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NTT Com、都内最大規模の「東京第6データセンター」を提供開始

~山の手線駅から徒歩7分の立地、利用コストは従来比最大1/2に

東京第6データセンター

 NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は、東京都北区に建設した「東京第6データセンター」を4月23日より提供開始すると発表した。利用価格は個別見積り。ラックの価格は既存の第5データセンターなどに比較すると、最大で3割くらい安くなり、1ラックに収納できる機器が1.5倍に増えているため、大口契約などの場合、最大で実質半額くらいのコストになるという。

 NTT Comはこれまで全世界140拠点以上、サーバールーム総面積約17万平米以上でデータセンターサービスを展開してきたが、新たに「Nexcenter」ブランドを創設。

 「Nexcenter」のブランドのもとに統一された品質の提供とサービスレベルの高度化を目指す。具体的には、今後、サービス契約書、SLA(サービスレベル合意書)、カスタマーポータルなどのグローバル統一を進める。また、高効率空調設備による運用コストの削減、仮想ネットワークを利用したハイブリッド・クラウドの提供など、グローバルかつシームレスなサービス提供を実現していくとしている。

 東京第6データセンターは「Nexcenter」ブランドの第一弾となる主力データセンターとして提供を開始。

利便性の高い立地と耐震性

 東京第6データセンターは、JR山の手線の駅から徒歩7分、複数の駅からもアクセス可能と利便性の高い立地にある。このため、東日本大震災のように交通機関がすべてストップするような事態になっても、東京駅から約7km、新宿から約9kmと都心のオフィスから徒歩でアクセスできる。

 また、堅固な地盤層で支持された土地で液状化の心配もないという。東京湾からは約10km、荒川から約2kmの位置にあり、標高は3.5m。荒川からは2kmの距離はあるが、荒川の氾濫など万一の場合も建物内への浸水を防ぐよう基礎を敷地レベルより最大約1.4m高くするなどの水害対策を行なった。

 サーバー棟は地震の衝撃を最大80%低減する建物免震構造を採用。積層ゴム支承、鉛プラグ入り積層ゴム支承、直動転がり支承、オイルダンパーの4種類の免震装置を入れている。これにより、最大で80%衝撃を低減でき、東日本大震災クラスの地震でもHDDへの加速度が200ガル以下に抑えられるため、HDDが壊れる心配がないという。同様の免震装置を入れたNTT Comの第5データセンターは東日本大震災の直前に建物ができ、震災当時に中に人がいたが、中にいた人は東日本大震災の時にもゆれをほとんど感じなかったという。

 また、主要な電力・空調設備はすべて冗長化しているほか、大型の通信用耐震トンネル「とう道」に直結している。このため、建物に引き込まれる通信ケーブルが地震や道路掘削などで損傷する心配はないとしている。

免震装置のオイルダンパー
免震装置の積層ゴム支承。鉛プラグ入り積層ゴム支承も形は同じで、中心に鉛プラグが入っている
免震装置の直動転がり支承
1Fセキュリティーゾーン

サーバールーム

 サーバールームは1ルームで217ラックを収容可能で、1つのフロアに4ルームを設けた。2、3、4階はサーバールームとなっている。データセンター入館時にも入館カード認証と指静脈認証によるチェックがあるが、サーバールーム入室時もカードと指静脈による認証を行い、同時に開かない二重扉の小部屋を通過して入室する。

 ラックは600×1100×2200mm(横×奥行×高さ)で、1ラックで46Uが収納可能。既存の「東京第5データセンター」はひとつのラックで6kVAだったが、「東京第6データセンター」は9kVAの供給が可能となっている。複数ラックを契約することで、2ラック分の電源を1つのラックで利用するといった契約も可能で最大で1ラックあたり36kVAまで上げることができる。

 また、サーバールームのコールドアイルは、空調効率を高めるため、扉と通路の上をアイルキャッピングにより覆われている。

サーバールーム
サーバールーム内のラック。ラック前面が向かい合うコールドアイルはキャッピングで覆い、空調効率を高める
オペレーションルーム

国内初のロータリーUPSを採用

 電力使用の効率化では、国内最高レベルのPUE値1.2を実現。エネルギー効率の高い水冷式空調機、電力損失の少ないロータリーUPS、建物外気温を利用して空調機の消費電力を削減する外気冷房システム、高効率な電力設備の導入を行った。

 ロータリーUPSは、非常用発電機とUPSが一体化したUPSで、発電機(モーター部)と常時回転するフライホイール部、ディーゼルエンジンで構成される。通常時にはフライホイールが常時分速4500回転して回転エネルギーを蓄積。停電時はフライホイールが慣性の力で発電機を回して発電し、その後エンジンが起動してフライホイールと接続。エンジンが発電機を回して発電する。発電機は48時間以上の燃料を備蓄している。48時間以後も燃料の供給優先権があり、東日本大震災の際にも燃料供給が支障なく行われた実績があるという。

 国内のデータセンターでロータリーUPSが導入されるのは初となるが、NTT Comとしてはシンガポールのデータセンターで先に導入しており、これが2例目。製品としては50年ほどの歴史があるが、日本ではこれまで国内サポート体制がなかったために導入が難しかったという。NTT Comでは導入のためにサポートセンターを作り、社員を教育してサポートが行えるよう導入のために体制を整えた。

 ロータリーUPS自体は大型の設備となり、小規模なデータセンターには向かないが、導入によりUPSのためのバッテリー設備が不要となる。このため、データセンター全体としては、5台に1台の予備を置く冗長性を持たせても、従来のバッテリーUPS設備を設置するのに比べ10~20%のスペース削減が可能だという。また、バッテリーは5年で交換する必要があり、交換後のバッテリーが廃棄物となるのに対して、ロータリーUPSは環境保護の観点からも優れているという。

 また、エネルギー効率の高い水冷式空調機と外気冷房システムを採用したことで、省エネ性能を高めた。サーバールームは25度に保たれているが、気温が25度未満であれば外気冷房が利用できるため、東京都内でも年間のうち約60%の期間で利用可能だという。

ロータリーUPS
ガスタービン発電機.jpg
空調機械室
空調室外機(屋上モジュールチラー)

電力・空調・セキュリティなどの仕様は変更可能、オフィス棟も併設

 電力・空調・セキュリティなどの仕様は顧客の要望に合わせて柔軟に変更できる。具体的には、コロケーションルームに備えたマルチフリーシャフトを使った建物内の電力、通信系統の異ルート化、高発熱機器のための局所空調機の追加設置、1人ずつしか通過できない共連れ防止のセキュリティゲートの追加設置などが可能。また運用面では、サーバーのランプ確認とリセットは標準サービスとなっているが、有料オプションでケーブル交換やコマンドを打つなども常駐する保守要員が対応できる。

 また、同一敷地内に約2000平米のオフィス棟を併設。顧客が監視保守センターやBCPオフィスとして利用しやすいよう、オフィスとラック間の通信や無停電電源も供給できる。

 そのほか、通路やエレベーター内は傷がついても大丈夫な仕上げとなっており、搬入の際に養生材が不要となっている。搬入用のトラックヤードは4トン・ロングサイズのトラックが入る。

オフィス棟
ステージングルーム
機器搬入エレベーター。耐荷重は4トン。着床制限機能があり、契約したラックがあるフロアのみ行くことができる
機器搬入時に養生不要な通路

(工藤 ひろえ)