ニュース
日立、高温水冷却を可能にするGPU冷却用コールドプレートを開発 AIの利用拡大に伴うデータセンターの電力消費を削減
2026年10月22日 06:15
株式会社日立製作所(以下、日立)は21日、GPU冷却用コールドプレートを開発したと発表した。
従来よりも高い温度の冷却液でも、GPUを効率的に冷却できるとともに、外気との温度差を生かして、効率よく放熱ができることから、冷却に必要な電力を約30%削減できるという。
これにより、データセンターの電力消費量低減に貢献。冷却システムの統合制御と組み合わせるほか、ポンプ、チラー、配管を含む冷却設備全体の高性能化を進めることで、同社のデジタルサービス「HMAX Data Center」の効果を引き出す冷却技術のひとつとして発展させていくとした。
日立 研究開発グループ グリーン&コネクティブイノベーションセンタ 主管研究長の中津欣也氏は、「コールドプレートの性能向上は、データセンター全体の効率を高めるための鍵になる。高温水冷却によって、冷却に必要なさまざまな電力を低減できる。2026年9月に発表したHMAX Data Centerと連携することで、冷却効率の最大化を図る。高効率なデータセンターの提供により、デジタルインフラ全体の高効率化を進めていく」と述べた。
従来のコールドプレートは、GPU面に沿って冷却液を流す構造であるのに対して、日立が試作したコールドプレートは、GPUの発熱部に向かって厚み方向に冷却液を流すことができる独自の「U字トンネル流路構造」を採用しているのが特徴。数千本の微細な流路を並列に配置することで、GPUの近傍から大量の熱を素早く回収できるという。
1本あたりの流路を短くし、冷却液が流路内で受ける摩擦を抑えることにより、圧力損失を低減。冷却液は、発熱部で熱を吸収した後でU字型に折り返して出口へ流れるため、冷たい冷却液と温まった冷却液が混ざらずに、高い冷却性能を維持できる。
具体的には、新鮮な冷却液がコールドプレートに入ると、上段にある入力チャンバーで流速や圧力を一定に制御。U字トンネル流路を通ってGPU近傍に分散して流れ、GPUの熱を吸収する。温まった冷却液は、ほかの冷却液と混ざらずに、出力チャンバーに排出。これが冷却液出口に至り、コールドプレートの外に出るという仕組みだ。
U字トンネル流路構造により、限られたコールドプレートサイズでも、流路断面積を確保できるため、冷却液を流しやすくしながら、高い冷却性能と、低圧力損失の両立を実現できたという。
また、薄い銀箔を積層する構造により、流路径や長さを変更しやすく、さまざまな仕様にあわせて最適化しやすいというメリットも強調した。
日立の中津主管研究長は、「AIの拡大で、データセンターで使用する電力が急増しており、2030年には約2.3倍となる945TWhにまで拡大する。電力を作り、供給する必要もあるが、日立は効率よく電力を使用し、減らすことも重要であると考えた。高効率なエネルギー利用技術でデータセンターインフラを支えていく」とコメント。
その上で、「データセンターの電力消費の内訳を見ると、サーバーが全体の44%を占めているのに次いで、クーリングが32%を占めており、クーリングにはエネルギーの削減余地があることに着目した。一般的に、外気よりも低い温度の冷却液で冷やすためには、大量の電力が必要だが、冷却液とGPUの温度差を小さくでき、これを制御できれば、外気に熱が逃がしやすくいる。コールドプレートの高性能化ができれば、高温水冷却が可能であると考えた」とする。
従来は、フィンの面積の拡大やフィンを長くすること、冷却液との温度差を持たせるといった要素によって冷却液の利用効率を高めてきたが、あらゆる従来方式が冷却液を効率よく使えていない課題があったという。例えば、Skived Fin方式では、左から右へと水平方向に冷却液を流すが、流路前半では冷却液の温度が低いものの、流路後半では温度が上昇し、利用効率が下がってしまっていた。つまり、温まった冷却液が混ざってしまう構造となっており、冷却水を効率よく利用できていなかったというわけだ。
「GPUは数cm角であり、限られたGPUの上部空間において冷却液の効率利用を高めるには、さらなる改良が必要であった。日立は、スーパーコンピュータから自動車のインバーターまで、さまざまなコールドプレートの開発を経験してきた。ここで得られたノウハウをデータセンター向けに適用した。U字トンネル流路構造では、冷たい冷却液を数千本の微細なU字トンネル流路で分配して、GPUの上面すべてに届けることができる。しかも、温まった冷却液とは混ざらない構造とし、局所的に温度差をつくりだして放熱性能を向上させるなど、すべての冷却液を効率よく使うことができる」と説明した。
また、開発したコールドプレートの銅箔積層の製造に関しては、「大量生産が可能なプリント基板と同じ製造プロセスである。先に穴を空けてそれを積層していくことになる。機械加工が入らず、プリント基板を作るように大量に作ることができ、コストも性能も改善しやすい。エッチングにより40~50枚の銅箔を積層する」という。
コールドプレートの試作品を用いた実測では、冷却液流量4L/minの条件で、熱抵抗を0.011K/Wにまで下げることに成功した。
「0.011K/Wという数値は、業界における目標として設定されているものであり、従来の2分の1の熱抵抗となっている。冷却液とGPUの温度差を半分に減らすことができる。冷却液の温度を高めた状態でもGPUを所定の温度以下に冷却し、高い温度の冷却液を排出して、電気を使わずに外気に熱を伝えることができる」という。
また、圧力損失は27.6kPaとなり、従来構造に対して、同じ冷却動力でより高い冷却性能が得られることを確認したとのこと。
外気を積極的に活用して放熱できる期間を、年間を通じて拡大でき、東京などの代表的な都市の外気温度条件を用いて年間のチラー稼働率の変化を試算した結果、GPUから回収した熱を外気へ放出するために必要な冷却電力を30%削減できる見込みを得たという。
なお、今後は実機への搭載機会があれば、それを活用した評価も進めたいとしている。












