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NECとIFSが協業、「IFS Cloud Kaname」を展開――国内完結型クラウドで重要インフラのDXを加速
2026年1月19日 06:00
日本電気株式会社(以下、NEC)とスウェーデンIFS AB(以下、IFS)は16日、日本市場における協業について発表。国内データセンターを活用したIFS Cloud向けクラウド基盤の構築と、日本市場向けマネージドサービスである「IFS Cloud Kaname」を新たに展開するとともに、産業用AIサービスの共同開発などを行う。
戦略的協業による新サービスの提供では、製造業や航空宇宙、エネルギー、交通輸送、公共インフラなど、日本の重要基幹インフラを支える資本集約型産業の顧客に対して、サプライチェーン管理や設備資産管理、現場サービス管理など、基幹業務のモダナイゼーションとDXを促進するほか、顧客が製品とサービスを融合させ、新たな収益源を創出する「サービタイゼーション」の実現にも貢献するという。サービス提供は、2026年度中に開始する計画であり、BluStellar Scenarioで進めている業種ごとの「型化」の第1弾になるという。
NECの森田隆之社長兼CEOは、「日本は世界に比べてモダナイゼーションに出遅れている。これは、製造業や重要インフラの領域において、セキュリティ水準への安心感が得られなかったことが要因だった」と前置き。
「IFSとのこれまでの協業はオンプレミスで展開してきた。今回の協業によって、IFSの環境を、安全にクラウド移行することが可能になり、システムの進化を自動的に取り込み、同時に、データや運用、技術の主権を日本に持ちながら、セキュアな環境を実現できる。つまり、日本の経済安全保障のさまざまな条件をクリアすることを保証し、安心して製造業や重要インフラにおけるモダナイゼーションを進めることができ、DXを享受できる。NECでは、2025年に『.jpを守る』ことを打ち出したが、これを実現するものになる」と述べた。
さらに、「NECは、22年前にIFSとの協業を発表しており、今回が2回目となる。クラウドという新たな環境と、新しい経済安全保障の枠組みの中で協業することで、引き続き、日本の製造業と重要インフラを守ることになる」とした。
また、IFSのマーク・マファットCEOは、「NECが培ってきた日本での知見や技術を活用しながら、製造業や重要インフラの顧客が持つミッションクリティカルな環境に、IFS Cloud Kanameを導入できることを誇りに思う。さらに、法律にのっとった適切な環境で利用できる点も特徴である。日本の新たな成長戦略の実現にも貢献できるだろう。日本の成長を継続的にサポートしていく。単なるパートナーシップではなく、長期的に日本の顧客を支援し、NECとの関係が100年以上、続くようにしたい」と語った。
IFSは、グローバルで数多くのERPの導入実績を持ち、NECとは約30年にわたるパートナーシップがあるという。日本では、鉄鋼、化学、部品メーカーなど、200社以上にIFS製品を導入してきた。今回の新たな協業により、日本の基幹産業が直面する課題に対応し、AIを活用したDXの基盤となる基幹システムへとモダナイゼーションを促進することができるとしている。
協業で打ち出した3つの取り組み
今回の協業では、3つの取り組みを打ち出している。
ひとつめは、国内完結型のクラウドインフラと、新たなマネージドサービス「IFS Cloud Kaname」の展開である。
IFSのクラウド基盤を国内に構築し、日本国内でデータの保管、処理、バックアップを行い、日本の法律やコンプライアンスの枠組みに基づいて運用と管理ができる環境を実現することで、経済安全保障およびデータガバナンスに対応するサービスとして提供する。
ユーザー企業やパートナー企業は、セキュリティやデータガバナンスを懸念することなく、日本市場向けに最適化されたIFS Cloudのマネージドサービスを活用し、イノベーションやDXを加速させることができるという。同サービスは、まずは東日本エリアのデータセンターで運用を開始したあとに、西日本エリアのデータセンターを活用して冗長化する。また、Microsoft Azure上に構築するという。
