ノベル、クラウド対応のアイデンティティ管理製品「IDM4」

クラウド戦略を強力に推進するノベルの狙い


営業本部 SEグループ シニアマネージャーの山田昌透氏

 ノベル株式会社は25日、アイデンティティ管理製品の新版「Novell Identity Manager 4 Advanced Edition(以下、IDM4)」を発表した。9月より提供する予定。

 IDMは、各システム上のアカウント情報を自動連携させ、統合管理するソフト。ユーザー登録、アクセス権の付与、ID・パスワードの発行、無効アカウントの排除などをリアルタイムに行い、アイデンティティの整合性を保つ。

アイデンティティ&セキュリティポートフォリオIDM4の全体像

 新版では、「Intelligent」「Secure」「Cloud Ready」をキーワードに大幅な機能強化を図った。

 「Intelligent」と「Secure」では、操作性と利便性の向上として、レポートの自動化(スケジューリング、ポリシーベースのデータ収集、レポートの自動配信)、レポート機能の充実(標準提供レポートの強化、現状レポートと過去のステータスレポート)、コンプライアンス対応の強化(最新情報と過去データの追跡)を実現。

 ビジネス対応コンテンツの充実も図り、PCIDSS、SOX、HIPPAなどのポリシー部品をライブラリ化したコンテンツパックを順次提供していく。「例えば、PCIDSSコンテンツパックにより、初期パスワードがそのまま利用されていないか、IDMで機械的に確認できる」(営業本部 SEグループ シニアマネージャーの山田昌透氏)という。

 このほか、「ロール・マッピング・アドミニストレータ」機能を新搭載。企業でのロール(役割)・認可情報を基にシステムのメンバーを自動的に作成し、アクセス権をドラッグ&ドロップで直感的に割り当てられる。このようにIDMでは、複数のシステム環境にあるアカウント情報を連携しつつ、自動かつリアルタイムにアップデートするため、一般の突き合わせ作業に起因するセキュリティリスクをなくし安全性を確保する必要がある。そこでIDM 4では、さらにセキュリティレベルを高めるため、連携前のソースデータを修正する分析機能「アナライザ」も新搭載している。

ロール・マッピング・アドミニストレータの概要。ロール(役割)・認可情報を基にシステムのメンバーを自動的に作成する画面例

 さらに、アクセス権と職務の割り当て状況を容易に把握できる「アサインメント・ダッシュボード」や、リソース・ロール・申請・承認などの操作を集約した「ワーク・ダッシュボード」も新搭載した。

 一方、今回の目玉となる「Cloud Ready」では、新たにSalesforce.comやGoogle Appsの連携用ドライバを搭載したほか、Microsoft SharePointやSAP ERPとの連携を強化。クラウド上のシステムであっても社内と同レベルで一貫して、アカウント情報を管理可能となった。また、1ドライバで1000インスタントに連携できる「Fan-Outドライバ」を実装。大規模環境への対応を強化した。

Salesforce.comやGoogle Appsの連携用ドライバを搭載Salesforce.com用ドライバの概要画面例

 参考価格は、6000円(税別)/ユーザーから。


クラウド戦略を強力に推し進めるノベル

代表取締役社長の徳永信二氏
今後のビジネス戦略

 ノベルはいま、クラウド環境を包括支援する企業に生まれ変わろうとしている。今回のIDM4でも「Cloud Ready」が目玉の特徴となっているが、それだけにとどまらず、「インテリジェント・ワークロード・マネジメント(IWM)」なるコンセプトを打ち出し、包括的なクラウド戦略を推し進めているのだ。

 IWMは主にクラウド事業者を対象に、安全なクラウド環境の構築・管理を支援する戦略で、「SUSE Linux」をはじめ、「アイデンティティ管理」「アクセス管理」「コンプライアンス管理」「セキュリティ管理」「仮想化とワークロード管理」「エンドポイント管理」「ビジネスサービス管理」などの広範な製品ポートフォリオを、クラウド環境構築における「Build(迅速な構築)」「Secure(安全性)」「Manage(効率的な管理)」「Measure(サービス管理)」という各ステップにマッピングし、一貫した方針で提供するというもの。

 その一環として、米Verizonや南アVodacom Businessとの協業により、IDMによる「IDaaS(Identity as a Service)」サービスなども展開。米国では、クラウドセキュリティの確立を進めるCloud Security Allianceとともに、クラウド事業者のためにアイデンティティ管理の参照モデル、教育および認定の基準を定めるプログラム「Trusted Security Certification」を策定するなど、クラウド市場での存在感を高めている。

 それは「クラウド市場が急速に拡大すると予測される一方で、セキュリティへの不安が大きな懸念となっている」(宮部氏)ことに対する同社の決意であり、クラウド事業者をトータル支援しようとするIWMコンセプトからは、今後、同社がクラウドに包括的に取り組んでいく姿勢がうかがえる。

 代表取締役社長の徳永信二氏は、今後のビジネス戦略として「パートナーシップの強化」「お客さまのクラウド環境への拡張支援」「クラウド事業者との新ビジネスの提携」を挙げる。主にはハイブリッドクラウド環境のセキュリティ強化や、国内でのIDaaSビジネスの展開などに尽力する方針のようだ。

 同時に、オラクルに買収され製品カタログが大幅に縮小されるサンからの移行プログラムも展開。サンのアイデンティティ管理製品の永久ライセンスを持つユーザーを対象に、同等ソリューションへのアップグレードを支援するプログラムで、具体的には「Sun Identity Manager」から「Novell Identity Manager/Novell Roles Based Provisioning Module/Novell Enterprise Integration Module」、「Sun Open SSO」から「Novell Access Manager」、「Sun Directory Server EE」から「Novell eDirectory」へ、メンテナンス費用のみ(ライセンス費用無償)で交換する。

 クラウド戦略とともに打ち出すことで、「IDM4」を一気に拡販する意向を見せている。

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