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日立、基幹システムの安定性を維持しながら段階的なマイクロサービス化を可能とする新サービスを提供

 株式会社日立製作所(以下、日立)は19日、金融・交通・電力といった社会インフラを支える基幹システムの安定性を維持しながら、オンライントランザクション処理(OLTP)を行う既存アプリケーションのモダナイズを加速する新サービス「Hitachi Microservices Platform - Paxos Commit Transaction Orchestrator(以下、HMP-PCTO)」を、10月23日に提供開始すると発表した。

 日立では、近年、クラウドを活用して基幹システムのモダナイズに取り組む企業が増えているが、リアルタイムな金融取引などに利用されるOLTP(Online Transaction Processing)に、クラウドネイティブ技術の一つであるマイクロサービスを適用することは技術的な難易度が高く、モダナイズの障壁となっていたと説明。こうした課題に対して、マイクロサービスのOLTPの一貫性を確保するHMP-PCTOを提供し、レガシーアプリケーション資産とクラウドネイティブ技術が混在する、ハイブリッドクラウド環境の信頼性を強化していく。

 これにより、大規模なOLTPであっても、小規模な処理ごとに段階的なマイクロサービス化が可能となり、基幹システムの安定性を維持しながらモダナイズを加速し、柔軟な業務改善を早期に実現する。また、社会環境や顧客ニーズの変化に対応する、新たな業務サービスの立ち上げも迅速化し、競争力の向上を可能にする。

基幹システムのオンライントランザクション処理のモダナイズ

 リアルタイムな金融取引などに使われるOLTPでは、ACID(Atomicity:不可分性、Consistency:一貫性、Isolation:独立性、Durability:耐久性)を伴うデータ更新の信頼性が非常に重要で、レガシーシステムではトランザクション制御の専用製品などで機能を実現している。しかし、マイクロサービスでは、アプリケーション開発者がトランザクション処理の業務ロジックだけでなく、更新の信頼性も検討する必要があり、その難しさがモダナイズの障壁となっている。

 HMP-PCTOでは、クラウド環境での通信分断に耐えられる信頼性のあるトランザクション制御機能を実現する。既存のミッションクリティカルなOLTP資産の一部を、マイクロサービスに切り出した移行段階においても、システム全体のトランザクションの一貫性を確保し、基幹システムの安定性を維持する。

 既存OLTPシステムに多く残るCOBOLなどのアプリケーション資産を、言語変換なしにマイクロサービス化することで、小規模で段階的なマイクロサービスの適用を促す。レガシー資産をJavaに一括変換するようなモダナイズ手法と比較して、業務サービス改善の効果が早期に得られ、同時に、安全かつ着実にモダナイズを進められる。また、モダナイズの構想策定から環境構築・運用まで、日立の専門チームによる支援にも対応する。

 例えば、既存の金融取引とポイントサービスを連携したフィンテックサービスを立ち上げる場合には、トランザクションの一貫性が必要になる場合がある。こうした既存業務サービスのAPIと新たに開発する業務サービスの連携に、HMP-PCTOを利用することで、プログラムのコードが複雑になりがちなトランザクション制御のコーディングが不要となり、開発が容易となる。これにより、安定した業務サービスを迅速に立ち上げられる。また、開発者がトランザクションを実装する方法を学習し、検証できるよう、HMP-PCTOフリー版の提供も予定する。

 さらに、「アセット活用開発支援ソリューション」やIT人財育成の支援メニューと組み合わせることで、業務サービス開発の内製化など、顧客のデジタル変革支援にも対応する。

 HMP-PCTOは、日立のas a Service型ITプラットフォーム「EverFlex from Hitachi」の一つとして提供する。日立は今後、生成AIによるレガシーアプリケーションのノウハウの継承など、基幹システムのモダナイズの課題を解決し、顧客の持続的な成長に貢献していくとしている。