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AIが顧客サポートでの即時解決ニーズを拡大、「初回で解決できない企業から顧客は離れる」――ZendeskのCXトレンド調査

 株式会社Zendeskは28日、顧客体験(CX)に関する年次調査「CXトレンドレポート」2026年版について説明会を開催した。同レポートは今回が8年目となり、日本を含む世界22ヶ国で1万1000人以上の消費者やCXリーダーらが調査に参加した。回答者の約75%が経営管理職で、約25%が現場のリーダーまたはサポート担当者だった。

 2025年7月にZendeskの代表執行役社長に就任した森太郎氏は、就任以降に見られた傾向として、「2024年は日本でAI導入企業はまだ少なかったが、2025年には検証から実装、稼働へと踏み出す企業が大きく増えた」と話す。

 また、ユーザーとサポート担当者の双方がシンプルさを求めている点にも触れ、「過去のやり取りを何度も説明させられる複雑な体験は誰も望んでいない」と指摘。「複数チャネルのデータを一元管理し、スムーズに対応できる環境が求められており、それを最新のAI機能がサポートできるようになっている」とした。

Zendesk 代表執行役社長 森太郎氏

 こうした中、今回のレポートで森氏が強調するのが、AIが文脈を理解し自律的に判断する「コンテクスチュアル・インテリジェンス」の重要性だ。森氏は「AI、データ、人間の理解をリアルタイムで組み合わせ、場の空気を読んで判断する能力こそが企業の競争力の源泉になる」とした。

 調査では、過去1年のAI投資に対し「プラスの投資対効果があった」と回答した日本のCXリーダーが71%に達しているという。グローバルの90%には及ばないものの、「日本でもAIが例外的な取り組みではなく、日常業務の一部として浸透しつつあることの表れだ」と森氏は述べた。

トレンド1:メモリーリッチAIが真のパーソナライズを実現する鍵に

 今回の調査による主要トレンドについては、Zendesk CXアドバイザリーの望月智行氏が解説した。1つ目のトレンドは、メモリーリッチAIが真のパーソナライズを実現する鍵になるという点だ。

Zendesk CXアドバイザリー 望月智行氏

 メモリーリッチAIとは、過去の行動や好みを記憶し、チャネルをまたいで文脈を維持するAIのこと。望月氏によると、「グローバルでは67%、日本でも61%の消費者が、過去のやり取りを踏まえた個別最適なサポートを求めている」という。

 また日本では、67%の消費者が「どの担当者でも過去のやり取りに容易にアクセスできるべき」と回答し、69%の消費者が「同じ説明を繰り返すことに強いストレスを感じる」と回答した。さらに、73%のCXリーダーが、「真にパーソナライズされたジャーニーを構築するためにメモリーリッチAIは重要」と考えており、望月氏は「継続的で文脈を維持したAIが求められている」と述べた。

トレンド1:メモリーリッチAIへの投資が真のパーソナライズを実現する鍵に

トレンド2:AI搭載のセルフサービス型サポートが消費者の即時解決ニーズを拡大

 2つ目のトレンドは、AIによるサポートが普及したことで、自ら素早く解決したいという消費者の声が高まっているという点だ。世界のCXリーダーの85%、日本でも81%が、「初回で解決できない企業から顧客は離れる」と回答しているという。

 また、日本では消費者の82%が「商品やサービスを選ぶ際、迅速な対応と正確な問題解決をしてくれる企業を優先する」と回答しており、71%が「AIによる24時間年中無休のカスタマーサポートを期待する」と回答。この割合は世界平均とあまり変わらないものの、「人と話すこと」と「迅速な問題解決」のどちらを重視する消費者が多いかをサポート担当者に質問したところ、日本では「迅速な問題解決」を求める人の割合が「人と話すこと」を選んだ人の1.8倍と、グローバルの1.3倍と比較して大幅に高い結果だったことから、「日本では時間に対するプレッシャーが世界より大きい」と望月氏は分析している。

