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レッドハット、RHEL 7とIcehouseをベースにした商用OpenStackの新版

 レッドハット株式会社は23日、IaaS基盤ソフトウェア製品の新版「Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform 5」を発表した。7月8日に米国で発表された製品の、日本での提供開始となる。

IcehouseとRHEL 7ベースになった最新版

 Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platformは、Red Hatによるエンタープライズ向けのOpenStackディストリビューション。ホストOSとして同社のRed Hat Enterprise Linux(RHEL)を含めた形で提供されている。

 Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform 5は、Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platformの3番目のバージョン。ベースになるOpenStackのバージョンが、4月にリリースされた「Icehouse」になった。RHELのバージョンも、6月にリリースされたRHEL 7になっている。

 サポート期間が3年になったのも大きな特徴だ(前バージョンは1年半)。OpenStackは半年に一度リリースされ、開発スピードや変化が速いため、これまで実運用で使う側にとってはライフサイクルの心配もあった。

 また仮想化のインフラとして、Red HatのKVMだけでなく、エンタープライズ分野でよく使われるVMware vSphereとESXiをディストリビューションとしてサポートする。OpenStackのネットワーク機能であるNeutronでVMware NSXを、ブロックストレージ機能のCinderでVMware Virtual Machine Disk(VMDK)をサポートする。

 そのほか、関係する仮想マシンを近くに配置するなどのワークロード配置の改善や、ネットワークスタックの相互運用性向上、HadoopクラスタをプロビジョニングするOpenStackの機能であるSaharaのテクノロジープレビューなどがうたわれている。

 価格体系は、OpenStackの仮想マシン動作コンポーネントのNova向けにゲストOSのRHELを含む「コンピュートノード」が参考価格は44万8400円(税別)/1台から、Nova以外のコンポーネント向けにゲストOSを含まない「コントローラノード」が参考価格27万9400円(税別)/1台から。また、サービスレベルとして、通常の平日9時~17時対応の「スタンダードサポート」と、土日を含めた24時間対応の「プレミアサポート」がある。

Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform 5の主な新機能
仮想化ハイパーバイザーとして、KVM/RHEVとVMware ESXi/vSphereの両方をサポート
サポートするゲストOS

同社のクラウド戦略

 同日開かれた記者説明会において、レッドハット 代表取締役社長の廣川裕司氏は、OpenStackを含む同社のクラウド戦略について説明した。

 廣川氏はRed Hatのクラウド製品戦略として、仮想化基盤の「Red Hat Enterprise Virtualization(RHEV)」、IaaS基盤の「Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform」、PaaS基盤の「OpenShift Enterprise」に加えて、プライベートクラウドやパブリッククラウドまで統合管理する「Red Hat CloudForms」を紹介。「狙うのは、開発からデプロイ、実行、オペレーションまで一気通貫で対応する“DevOps”」と語った。

 また、4月にクラウド・仮想化事業部を専任として設立したことを報告。直販やクラウドサービスプロバイダ(CCPパートナー)のほか、OEM・ISV/IHV、システムインテグレーター、チャネルパートナー、マネージドサービスプロバイダによる販路拡大を語った。さらに、5月に発表した、15社との国内パートナーアライアンスを挙げ、「主要なSIerやベンダーが参加している」と説明した。

レッドハット 代表取締役社長の廣川裕司氏
クラウド分野の製品戦略
クラウド分野の営業戦略

コミュニティに改善を反映する

 4月にパラレルスから移籍し、クラウド・仮想化製品事業部 事業部長となった土居昌博氏も登壇した。

 土居氏はRed Hat Enterprise Linux OpenStack Platformの価値として、コミュニティ版OpenStackの価値に加えて、エンタープライズレベルのプラットフォームであると説明。エンタープライズ向けに強化されたコードや、グローバルなサポート、エンタープライズ向けのライフサイクル、RHELとの共同開発と統合、パートナーエコシステム、トレーニング、認定試験などを挙げた。

 また、「多くのOpenStack製品ではインストールや管理などの追加機能にフォーカスして、その機能がOpenStackコミュニティに反映されることはあまりない。Red Hatでは、追加機能だけでなく、コア機能をエンタープライズ品質にする改善にも力を入れている」として、OpenStackのIcehouseで、コードのコミット数とともに、クローズチケット(不具合報告の解決)の数でも企業別で1位になったというデータを紹介した。

 さらに今後の取り組みとして、製品化やOpenStackコアへの継続フォーカスとともに、ForemanベースのWeb GUI管理ツールや、TripleOベースの集中管理プラットフォーム、アップグレードのサポートなどを挙げた。

レッドハット クラウド・仮想化製品事業部 事業部長の土居昌博氏
Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platformの価値の説明
Red Hatによるトレーニングや認定、コンサルティング
OpenStackのIcehouseでのRed Hatの貢献。コードのコミットとともに、クローズチケットでも企業別で1位に
Red HatのOpenStackへの今後の取り組み

高橋 正和