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NEC、BluStellarの2030年度目標を1.3兆円へ上方修正 「BluStellar 2」でAXインテグレーターへの転換を加速

 日本電気株式会社(以下、NEC)は24日、BluStellarの新たな取り組みについて説明。2030年度のBluStellarの売上収益目標を1兆3000億円、調整後営業利益率25%に上方修正した。2025年11月に発表した売上収益1兆円に対して、1.3倍となる大幅な上方修正となる。また、調整後営業利益率も20%から5ポイント増やすことになる。

BluStellar 目標値

 NEC 執行役副社長 兼 COOの吉崎敏文氏は、「BluStellarは、NECのDX変革の集大成として発表したものであったが、2026年度からは、BluStellar 2として新たなステージに入る。価値創出のスピードと確実性を高めていくことになる」とした。

 また、「AIの激変ぶりはもう少し低く見ており、これまでのBluStellarの見通しのなかには反映していなかった。AIによるインパクトや環境の変化を盛り込むべきであると考えており、今回は十分な確信を持ってこれらを織り込んだ。DXによる利益率の改善、構造的な社内コストの削減により利益率も高めることができる」と語った。

 NECでは5月12日に次期中期経営計画を発表する予定であり、今回、BluStellarに関する中期目標を、それに先駆けて発表したのは異例ともいえる。次期中計の成長エンジンとなるBluStellarにかけるNECの強い思いが伝ってくる。

NEC 執行役副社長 兼 COOの吉崎敏文氏

 2025年度までは、取り組みを「DX進化期」としていたのに対して、BluStellar 2と位置づける2026年度からは「AI変革移行期」とし、約30のBluStellar ScenarioのすべてをAX(AIトランスフォーメーション)化するとともに、100を超える機能をAI Platform Serviceとして提供する。また、DX人材からAI人材へのシフトを開始するとともに、グローバルアライアンスを強化するという。

BluStellarは、社会とお客さまのAIトランスフォーメーション(AX)を加速するインテグレーターへ

 吉崎副社長は、「BluStellar 2によって、社会とお客さまのAXを加速するインテグレーターとしての役割を果たすことになる」とし、「AIによるフィードバックループにより、価値をさらに拡大する。AXコンサル、高速なサービス開発、自律的な保守・運用、シナリオ創出といったBluStellar ScenarioのすべてのフェーズにAIを組み込み、継続的なScenarioの強化を図る」と話した。

 シナリオのAXによる新たな顧客価値創出を通じた「経営の深化」、AXコンサルや高速なサービス開発により、顧客の価値実現のスピード向上を図る「競争力の進化」、NECグループへのAX拡大により、全国の顧客が利用可能になる「適用範囲の拡大」という3つの顧客価値創出に取り組むという。

「約30のシナリオのAX」と「AI Platform Service」によるフィードバックループで価値を拡大

 また、その先にある「AI変革定着期」をBluStellar 3とし、AIネイティブ社会に向けた新たなシナリオ展開、実世界と連携して自律進化するAIの活用や、すべての人材をAX人材とすることなどを目指す。

 なお、BluStellar 2は今後2~3年で完遂させる予定であり、今回、打ち出した売上高1兆3000億円という数値は、BluStellar 3で達成する目標値になる。また、1兆3000億円は、国内における売上目標であり、BluStellarの海外展開を開始するのにあわせて、目標値はさらに上振れる可能性がある。

 2025年度第3四半期累計では、BluStellarの売上構成比は、国内ITサービスの32%と約3分の1を占めているが、「50%という構成比は十分達成できる数値だと考えている」との見方も示した。

ビジネスモデル:シナリオのAX化とAIコンサル・高速開発の推進

 BluStellar 2に関しては、「ビジネスモデル」、「テクノロジー」、「組織」の3つの観点から説明した。

 「ビジネスモデル」では、BluStellar ScenarioのAXによる新たな価値創出が鍵になる。

 NEC 執行役Corporate EVPの木村哲彦氏は、「BluStellar Scenarioは、お客さまの課題解決におけるDXの成功ノウハウを型化したものであり、これをAXすることになる」と発言。NECがクライアントゼロとして自ら実践してきた、40を超える業務にAIを実装するとともに、NECグループ各社でAXを実践する。また、この実績を約30のBluStellar Scenarioに反映し、AIによるフィードバックループを回すことで、量と質を高めるという。

