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NTTドコモビジネスがNaaSビジネスを強化、拠点間接続サービスの新機能とIoT向け「docomo business SIGN」を発表

 NTTドコモビジネス株式会社(旧称:NTTコミュニケーションズ)は、クラウドのような柔軟な形態で利用できるネットワークサービス「NaaS(Network as a Service)」について、セキュリティ関連の新機能と新サービスを9月26日に発表した。

NTTドコモビジネスのNaaSの新機能と新サービス

 まず、企業の拠点間接続向けのNaaSサービス「docomo business RINK」において、新機能「WANセキュリティ」を9月30日より提供開始する。PCなどのエンドポイントによらず、通信サービス側で脅威検知やふるまい検知、フローコレクターなどの機能を提供するものだ。脅威情報共有の機能も2026年に提供開始予定。

 WANセキュリティは、docomo business RINKの中の機能として、追加する形でWebポータルから申し込める。初期費用は無料。利用料金は、docomo business RINK自体と同様に分単位の課金で、金額は要問い合わせ。ただし、発表時点で、ワイヤレスアクセスで脅威検知(検知履歴3カ月保管プラン)を利用した場合の1拠点あたりの月額上限値が2600円からという金額が示されている。

「docomo business RINK」の新機能「WANセキュリティ」
WANセキュリティの価格設定

 また、新サービスとして、セキュリティ機能を標準搭載したIoT向けNaaSサービス「docomo business SIGN」を12月に提供開始する。IoT向けモバイル回線をベースに、セキュリティ機能を含めIoTシステム導入に必要なネットワーク機能を一体的に提供するもの。豊富な機能ラインアップから利用側が組み合わせて利用できるほか、典型的な組み合わせや設定をあらかじめ定めたテンプレートも用意されており、複雑な設計や設定作業を軽減するようになっている。料金は正式に発表されていないが、低容量の場合、月数百円になるという。

新サービス「docomo business SIGN」

 9月26日に開催された記者説明会において、NTTドコモビジネス株式会社の藤嶋久氏(常務執行役員 プラットフォームサービス本部 クラウド&ネットワークサービス部長)が、NaaS全般およびWANセキュリティサービスについて説明。docomo business SIGNについては、NTTドコモビジネス株式会社の小嶺一雄氏(執行役員 プラットフォームサービス本部 5G&IoTサービス部長)が説明した。

NTTドコモビジネス株式会社の藤嶋久氏(常務執行役員 プラットフォームサービス本部 クラウド&ネットワークサービス部長)
NTTドコモビジネス株式会社の小嶺一雄氏(執行役員 プラットフォームサービス本部 5G&IoTサービス部長)

クラウドのように柔軟に利用できるNaaS(Network as a Service)

 NaaSについて藤嶋氏は、「シンプルに説明すると『クラウド化されたネットワーク』」と表現した。

 背景として、企業のIT環境構築において、事業展開の加速や、どこでも働けるような働き方の多様化、クラウド利用の拡大、サイバー攻撃の高度化が起きている一方でIT人材が不足しているという課題がある。

 NaaSは、こうした課題に対応するものだと藤嶋氏は説明した。具体的なメリットとして、煩雑な手続きなしにWebポータルやAPIで申し込みが完結する「オンデマンド」、1分単位で使った分だけ支払う「サブスクリプション」、さまざまな機能の個別調達が不要で専門家がいなくても利用できる「統合的なICT機能」の3つを同氏は挙げた。

 そのうえで、NTTドコモビジネスでは、企業向けのICTサービスで提供してきた多様な技術と豊富な実績をNaaSに取り込んでいると説明した。

 なお、NTTドコモビジネスのNaaSのラインアップとしては、2023年に発表された企業の拠点間接続向けの「docomo business RINK」と、今回発表されたIoT向けの「docomo business SIGN」、9月に発表されたIOWN APN専用線による「docomo business APN Plus powered by IOWN」がある。

NaaSのメリット:オンデマンド
NaaSのメリット:サブスクリプション
NaaSのメリット:統合的なICT機能
NTTドコモビジネスのNaaSのラインアップ

通信回線でセキュリティを検知し遮断まで一元管理する「WANセキュリティ」

 この企業の拠点間接続向けのdocomo business RINKにおいて、サイバー攻撃の高度化や、守るべき対象の分散化によって、複雑化するセキュリティリスクに柔軟に対応できるセキュアなNaaSが必要になっていると藤嶋氏は言う。

 そこで今回、docomo business RINKの新機能として発表されたのが「WANセキュリティ」(9月30日提供開始)だ。これは、通信サービスを通る通信をまるごと監視することで、インターネット通信の監視・検知・遮断まで一元管理するもの。

