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リコー、東芝テックとの合弁会社「ETRIA」を7月に設立 複合機を中心としたデバイスを開発・生産
2023年度第3四半期累計の連結業績も発表、増収も営業利益は前年同期比6.2%減に
2024年2月7日 06:15
株式会社リコーは6日、東芝テックとの合弁会社である「エトリア(ETRIA)株式会社」を、2024年7月1日に設立すると発表した。複合機を中心としたデバイスの開発および生産を一貫して行うことになり、技術や設備の共有化によって、効率的な生産や開発体制を構築することを目指す。
エトリアの資本金は5億円で、出資比率はリコーが85%、東芝テックが15%。代表取締役社長には、リコーのコーポレート専務執行役員であり、リコーデジタルプロダクツ BUプレジデントの中田克典氏が就く予定。本社は神奈川県横浜市に置き、両社の複合機の設計、開発、生産に携わる社員が新会社に異動することになる。現時点では、社員数などについては公表していない。
エトリアの事業内容は、事務機器や産業機器、光学機器、その周辺機器や消耗品などの開発、生産、販売などで、設立の目的として、スケールメリットを生かした競争力の高い商品の提供、生産拠点の最適化による安定した製品供給の確保、共通エンジンによる各社の独自性の創出を挙げている。
リコーと東芝テックは2023年5月に、今回のジョイントベンチャー設立について発表しており、リコーの大山晃社長CEOは、「最初のステップであるジョイントベンチャーを、予定通りに設立できることをうれしく思っている」としながら、「リコーと東芝テックが持つ、複合機を中心とした技術を持ち寄り、性能面でも、品質面でも、コスト面でも、競争力のあるエンジンを開発、生産できるようになる。ソフトウェアによってお互いのチャネル向けに差別化することができ、両方のブランドの製品に、共通エンジンを搭載できる。シナジーがあり、スケールメリットを追求しながら、差別化もできるエンジンになる」と発言。「魅力的なビジネスモデルであり、ほかのブランドのメーカーでも興味があれば、活用してもらいたい」とした。
また、「エンジンの共通化を図ることで、バリエーシュンを減らすことができ、開発費を削減するとともに、ひとつのエンジンの生産数量が増加するため、スケールメリットが生まれる。リスクプロファイルは増えない」とも述べた。
両社が持つ国内および海外の複合機などの開発、生産に関する事業を統合することで、事業規模を拡大できるのに加えて、効率化によって、シナジーによる利益増を図ることができるという。
企業価値向上プロジェクトの進捗を説明
一方、リコーが、2023年5月から開始している「企業価値向上プロジェクト」の進捗状況についても説明した。同プロジェクトは2025年度を最終年度に取り組んでいるもので、変革プログラムとして、「本社改革」、「事業の選択と集中の加速」、「オフィスプリンティング事業の構造改革」、「オフィスサービス事業の利益成長の加速」の4点を進めている。
「本社改革」のなかに含まれる「R&Dの適正化」については、デジタルサービスに近い領域に投資テーマを絞り込むことで、R&D費用を300億円削減する計画を推進。「2024年度末時点で目標の半分程度の水準にまで削減できる」との見通しを示した。
また、「事業の選択と集中の加速」では、対象となる10事業すべての社内レビューを完了。「次のステップにおいて、どうするのかということについて、私の考えがまとまってきた」と説明。戦略転換、事業終息や撤退、カーブアウトや売却などの選択肢を用いる考えを示しながら、「着実に進捗しているが、公表までには、もう少し時間が欲しい」と述べた。
「オフィスプリンティング事業の構造改革」では、先に触れた東芝テックとのジョインベンチャーであるエトリアを設立することによって、生産や開発体制の効率化が図れると述べた。
さらに、「オフィスサービス事業の利益成長の加速」では、ストック売上高が、2023年度第3四半期までに、前年同期比17%増の2535億円に達していることを示しながら、「リコーのさまざまなサービスを利用してもらい、継続してもらうことで、お客さまあたりの収益が増加し、ストック売上が増えることで安定成長ができる地盤が確立する。2024年度からは、オフィスサービス事業の利益成長の進捗を測る指標として、顧客数、オフィスサービス導入率、ストック売上比率を開示することになる」と述べた。