NEC自身がグループ全体でAXを実践へ
NEC 執行役Corporate EVPの木村哲彦氏

 一例として挙げたのが、Corporate Transformation Scenarioである。AIが高速な分析、提案、意思決定支援を行い、AIを前提とした経営変革を実現するもので、人中心の業務プロセスから、AI中心の業務プロセスへと転換。AIエージェントが相互連携した環境へとシフトすることができるという。また、自動的に価値の拡大を進めていくことができることから、人は経営戦略の意思決定に注力できるようになるとも述べた。NECでの実践によると、管理会計業務工数を約60%削減でき、意思決定とアクションの迅速化につながっているという。

 木村氏は、「BluStellar ScenarioをAXすることで、お客さまは、NECで実績があるプロセスを最短、最速で、価値の創出につなげることができる」とした。

シナリオのAXによるお客さまの新しい価値創出の例――Corporate Transformation Scenario

 AXコンサルの強化では、高速なサービス開発により、顧客の価値実現のスピードを向上できるメリットを挙げた。

 迅速で、動的な経営戦略策定を支援するために、NECのデザインシンキングのノウハウと、AIナレッジ化したNECの変革実績を組み合わせたHuman AI Collaborationを提供。経営戦略策定から実装までの道筋を圧倒的なスピードで具現化する。複数の経営シナリオや事業計画を策定し、人は意思決定と合意形成に注力できる。顧客事例では、経営戦略策定の約80%をAIで実行でき、3~6カ月かかっていたものが、わずか2時間に短縮したという。

 また、AIとデータを活用した高速実装を実現。企業内に蓄積しているデータをAIレディなデータに変換して、価値創出にまでつなげる支援を行う。「NECには200社以上のベストプラクティスと、1000以上のKey Business Question(KBQ)をもとにして、型化したものがある。これによって、顧客課題を迅速に明確化し、必要機能を高速実装する」という。

 NECでは、AIコンサルに関わる新たな組織を立ち上げており、約250人の高度専門人材を集約。さらに、アビームコンサルティングとの連携により、NECグループ全体で約1万人のコンサルタントを通じてAXを加速していく考えを示した。

AIとデータにより、NECの「テクノロジーコンサル」とABeamの「経営コンサル」を高度化・高速化し、お客さまのAX加速にコミット

 AIによる高速開発サービスでは、仕様駆動開発の実装に取り組んでいることに触れながら、「AI処理のコンポーネントを最適化することで、大規模システムや既存システムの開発にも対応できる。これを型化し、ワークロードを削減することで、速さと安定性を担保する。社内実践の成果をさらに磨き、その成果をお客さまに提供していく」という。

 社内実践では、6500時間のシステム開発工数を53時間に短縮。モダナイゼーションにおけるリバースエンジニアリングにかかる時間を1万2000時間から6時間に劇的に短縮している。

AIを活用した新しいサービス開発プロセスにより、お客さまが新しいサービスを実装するスピードを飛躍的に加速

 また、NECグループ各社では、全国の自治体や企業向けに、70のBluStellarオファリングの提供を新たに開始。オファリングのシナリオ化とAXを、グループ全体で加速。移行から導入、業務再設計、保守、マネージドサービスまで、エンドトゥエンドでサービスを強化していくという。

 NESICホールディングスによる300以上の保守拠点を通じて、24時間365日の対応が可能なAIサービスを提供。AXパートナーとの連携により、NECの強みであるAIやセキュリティと、パートナーの強みを掛け合わせた新たな共創価値の創出に努めるという。

 なお、現在、BluStellarパートナープログラムの加入社数は127社に達し、共創活動(共創プログラム)への参画企業は33社に達している。

国内NECグループ各社で70のオファリングを提供

テクノロジー:フルスタックの「AI Platform Service」を投入

 「テクノロジー」では、新たにAI Platform Serviceを発表した。

 NEC 執行役Corporate EVP 兼 CAIO(チーフAIオフィサー)の山田昭雄氏は、「AI Platform Serviceは、AI活用に必要な最先端のAI機能群を、AI as a Serviceとしてフルスタックでお客さまに提供するものになる。40以上のNECの独自機能に加えて、パートナーから提供される最先端のAI技術など、100以上のサービス機能をNECがインテグレートして、ワンストップの形で提供する。さまざまなクラウドやオンプレミスへの実装に対応している。AI Platform Serviceを活用することで、個々の機能を意識することなく、最新の技術に裏付けられた、安全で安心なシステム運用が可能になる」と説明した。

