ニュース

KDDI、人間の応対を学習して高精度に再現するAIエージェントを開発

auチャットサポート窓口の顧客応対支援に活用

 KDDI株式会社と株式会社KDDI総合研究所は26日、チャット上のやり取りにおいて、人間の応対を学習し高精度に再現するAIエージェントを開発したと発表した。AIエージェントには、KDDI総合研究所が世界で初めて開発・特許取得したハルシネーション抑制技術を用いている。同技術では、AIエージェントが過去の適切な応対を参考にして応対の流れを構造化した上で、不足している情報を自律的に収集・ファクトチェックし、応対文を生成することにより、ハルシネーションの抑制と回答精度の向上を実現している。

 両社は26日、開発したAIエージェントを、auチャットサポート窓口において顧客応対を行うスタッフのチャット回答業務を支援する目的で、一部の応対拠点に導入した。AIエージェントの回答精度は約90%で、顧客一人あたりの応対時間を従来よりも約70%削減する見込みで、スタッフの応対品質のさらなる均一化にも寄与するとしている。

auチャットサポート窓口での活用イメージ

 KDDI総合研究所では、AIの活用においてハルシネーション抑制が肝要であると捉え、早期から研究開発に着手していた。海外大学との共同研究を経て、2023年12月に同技術の基礎となる技術を開発し、2024年7月には国立研究開発法人情報通信研究機構との共同研究にも技術を活用するなど、ハルシネーション抑制技術の開発に注力してきた。

 auチャットサポート窓口への問い合わせのうち、約80%の簡単な質問にはAIチャットボットが自動で回答し、残り約20%のAIチャットボットでは対応しきれない難易度の高い質問については、スタッフにエスカレーションする仕組みになっている。

 AIで応対文を生成する一般的な手法として、RAG(Retrieval-Augmented Generation)が知られている。RAGは、マニュアルを参照して回答できる簡単な質問に定型的に回答する場合などでは高い精度を示すが、AIエージェントの対象であり、AIチャットボットでは対応しきれない難易度の高い質問に単純にRAGを適用した場合、回答精度は約20%にとどまる。これは、難易度の高い質問に回答するためには、スタッフの暗黙知を考慮した上で自律的に情報収集する必要がある一方で、複数のマニュアルを参照する中で情報が混合し、ハルシネーションが発生するためだという。

 auチャットサポート窓口における過去の応対履歴には、顧客に有効な回答ができた場合など、参考にすべき事例が多く含まれている。これらの応対事例は、顧客一人ひとりの相談内容や、その時々の状況に合わせて対応したもので、背景や文脈が非常に多様かつ複雑な一方で、スタッフの暗黙知を抽出できる可能性がある。

 こうした過去の参考にすべき事例を複数組み合わせ、かつハルシネーションを抑制しながら利用することを目指し、開発したAIエージェントでは、まず顧客の問い合わせの要点を整理した。さらに、過去の参考にすべき事例を基に、「適用条件を確認する」「確認方法を提示する」のような応対パターンを分析し、構造化した。この応対パターンに基づき仮組みした応対文に対し、社内マニュアルから追加情報を収集、ファクトチェックすることでハルシネーションを抑制し、自律的に最適な応対文案を生成する。

 これにより、AIエージェントによる回答精度約90%を実現した。スタッフは、顧客からの質問に対する回答を調査して、回答文を作成する作業をAIエージェントで代替し、提示された回答文案を確認・編集するだけで、迅速に対応可能となった。その結果、顧客一人あたりの応対時間を従来よりも約70%削減できる見込みとなり、スタッフの応対品質のさらなる均一化にも寄与するとしている。

 なお、AIエージェントは他部署や他業種への展開が容易な汎用パッケージとして開発が完了しており、今後は類似の問い合わせ応対への活用を進め、社内でのユースケース拡大とグループ会社への横展開を推進するとともに、商用提供を目指すとしている。