トレンド2:AI搭載のセルフサービス型サポートが消費者の即時解決ニーズを拡大

トレンド3:マルチモーダルサポートでチャネルをまたぐ体験をひとつに

 テキスト・画像・音声・動画を統合して処理するマルチモーダルAIへの期待も高まっている。日本ではサポート担当者の76%が「次のAIの波はマルチモーダルエージェントだ」と認識しており、グローバルの69%を上回った。

 一方、CXリーダーの理解は遅れ気味だという。「マルチモーダルAIが、テキストのみでは表現しづらい複雑な診断を人間に代わって判断し、自動化できる」と考える日本のCXリーダーは64%と、グローバルより20ポイント低い結果だった。特に日本は音声AIへの評価が低く、「音声AIがCXを大きく進化させる段階に達している」と考える消費者は58%で、グローバルの83%より大幅に低かった。

 ただし、日本はカスタマーサポートでの電話利用率が51%と、世界平均の34%を大きく上回っている。このことから望月氏は、「日本の消費者は、過去の性能が十分でない音声AIの印象が強く残っていることに加え、企業側も従来のサポート手段を減らすことなくデジタル化を進めてきたため、このような結果につながったと考えられる」としている。

トレンド3:マルチモーダルサポートでチャネルをまたぐ体験をひとつに

トレンド4:プロンプトベース分析が切り拓くAI時代のCX指標と意思決定

 自然言語でAIに分析を指示するプロンプトベース分析について、望月氏は「プロンプトベース分析によって、よりタイムリーに業務を改善し、分析とインサイトを企業経営に活用することが、従業員の手で可能になる」と話す。ただし、今後12ヶ月以内におけるプロンプトベース分析の導入意向が日本では58%と、グローバルの86%に比べて大きく遅れていることがわかった。

 プロンプトベース分析に関する具体的な数値としては、「プロンプトベース分析によって数秒でインサイトを得られる」と回答した日本のCXリーダーは64%(グローバルでは82%)で、「従業員が自らデータを検索できることで意思決定が民主化される」と考える日本のCXリーダーは61%(グローバルでは81%)、「AIがすでにデータと分析の改善に寄与している」と回答した日本のCXリーダーは68%(グローバルでは87%)と、日本はいずれも世界平均を大きく下回っている。

 この結果について望月氏は、「電話中心のコールセンターからデジタル主体への移行が海外に比べて遅れている。また、複数チャネルのデータが別々に管理され、チャネルの最適化が進んでいない。さらには、専任アナリストが少なく、日常的な分析や、分析に基づいた意思決定までできているケースが少ないことが背景にある」と指摘している。

トレンド4:プロンプトベース分析が切り拓くAI時代のCX指標と意思決定

トレンド5:AIの判断理由と透明性に対する消費者の要求の高まり

 今回の調査では、日本の消費者の92%が、AIの判断に対する明確な説明を期待していることがわかった。また、日本のCXリーダーの75%が、「今後2年以内に、顧客接点で利用されるAIにおいて透明性は譲れない条件になる」と回答している。

 しかし、AIが理由を示すことを「非常に重要」と考える日本のCXリーダーはわずか33%にとどまり、グローバルの65%との差が大きいことを望月氏は指摘。「日本ではAIに重要な判断を任せる段階に至っていない」と付け加えた。

トレンド5:AIの判断理由と透明性に対する消費者の要求の高まり

 最後に森氏は、「企業規模にかかわらず、顧客の声を経営に生かす重要性は高まる。顧客体験をより一層重視する流れは確実に強まる」と主張。また、Zendeskが注力する領域としてコンテクスチュアル・インテリジェンスを挙げ、「文脈を理解し知識と結びつけることが、シームレスなCX実現の大きな一歩になる」と述べた。

 日本法人としては、「ROIを実現するシステム構築を支援しつつ、アナログなプロセスが残るコンタクトセンター領域でAIとマルチモーダル対応を強化し、日本企業と伴走していく」(森氏)とした。