NEC 執行役Corporate EVP 兼 CAIO(チーフAIオフィサー)の山田昭雄氏

 AI Platform Serviceは、NECが発表したインテリジェントハイブリッドクラウド上でも動作し、堅牢性が求められるシステムにおいても、AIを最大限活用することができるという。

 AI Platform ServiceのAIモデル/連携プロトコルレイヤでは、高度な業務への対応と運用コストの低減を両立。NECが開発した国産LLMであるcotomiで蓄積した構築ノウハウを活用することで、小規模なAIインフラでも運用可能なコンパクトサイズに凝縮した専門領域に特化したAIモデルを提供。リーズナブルなコストで、複雑な専門業務を遂行できるという。

AI活用を支える機能群を集約し、AI Platform Serviceとして一体で提供

 これらの取り組みにあわせて、NECでは、2028年度に自社保有するAIモデル活用インフラを3倍に拡充する計画を明らかにした。

 AIガバナンス・セキュリティレイヤでは、グローバル標準技術とともに、NECグループが持つセキュリティ技術やガバナンス技術、ネットワーク制御技術を加えることで、垂直統合型のガバナンスを実現する。

 「業務を自律的に推進するAIエージェントでは、ハルシネーションや意図しない情報漏えいなどの課題が、より深刻になるが、AI Platform Serviceでは垂直統合型のガバナンスをパッケージ化して提供することができ、これからの課題に対応する。国ごとや企業ごとの独自規則を実装できるカスタムガードレール機能や、人によってAIの動作の検証や追跡を行える解釈性の付与、ハルシネーションの自動修正機能などを提供する。また、NECが創業時からのビジネスとしているネットワークの強みも、AI Platform Serviceのなかで生かされている。相互接続されたエージェントが、効率的に安全に稼働するためのエージェントネットワーク制御機能も含まれる」とした。

グローバル標準技術とともに、NECグループのセキュリティ・ガバナンス技術とネットワーク制御技術を加え、垂直統合型ガバナンスを実現

 また、AI Platform Serviceは今後も進化する計画であることを示し、「AI Platform Serviceの進化を支えるのが、NECが世界各地に展開している研究所が作り出す最新のAI技術である」と位置づけた。

 ここでは、継続的な経営変化を支えるために、QAシステムが、業務特化型エージェントに進化し、さらに自律学習型エージェントへと進化することや、ユーザーのAI利用傾向に基づき、AI自らが学習を補強して、使えば使うほど賢くなる自律学習型システムへと進化することを指摘した。

 さらに、デジタルワークスペースにとどまることなく、実世界にも適用可能なフィジカルAIへの発展や、それを支えるために、利用者のオリジナルデータを適切に取り込むための自律学習型モデリングやソブリン性の付与、ガバナンス機能の拡充を進めるためのガードレールの自己最適化などを通じて、実世界とAIが相互に作用し、自律的かつ高速に改善ループを回す世界の構築につなげることができるという。

より高度な課題解決をサポートするため、最新技術を継続的に進化

組織:研究・ビジネスの一体化推進とAnthropicとの戦略的提携

 「組織」では、研究開発とビジネスの一体組織をさらに進化させ、製品化や事業化の速度向上。圧倒的なスピードで市場に投入することができる点を強調した。

 神奈川県川崎市に新設したNEC Innovation Parkには、研究者、エンジニア、データサイエンティストなど、約4000人が集結。組織や専門性の壁を越えて、社内外での共創を促進し、顧客のAXをリードする体制を整えたという。

 また、ITサービス事業と社会インフラ事業が、緊密に連携しながらセグメントアプローチを強化。AX人材へのリスキリングに向けて、人材育成プログラムであるBluStellar Academyを活用する考えも示した。

