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ウイングアーク1st、AI活用の“3つの壁”を克服するデータ基盤「DataTetra」

 ウイングアーク1st株式会社は20日、企業のAI利用を前提に設計した新たなデータ活用基盤ソリューション「DataTetra(データテトラ)」を発表した。企業が保有するデータをAIで活用する際に課題となる、データ量の増加に伴うデータ処理の複雑化、AIを利用する都度発生するコストの増大、分断化された特定のサービスへの依存といった課題に対応したデータ活用基盤となっている。

 当初は、ウイングアークの既存製品「Dr.Sum」「MotionBoard」などのユーザーをターゲットに販売を進め、今後3年で30億円のビジネスとすることを目指す。

ユーザー主導型のデータ活用基盤「DataTetra」

 ウイングアーク1stの取締役 執行役員CTO 島澤甲氏は、DataTetraを開発した背景として、「取りあえず何でもAIに対応すればいいという話ではない。社内でAIを活用していく中で、いくつかの壁があることを認識するようになった。今回のサービスではそれを解消できるような設計とした」と説明した。

ウイングアーク1st株式会社 取締役 執行役員CTO 島澤甲氏

 島澤取締役が指摘した壁とは、1)コンテキストの腐敗、2)安定性、3)コストの3点だ。

 「コンテキストの腐敗といわれても、なかなかピンと来ないかもしれないが、長期でAIを運用していると、だんだん応答品質が下がっていく経験をされた方がいると思う。これは、現在存在するすべてのAIに見られる特徴――トランスフォーマー型のモデルの基本的な特徴になっている。こういう環境でAIを使っていくと、なかなかAIの使い勝手が安定しない。蓄積したデータがあまりに多くなりすぎると応答性能が下がっていくので、1番最初はものすごくいい感じだったが、だんだん期待値を下回ってくる事態となってくる」と、島澤取締役は1)の問題を説明した。

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 2)安定性については、「AIはしばしば落ちるし、応答品質も提供する側の都合で変わってくる。だから、先週に比べ今週は頭が悪いといったケースがあったりする。企業が基盤にAIを組み込む時、AIの応答品質に対しどのくらい期待を寄せられるかは非常に重要なテーマになってきている。まず、フロンティアモデルを使う場合、AIの環境がある程度不安定である場合、それをどう自分たちの業務に組み込むのか考慮することが求められていると我々は考えている」(島澤取締役)という。

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 3)コストについては、「私たちも今年大きく直面した壁だった」と島澤取締役は話す。

 「AIは、何もマネジメントしないと予想以上に増えていく。当社内でもこれが起きて、来年のAI予算を試算すると今年の20倍必要といったケースもあった。AIをデータアクセスにからめた製品は世の中にたくさんあるが、例えば、自社データを全部クラウドに預けると、自社データを処理する度にチャージ料がかかることになるが、AIの場合も、すべての作業をAIで解くことにすると、アクセスするごとに料金がかかることになり、コストが増大していく」。

企業のAI利用:データ利用の構造

 こうした課題を解決するため、「コストが収束し、運用時にAIコストがかからないデータ基盤」として新規開発したのがDataTetraだという。

 AIとの共生・データ主権・データ活用基盤の3点をポイントとして開発を進めており、AI技術を単に既存のデータ基盤へ追加するのではなく、AIの利用を前提に、企業が保有するデータの統合・管理・意味付け・分析・業務活用までを一体的に支援することを目指す。

 「我々は、データ活用によってお客さまの企業価値を向上し、組織の成長を導くことを実現するためにプロダクト、サービスを提供してきた。製品の導入実績は1万2000社を超え、大規模なデータ活用基盤の案件を我々がお客さまと一緒にやらせていただくケースが増えてきている。DataTetraは、我々が20年以上培ってきたもののすべてを集結させた統合型のモデルとなっている」(執行役員CMO 事業戦略本部長 久我温紀氏)。

ウイングアーク1st株式会社 執行役員CMO 事業戦略本部長 久我温紀氏

 特徴としては、AIとの共生を挙げた。企業固有のデータとノウハウをAIで活用するためのデータ基盤として利用できるが、このために、企業が保有する構造化・非構造化データを整備し、AIがデータの意味や利用条件を参照できる環境を構築する。また、AIによる処理が必要な領域と、従来のプログラムによる処理が適した領域を組み合わせることで、AIへの過度な依存を抑え、効率的なデータ処理実現を目指すとした。

 また、特定の技術やサービスに依存しない選択肢を確保した。DWH(データウェアハウス)やレイクハウスなどのデータ資産を活用しながら、データ活用環境を構築できるが、企業が自社のシステム環境や運用方針に応じて技術・サービスを選択できる構成とし、特定のベンダーへの依存を抑えるという。

 加えて、データの統合、管理、意味付け、アプリケーション・AIエージェントの構築、共有・活用などを一体的に支援可能。IT部門によるデータの統制と、業務部門による柔軟なデータ活用を両立し、AIを日々の意思決定や業務プロセスに組み込める環境を提供する。

DataTetraの特長

 なおウイングアーク1stでは、分析・AI・BIツール間で、メトリクスやセマンティックモデルを共通化するYAML/JSONベースのベンダー中立標準仕様「Apache Ossie」のプログラムに、日本企業としては初めて参加した。

 「このプログラムの中で、セマンティクスやオントロジーなどの標準化が進められているが、この規格に準拠した形で我々はDataTetraを提供する。そのため、お客さまが柔軟に移行性を担保できることが特徴となる。ほかのサービスと連携する際もやりやすくなるという利点がある」(久我執行役員)。

Apache Ossieに日本から初参加

 提供価格は月額100万円から。使用量に応じた従量制ではなく、キャパシティ課金体系とし、コストの予見性を担保した。

サポート/カスタマーサクセス担当者のレスポンスが早い点にメリットを感じた

 今回の説明会では、ウイングアーク1stのデータ分析ツールやAI製品を導入するユーザーとして、ヤンマー建機が登壇した。

 同社では生産ラインを効率的に稼働するために、2人のベテラン担当者がEXCELで毎日3~4時間かけてその日の生産順序を決定してきた。そこにウイングアーク1stの協力を得て、生成AIとRPA、「dejiren AI」、「Dr.Sum」、「MotionBoard re:Act」を導入。生産計画を作成する時間が約半分の時間まで短縮することに成功した。今後は、さらなる時間短縮とノウハウ伝達などを進めていく予定だという。

計画作成時間が半減、変更対応と後進育成に時間を使えるように

 データ分析ツールに関しては、外資系をはじめさまざまなベンダーの製品がある中でウイングアーク1stの製品を導入した理由を次のように説明した。

 「我々はIT部門ではない。市民開発をするためには、サポートのレスポンス、サポートの言語が重要。MotionBoard、Dr.Sumを使い始めたが、サポートやカスタマーサクセスの担当者のレスポンスが早い。外資系製品の場合、『ここまでしかやりません』『本国に聞かないと答えられない』と言われることがあり、時間がかかってしまう」(ヤンマー建機株式会社 経営戦略部 イノベーション推進部 部長 田中重信氏)。

 なお、DataTetraの導入については今後検討するとのことだ。

ヤンマー建機株式会社 経営戦略部 イノベーション推進部 部長 田中 重信氏