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建築物の起伏も表現、2m解像度の3D地形データ、NTTデータが提供開始
(2015/5/18 19:27)
株式会社NTTデータと一般社団法人リモート・センシング技術センター(RESTEC)は、従来は5mメッシュの解像度で提供していた「全世界デジタル3D地図提供サービス」に2mメッシュの高精細版を追加するとともに、これらのデータを使った3Dプリンター用のデータ提供サービスを開始した。
全世界デジタル3D地図提供サービスは、2011年5月に運用終了した陸域観測技術衛星「だいち(ALOS)」に搭載されたセンサーが撮影した画像データを利用して、全世界の3D地形データを作成・提供するサービスとして2014年2月に開始された。このデータは世界で初めて5m解像度のDEM(Digital Elevation Model:数値標高モデル)で世界中の陸地の起伏を表現したものであり、従来の航空写真を用いた手法に比べて低コスト・短納期で、既存の30m~90m解像度の世界3D地図と比べて高い精度を実現している。これらのデータは2015年3月末の時点で陸域の約6割のエリアへの対応を完了している。
今回新たに追加する高精細版は、米DigitalGlobeの衛星画像を活用したデータで、2m解像度のDEMで地形の起伏を表している。従来の5m解像度では再現が難しかった「建築物」レベルの細かな起伏を表現することが可能であり、また、直近に撮影された衛星画像を使うため、鮮度の高い3D地図の提供が可能となる。地形と比べて変化の激しい都市部における都市計画分野や施設管理分野での活用が期待できるほか、大規模災害などで発生した地形変化を反映した3D地図データの提供も可能となる。
DigitalGlobeは、「WorldView(1~3)」や「GeoEye1」「QuickBird」「IKONOS」などの衛星を保有する企業。Google マップなどにも利用されており、最新の衛星「WorldView 3」では31cm解像度で画像撮影が可能だ。このような衛星画像と、NTTデータが持つ衛星画像処理技術とを融合して新たな製品を開発するプログラムが現在進行中であり、今回の2m解像度の3D地形データ提供サービスもその一環となる。
NTTデータでは、これらのデータを提供する3D地図製品の新たなブランド「AW3D」を立ち上げた。
AW3Dの担当者であるNTTデータの筒井健氏(公共システム事業本部e-コミュニティ事業部)は記者説明会において、「DigitalGlobeから提供される衛星画像は、『だいち』に搭載された『パンクロマチック立体視センサー(PRISM)』のようにDEMを取得することを目的としたものではないが、今回の新サービスでは、複数の衛星画像を組み合わせることで高精度のDEMを作成する新技術を使っている」と語った。なお、2m解像度データはDigitalGlobeの映像だけでも作成できるが、複雑な地形の場合は従来の5m解像度データやPRISMのデータも組み合わせて作成することにより、さらに高精度なデータとなるという。
2m解像度データの価格(以下、すべて税別)は1平方kmあたり1万1000円~で、提供単位は最低25平方km~となっている。ちなみに従来の5m解像度データの価格は1平方kmあたり200円~で提供している。利用用途としては、都市計画や土木計画、防災、資源・環境分野のほか、無線通信における電波伝搬シミュレーションや、航空機の空路設計、車両のナビゲーションなどの用途も期待できる。
また、このような3D地図データを3Dプリンター向けに提供するサービスも開始する。提供形式は3Dプリンターで一般的に使われているSTLフォーマットで、2m解像度および5m解像度のどちらでも対応できる。ただし、このサービスは3D地図データのオプションとして提供するもので、価格は3D地図の費用に加えて1ファイルあたり5万円~がかかる。従来よりも高精細な3D地形模型が作成可能となるため、精密造形や防災分野などにおいて、模型を使ったシミュレーション解析などで活用することも可能となる。
従来の5m解像度データについては、現在、アジアやアフリカなどの新興国において地図整備や防災対策、発電計画、鉱区探査、疫病拡大対策、水分野など、計34カ国を対象に18の利用分野に広がっている。今回の2m解像度データや3Dプリンター用データの提供サービスにより、今後はさらに高度な解析や、情報システム/アプリケーションを組み合わせた付加価値のある利用が広まることが想定されるという。
なお、AW3D関連のニュースとしては本日このほかにも、従来の5m解像度データをベースに作成した30m解像度の全世界標高データを、JAXAが無償で公開するという発表があった。まずは日本を含む東アジアや東南アジアから公開を開始し、順次、全世界の陸地(緯度82度以内)に拡大する予定だ。30m解像度の3D地形データというと、経済産業省と米国が整備した「ASTER GDEM」がすでにあるが、今回公開するデータは、30mメッシュ版としての高さ精度が世界最高水準だという。