「企業価値向上プロジェクト」の今後の進捗については、2024年5月に予定している2023年度通期業績発表にあわせて、あらためて報告することも示した。
大山社長CEOは、「性質上、途中経過を発表しにくい内容も含まれている」としながらも、「現時点では、プロジェクトは、着実に進捗している。今後、プロジェクトのなかに、新たな施策を、随時導入していくことも考えている。特に、プリンティング市場は、長期的には縮小トレンドのなかにあり、機動的な対応が重要になる。そのために、特にこだわって取り組む領域になると考えている。さらに、物量のイレギュラーな変動に対応するために、バリューチェーン全体を見ながら、最適化を図る取り組みにも力を注いでいく」と述べた。ここでは、SCMシステムの進化による業務改善、予測精度の向上、柔軟な対応が行える体制構築に取り組むほか、オフィスサービスにおける機材や商材のグローバル購買によるコスト改善も目指すという。
「企業価値向上プロジェクトを、徹底的にやり切ることが重要である。確実に効果を創出できるように取り組んでいく」と述べた。
2023年度第3四半期連結業績を発表
なお、同社が発表した2023年度第3四半期(2023年4月~12月)連結業績は、売上高が前年同期比11.1%増の1兆6976億円、営業利益が同6.2%減の371億円、税引前利益は同0.9%増の426億円、当期純利益は同10.3%増の302億円となった。
リコー 取締役 コーポレート専務執行役員 CFOの川口俊氏は、「第3四半期のみ(2023年10月~12月)では増収増益となった。また第3四半期累計でも、一過性要因や構造改革費用を除いた実力ベースでは増収増益になっている。さらに、オフィスサービス事業は増収増益であり、収益基盤となるストック売上は前年比17%増と順調に成長している」と総括した。
セグメント別では、リコーデジタルサービスの売上高が前年同期比11.4%増の1兆3413億円、営業利益は48.4%増の285億円。そのうち、国内オフィスサービスは、売上高は前年同期比22.2%増の2759億円。内訳は、ITインフラが24%増の1200億円、ITサービスが32%増の726億円、アプリケーションサービスは15%増の673億円、コミュニケーションサービスは前年並の129億円となった。
中小企業をターゲットとしたスクラムパッケージの売上高は前年同期比25%増の417億円、販売本数は同12%増の6万4949本となった。中堅企業を対象としたスクラムアセットは前年同期比70%増の517億円。スクラムシリーズ合計では前年同期比47%増の934億円となった。スクラムパッケージは、インボイス制度や、2024年度の法改正に関するニーズが依然として高く、スクラムアセットはシステム導入後のサービスやセキュリティ関連の需要が継続。RICOH kintone plusは、第3四半期も大幅なに伸長したという。
オフィスサービスの欧州の売上高は前年同期比20.8%増の1828億円、米州の売上高は15.1%増の1200億円となった。
リコーデジタルプロダクツは、売上高が前年同期比2.8%減の3584億円、営業利益は72.2%減の83億円。リコーグラフィックコミュニケーションズは、売上高が前年同期比11.2%増の1884億円、営業利益は3.0%増の103億円。リコーインダストリアルソリューションズは、売上高が前年同期比5.9%減の805億円、営業利益は前年同期のマイナス5億円から、マイナス10億円の赤字となった。その他は、売上高が前年同期比10.1%増の311億円、営業損失は10億円改善したもののマイナス77億円の赤字となった。
なお、2023年度(2023年4月~2024年3月)通期業績見通しを修正し、売上高は300億円減額の前年比7.8%増の2兆300億円、営業利益は100億円減額の同23.8%減の600億円、税引前利益が77億円減額の同18.2%減の665億円、当期純利益が60億円減額の同19.1%減の440億円とした。
リコーの川口CFOは、「上期までの未達分を挽回できないと判断した。サーマル事業が弱含みであること、オフィスプリンティングのハードウェアの在庫と生産調整に関して、年度内に区切りをつけると決めたことが要因である。米国では販売現場から生産につながる情報を、細かい粒度でとらえることができるようになっており、これを欧州などにも展開していく」と述べ、「営業利益の600億円は必達できる目標である」と自信を見せた。