NEC 執行役Corporate SEVP兼CDOの吉崎敏文氏は、「重要基幹インフラ領域においては、レガシーシステムからの脱却が進まず、生産性が上がらないという課題や、セキュリティ対策への課題、技術者不足の課題などに直面している。今回の協業では、基幹業務システムにおいて、真のモダナイゼーションを実現することを目指している。ERP、EAM、FSMで世界的な実績を持つIFSと、NECが持つ深い知見と技術力を融合させることができる。これは、重要インフラ領域のモダナイゼーションにおいて、最強の組み合わせとなる。日本では、2026年6月に経済安全保障推進法の改正が行われる予定であり、それに対応していく必要がある。今回の協業により、日本国籍を持つNECがサービスを運用することで、新たな規制にも対応したセキュアな環境が実現できる」とした。
また、IFSジャパンの大熊裕幸社長は、「Kanameの名称通りに強い基盤を作ることを目指す。Kanameは、経済安全保障を意識したブランドでもある。重要インフラの14分野、戦略投資の17分野の顧客を視野に入れて取り組むことになる」と語る。
さらに「データ主権を日本の中で展開でき、安心して利用できる。また、インシデントも日本の中で対応し、責任の所在も明確にする。そして、エンタープライズレベルのセキュリティおよびコンプライアンスを実現し、規制が厳しい業界にも対応できる。日本での規制が変わったときにも、迅速にサービスに組み込むことができる。クラウドの活用レベルをさらに高みに上げたい。また、多くのパートナーにも開放していく考えである」などと述べた。
2つめは、「クライアントゼロによる共創および検証を通じたIFSクラウドサービスの高度化」だ。
日本市場向けIFSクラウドサービス「IFS Cloud Kaname」の共同開発を進める一方、NECは、自社を0番目の顧客とする「クライアントゼロ」として、自社およびグループ会社で開発、検証を段階的に進めることになる。
NECグループにおいて、サプライチェーン管理や現場のDX、資産投資計画などの領域での導入効果や活用可能性を検証するとともに、現場で得た生きた知見をNECの独自アセットとして整備し、IFS Cloudの標準機能と組み合わせて提供する。
また、これらの成果を、成功への最短ルートとしてフレームワーク化し、顧客のモダナイゼーションを安全、安心に推進することも盛り込んでいる。
NECは、IFSのソリューションをBluStellar Scenarioとして提供する予定だという。
NECの吉崎CDOは、「NECグループは、IFSのサービスを、資産管理や保守管理などにも自ら利用し、経験を積んできた。この取り組みも継続的に進める」と述べた。
3つめは、「AIサービスの共同開発とサービス拡充」である。
IFSのAIサービス「IFS.ai」や、AIエージェントプラットフォーム「IFS Loops」に、NECの最先端AI技術を組み合わせることで、産業用AIサービスの共同開発やサービス拡充、日本およびグローバル市場への展開を進める。
特に、これまで熟練者の経験と勘に頼ってきたサプライチェーンにおける納期や数量の交渉、調整といった自動化が不可能とされてきた領域に、NECの自動交渉AIを適用することを明らかにした。
これらのAIサービスにより、社内業務プロセスだけでなく、企業間のグローバルサプライチェーンのDXを加速し、人とAIの共創によるイノベーションを実現する。
吉崎CDOは、「IFSはあらゆるプロセスにAIを組み込むことを発表している。NECは自社開発したLLMであるcotomiに加えて、AIエージェントの開発を進めている。これを組み合わせて全世界に展開することになる」とした。
今回の協業をきっかけに、BluStellarの事業拡大にも積極的に乗り出す考えで、NECの吉崎CDOは、「ERPを中心とした、いまのIFSの延長線上でビジネスを行うのではなく、保守部品、在庫管理、サプライチェーンなどでの新たな顧客を獲得する一方、鉄道をはじめとして、対象となる業種を増やしながら、現在の顧客数と同等規模の新規顧客を増やしたい。BlueStellaのビジネスにおいても、大きなポーションを占めることになる。業界ごとに価値のあるリソースを、面で展開していくことになる」と発言。
NEC製造ソリューション事業部門長の河合哲也氏は、「NECは、国内製造業向けSIerとしては、一番手グループにはいるが1位ではない。ここでは年間1500億円から1800億円の事業規模となっている。だが、IFSの新サービスを活用することで、NECは、圧倒的なナンバーワンのポジションを目指していく」と、積極的な事業拡大に意欲を見せた。