 BluStellar Academyは、これまでに約600社・約6万名が受講してきたが、これを全面的にリニューアルし、これまでは計画固定型の人材育成メニューを提供してきたものを、BluStellar 2にあわせて、AIネイティブ化に向けた組織変革や人材育成に至るまでをカバー。企業の組織変革のすべてのフェーズにおいて、独自のAIエージェントを活用して伴走する仕組みへと進化させる。

約600社・約6万名へ向けて展開した「BluStellar Academy」全面リニューアル

 NECの吉崎副社長は、「AIネイティブの社会を前提とした最終ゴールを設定して、変革の状況に応じた動的な評価や、一人ひとりに最適化した育成メニューも提供する。これにより、組織変革サイクルを実現する。お客さまのDX人材の育成、AI Nativeな組織づくりを実現し、日本の競争力向上に貢献したい」と述べた。

 また、NECの吉崎副社長は、すでに発表しているAnthropicとの提携についても説明。「日本企業では初となるグローバルパートナーシップを締結した。3週間という短期間で決定したものであり、相互にメリットがあると考えている」とした。

 提携では、Claudeを活用して、データドリブン経営にも寄与するソリューションを開発するほか、金融、製造、自治体といった領域において、日本固有の法規制に準拠した高品質で高セキュリティな製品・サービスの開発を促進する。また、Claude CodeをNECグループ3万人に展開し、国内最大規模のAXエンジニア体制を構築する。

 吉崎副社長は、「クライアントゼロの実践として、社内業務でClaudeを活用し、開発業務の変革を加速させる。今回の提携では、Anthropicのテクノロジーだけでなく、カルチャーに関してもインパクトを得ている。AIネイティブ企業のカルチャーを学び、それもお客さまに対する価値として提供したい」と語った。

 ビデオメッセージを寄せたAnthropicのポール・スミスCCOは、「日本の企業と協力し、日本で事業を展開していくことが重要だと考え、2025年秋に、アジア初となる東京オフィスを開設した。その点でも、NECとのパートナーシップは極めて重要である。AIがどれほど信頼されるかは、それを市場に送り出すパートナーの信頼度にかかっている。NECは100年以上にわたり、日本国内の企業や公的機関、そして世界中で信頼を勝ち得てきた。日本において、NECほど信頼されているパートナーはない。Claude Codeが、NECグループの従業員3万人に導入される。また、金融や製造、サイバーセキュリティなど、最も要求の厳しい分野のお客さま向けにAIエージェントを構築していくことになる」と述べた。

ビデオメッセージを寄せたAnthropicのポール・スミスCCO

 なお、AnthropicのMythosの活用に関しては、吉崎副社長が質問に答える形で回答。「直接的な回答は差し控えるが、Anthropicとの協業のなかには新たな技術の活用が含まれており、セキュリティも入っている」と述べるにとどめた。

Anthropic社と日本企業で初となるグローバルパートナーシップを締結

人が人間性を十分に発揮するためにAIを生かす

 今回の説明会では、NECが「AI Native Company」のコンセプトを掲げたことにも触れた。

 吉崎副社長は、「いま求められているのは、経営、事業、組織を組み替えることである。NECが重視しているのはAIを前提に、自らを絶えずアップデートすることと、AIを主役にするのではなく、人が人間性を十分に発揮するためにAIを生かすことである。NEC自身が変わることで、社会を動かし続け、人間性を十分に発揮できる未来を、AIとともに支え、社会を動かし続ける会社となる」と宣言した。

 さらに、「AIによって産業構造は劇的に変化する。ハードウェアやデータセンターも成長するが、AIプラットフォームやAIアプリケーションはさらに成長する。AIネイティブな社会においては、新たな事業機会が次々と創出される。また、AIの進化は価値創出の前提そのものを変え、従来のやり方では成り立たない局面を増やしていくことになる。AIは、一部の業務や技術が置き換わる話とはとらえていない。プロセスそのものが変わってくる。AIサービスの需要拡大は、NECにとって新たな事業価値を提供する機会が広がる。社会や業務の現実を深く理解した上で、新しいやり方にチャレンジする実行力が企業の価値を大きく左右する。これを前提として、BluStellarを次のステージに進めていくことになる」と位置づけた。

 そして、「NECは、AIを提供する会社ではなく、AIによってお客さまの価値を変え、サービスを提供する会社に変えていく」と述べた。