 WANセキュリティの機能としては、危険な宛先との通信を感知・遮断する「脅威検知」、普段と異なるふるまいを検知する「ふるまい検知」、通信ログを長期保存する「フローコレクター」、企業間で脅威情報を共有する「脅威情報共有」、WANセキュリティに関する相談を受け付ける「セキュリティヘルプデスク」の5つがある。このうち「ふるまい検知」は12月の提供開始予定(9月に試行版を提供開始)、「脅威情報共有」は2026年の提供開始予定となっている。

 例えば脅威が検知されると、利用企業にはアラートメールで通知が届き、Webポータルで内容を確認して、その場で即時に遮断できる。

 申し込みもWebポータルからオンデマンドで可能。コスト面でも、個別に導入するよりリーズナブルになるという。

 WANセキュリティについては先行トライアルを実施。参加企業59社において、上り通信において脅威通信が検出されたのが10社(およそ6社に1社)あり、その中でも感染リスク高が5社あったという成果を藤嶋氏は紹介した。

WANセキュリティの機能
オンデマンドでの脅威対応
WANセキュリティの価格設定
WANセキュリティの先行トライアルの結果

 利用のユースケースとして藤嶋氏は、EDR(PCなどのエンドポイントでの検出・対応)に依存せず通信自体を検知するため、EDRが導入できないOA機器なども含めて対策可能になる例を挙げた。

 また、製造などのサプライチェーンにおいて、関連会社で発生した不正検知アラームを、2026年提供開始予定の脅威情報共有機能によって親会社にも通知して迅速に対応する例も挙げた。

OA機器などを含むセキュリティ対策の例
サプライチェーンガバナンスの例

IoT向けモバイル通信にセキュリティや各種機能を統合したNaaS「docomo business SIGN」

 新サービス「docomo business SIGN」は、モバイル回線のIoT向けネットワークとセキュリティを一体で提供するNaaSだ。登場の背景として、小嶺氏は、IoTデバイスとそれを狙った攻撃が増える中で、IoTデバイスにセキュリティ機能を入れるのが難しいという問題や、IoTで集めたデータを分析して役立てるにはサービス選定や設定などが大変という課題があることを語った。

新サービス「docomo business SIGN」

 これに対する「docomo business SIGN」の特長として、「セキュリティ標準搭載であんしん」「最適な機能ラインアップで確かな成果」「テンプレート機能で簡単構築」の3つを小嶺氏は挙げる。

 まず「セキュリティ標準搭載」。docomo business RINKのWANセキュリティと同じように、セキュリティ脅威を通信事業者側で検知して、顧客に通知し、顧客がすぐにWebポータルから該当する通信を遮断できる。複数のIoT機器をモバイル回線で接続している場合も、回線ごとに遮断できる。

 なお、SIMにセキュリティモジュールを組み込んで暗号化や認証のための鍵と証明書を管理する「IoT SAFE」規格の実証を行うとNTTドコモビジネスが6月に発表しており、これも2025年度中にdocomo business SIGNサービスの中で提供予定だ。

docomo business SIGNのセキュリティ機能
Webポータルから回線ごとに遮断可能
IoT SAFE規格対応サービスも2025年度中にdocomo business SIGNサービスの中で提供予定

 次に「最適な機能ラインアップ」。これについては、モバイル通信や、ネットワークセキュリティ、インターネットやクラウドとの接続、データ活用先にさまざまな機能候補が用意され、利用企業はNaaSの方式で組み合わせて使える。

docomo business SIGNの機能ラインアップ

 ただし、それだけでは目的に合ったサービスを選んで組み合わせて構築するのが大変だ、と小嶺氏。そこでdocomo business SIGNでは「テンプレート機能」も用意した。これにより、「シンプルなインターネット接続構成」「クラウドサービスと簡単に連携できる構成」などある程度標準的なパターンについて組み合わせと設定を用意し、利用企業は取りあえずそのまま使えるようになっている。

docomo business SIGNのテンプレート機能
Webポータルからテンプレートを選択

 小嶺氏は、docomo business SIGNの想定ユースケースとして、まず駐車場設置機器の遠隔集中管理を挙げた。無人の駐車場に設置された管理システムを、リモートまたは物理的に乗っ取って不正なサーバーに通信させる不正通信を、ネットワークで検知して遮断する。

 また、太陽光発電システムにおいても、管理デバイスの乗っ取りを検知するほか、監視カメラ映像の自動解析による盗難対策にも利用できると小嶺氏は語った。

想定ユースケース:駐車場設置機器の遠隔集中管理
想定ユースケース:太陽光発電システムの安全運用