するのに高価な機材も必要ない)、4)ネットワークがなくてもオフラインの状態で使用できる、5)コメントなどを位置情報(緯度・経度)付きで書き込める。

 久慈執行役員は、「米国では政府関係を中心に、豊富な導入実績がある。危機管理分野ではすでにGeoPDFが活用されており、地震などの対応に使われている」と述べ、「日本でも官公庁からすでに災害対策の分野で引き合いをいただいている」とした。

 今回は英語版の提供になるが、TerraGo社と日立ソフトは提携して国際化版開発を含む包括的な共同開発を行い、2010年10月に日本語版を提供する見込み。以後、中国語版・ロシア語版も2011年1月ごろを目処に順次提供予定だという。

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TerraGo社製品の優位性TerraGo社とのパートナーシップの取り組み今後の展開

「米国FEMAが導入、ハイチ大地震でも利用された」TerraGo社CEO Cobb氏

米国TerraGo Technologies社 社長兼CEO Richard M. Cobb氏

 米国TerraGo Technologies社 社長兼CEO Richard M. Cobb氏は、「世界で40万の組織がプロフェッショナルなレベルの地理空間情報を持っている」と米調査会社ガートナーのレポートによる数字をあげ、「これら40万の組織が抱えているひとつの課題というのは、持っている画像を現場に使ってもらうということ」とした。

 「TerraGo社はこれら地理空間情報をより活用できるようコラボソフトを開発。GeoPDFという形で、地理空間情報をコンパクトに効率的に使えるような形で提供可能にしている」とGeoPDFの意義を説明。

 TerraGoのモバイルやツールバーでは、現場での作業者が情報を活用できるようなソフトを提供しており、GISの知識を持たない人でも容易に扱えるとした。モバイル版は現在、Windows Mobile OS搭載機に対応している。

 TerraGo社は、全世界で1万の顧客をもち、国防、災害対策、電力、石油、ガス、天然資源の管理などに利用されているという。代表的な利用例としてCobb氏は米国FEMA(アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁=Federal Emergency Management Agency of the United States)を挙げた。

 米FEMAは、大災害に対応するアメリカ合衆国政府の政府機関で「さまざまなソースから情報を収集し、迅速に配布しなければならないが、そこでGeoPDFが利用されている」と紹介。具体的には、ハイチ大地震の際、さまざまな言語の多くの国に、現地の情報を提供するのに利用されたという。GeoPDFでは、時間の経過による変化を見せることもできる。

 このほか、米国の地質調査所では、州の機関だけではなく市町村や一般の人に向けても情報を提供しているが、TerraGo導入以前は地図のダウンロード数が月4000だったところ、導入後は月10万と飛躍的に増えたという。

 米TerraGo社は株式非公開だが、急速に伸びており、Cobb氏によれば売上げは現在、1000万ドル(10億円)を若干切る程度だという。「今後は毎年50~100%の成長を見込んでいる」(Cobb氏)。

 なお、日立ソフトはTerraGoのソリューションを10月6日から8日までの3日間にわたって東京ビックサイト西ホールで開催される「危機管理産業展2010」に出展する。

GeoPDFでは、エリアを指定して距離を測ったり、面積を計算したりできるほか、ポイントした地点に注釈を入れたり、その地点の写真などを入れることもできる鉄道路線、道路、建物、下水道などの情報をそれぞれレイヤーで管理できる
Windows Mobile機でTerraGo Mobileを利用した画面。現地の情報収集を目的としており、地点をポイントしてテキスト・写真・音声・動画などの情報を付加できるこのビルでは全員無事、といった安否情報を収集し、オフィスに戻って付加した情報をフィードバックすることができる
関連情報
(工藤 ひろえ)
2010/7/27 19:35