「インフラをクラウド化する」、日本IBMが新サーバー「zEnterprise」を発表


「IBM zEnterprise」。左側の筐体が「z196」、右側の筐体が「zBX」
専務執行役員 システム製品事業担当の薮下真平氏

 日本アイ・ビー・エム株式会社(日本IBM)は23日、新たなエンタープライズクラスのサーバーシステム「IBM zEnterprise」を発表した。メインフレームとオープン系システムを一体化させ、1台の論理的なサーバーとして見せることで、企業ユーザーの管理負荷軽減を強力に支援するという。

 専務執行役員 システム製品事業担当の藪下真平氏は、「トランザクション/データベース、アナリティック、ビジネスアプリケーション、Web・コラボレーションといった4つのワークロードを、1台ですべて最適化できるサーバー」と、このシステムを紹介。「当社としても、久しぶりの大きなコンピュータテクノロジーへの挑戦ではないか。全社を挙げた取り組み、発表としてお客さまに紹介していきたい」との意気込みを話す。

 薮下氏にそう評されたzEnterpriseは、新型メインフレーム「IBM zEnterprise 196(以下、z196)」に、POWER 7やx86ブレードサーバーを搭載した「IBM zEnterprise BladeCenter Extension(以下、zBX)」拡張ユニットを、Gigabit Ethernetで接続して構成する。

 その上で、管理ソフトウェア「IBM zEnterprise Unified Resource Manager(以下、URM)」により、両システムを論理的な1つのサーバーとして見せ、メインフレーム系、オープン系の資源を仮想リソースプールとして運用できるようにした。

 この製品を提供する背景には、「基幹システムに求められる基礎要件が同じなら、1つに集めて一括管理し、あらかじめ設定されたポリシーに従って、それに適したシステムへ自動配分することで、運用負荷を劇的に削減できる」(システム製品事業 システムz事業部長 朝海孝氏)という考え方がある。

 今回、日本IBMでは、zEnterpriseによってハードウェア、ファームウェア、仮想化といた層のリソースプール化を実現したが、朝海氏はこうした流れを「インフラのクラウド化」と表現。アプリケーション、ミドルウェア、OSといったソフトウェアリソースを管理するTivoliとあわせて、「全体としてお客さまの管理体系を支援する」とした。

システム製品事業 システムz事業部長 朝海孝氏zEnterpriseでは、システムの構成要素のうち、プラットフォーム管理、ハードウェア管理の部分を仮想化する
データベースの照会処理が劇的に向上するという

 また今回は、zEnterpriseの価値を具現化するソリューションとして、「IBM Smart Analytics Optimizer」が発表されている。これは、z/OS上で稼働する「DB2」データベースの照会性能を劇的に向上させるソフトウェアで、z196にzBXを接続した上でこれを導入すると、zBXに搭載された複数のx86ブレードサーバーのCPUが、データベースへの照会命令を並列処理。z196に照会データを送信する仕組みを提供する。

 朝海氏によれば、「データベースにどういうトランザクションが来るかを見て、z196の資源を使うのか、オープンシステムを使うのかを動的に考えて配分することが可能。また、既存のデータ管理の仕組みをそのまま使えるほか、すでにDB2を使われているユーザーであれば、アプリケーションの修正は不要」といったメリットを提供可能だ。

 ベータテストでは、最大数百倍の性能向上が見られ、「うまく適用することにより、新しい将来予見型のビジネスアナリティクスも実現できるだろう」とのこと。今後は、XML処理のリアルタイム解析を可能にするような機能も提供を予定しており、SOAソリューションなどでの活用が期待されている。

メインフレーム単体でも性能が大幅に強化されている

 なお、z196単体でも、クロック周波が4.4GHzから5.2GHzへ、最大コア数が80コアから96コアへ拡大するなど、z10から大幅な機能向上を実現。より多くのシステムを統合できるようになっている。「メインフレーム系では40%、Linuxでは60%パフォーマンスが向上し、いろいろな分散系サーバーが稼働しているお客さまであれば、z/Linux統合でメリットが出る。同時にノード集約によって、TCOで大きなメリットが出せるだろう」(朝海氏)。

 主な販売対象は、多数のサーバーを運用している大型データセンターや、既存の「System z」ユーザー、ミッションクリティカルへのニーズが高いユーザーなど。日本IBMでは、業種・業務向けのソリューションなどをSIerと提供することを視野に入れて、製品の展開を進める計画だ。

 提供開始は、z196が9月10日から、zBXならびにSmart Analytics Optimizerが11月19日から。z196については、すでに、複数の顧客と商談が進んでいるとのことで、日本IBMでは、年内に20~30の顧客への導入を見込んでいる。

関連情報
(石井 一志)
2010/7/23 16:17